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少年ハークとわるいこ研究所  作者: きむら
【わるいこ】たちは、北東部へ向かう
110/322

赤いマンゴージュースと兄弟

「というか、さ。細剣それ

 何でアンタがそれ持ってんの?

 あいつの物じゃん。うわー最悪。

 泥棒かよ。大人でも盗むんだな。

 やっぱ大人はクソだわ」


青髪の少年は話している間は

中尉に一切目を向けない。


中尉が持つ細剣ルフェアに

ずっと目線を向けていた。


「……お前の捨てた男から

 遺失物として俺が管理している。

 しかし都合上、俺の物になりつつある。

 この前の持ち主を知っているのか」


中尉が少年の方へ目を移す。


少年の口は止まる。

中尉の話に目が点になるも

すぐさま歯を食いしばり、拳を握る。

とうとう中尉の方を向き、にらみつける。


「……話、わかんねぇよ。

 なんだよ大人のくせに説明下手かよ。

 最悪。モノの貸し借り、又貸しは

 面倒なんだぜ? 知らないのかよ。

 あーあ、こんな大人もいるのかよ。

 都市伝説とか嘘話とかじゃねえのか。

 あーマジ最悪。だから大人は嫌なんだ」


中尉の手元に違和感が生じる。

細剣ルフェアが引っ張られる。


しかしそれが何によってかはわからない。

強い力である。片手で何とか細剣を抑え

少年を注視する。


「つまんないな、アンタ。

 もう少し驚いてくれたらいいのに。

 つまんない。くっそつまんねぇ」


足元に転がった石を蹴り飛ばし

少年はぶつぶつと口をとがらせる。


「お生憎様、だッ!」


勢いよく何物かを振り払う中尉。

力は消え、少年は少し後ろへ

ぱたりと倒れる。


「うわ! 痛て……。卑怯だ!

 なんだよ、そういうところだぞ!

 大人って最悪だ。あぁ嫌だ嫌だ!

 そうやって俺らを馬鹿にしやがって。

 つまんねー。帰るわ」


少年の姿が、輪郭から消えていく。


「待て!」


中尉は細剣ルフェアを抜き、伸ばす。

本来少年が存在するそこへ刺突する。


当たった感覚はあった。

少年の胴体をとらえた、はずだ。


しかし、なにも起こらない。


すり抜けるわけでも

血がしたたるでもない。


細剣ルフェアは宙に止まる。

何かに突き刺さってはいる。


「いいぜ。お前、気に入ったわ。

 それ、持っていればいいじゃん。

 ずっとずっとずっと持ってろよな。

 本当の持ち主が来るようにしてやる。

 ……そのジュース、お前にやるよ。

 うまいぜ。まぁ大人には不味いかもな。

 大人が飲んだら、ははは、マジ知らないわ。

 じゃあな最悪野郎。兄貴によろしくな。

 ははは。……ばーか」


舌を出し、下まぶたを指で引っ張り

あっかんべぇ、と中尉に本当に消えた。


「兄貴……? 誰だ」



* * * * *



細剣を納める中尉。


息をつく。


「……しまった」


老婆に木箱を預けたままだった。


振り返る中尉。

ちょうど老婆の居たであろう

その場所には、木箱はない。


残ったのは、中尉が不注意で落とした

数本のジュースだったもの。


足元、カチャリと鳴る瓶のカケラ。

こぼれた中身は、まだそこに残った。


「む。……割れずにすんだのか」


その中に二本だけ割れずに

瓶のかけらを下敷きにし、残っていた。


しかしそれよりも

中尉はその中身が何なのか

足を止め、その眼ではっきりと

捉えた。


「……マンゴージュース。

 太陽の実、だったか」


割れずに済んだ瓶ジュース2本。

中尉は大事に手に取る。


「……もし、叶うなら。

 お前たちが、愛し愛される

 そんな時を過ごせるように。

 この世での生は、成しえなかった生を

 俺が引き受ける。……許せ」


中尉は全てのマンゴージュースを

細剣で一片の痕跡を残さないよう、切り刻む。


マンゴージュースは、日に照らされていく。


それは黒と赤の混じる色。

本来あり得たはずの一端。


マンゴージュースは日の光によって

天へと霧散していく。



* * * * *



行商人の店


「グルル……」


ベルードの兄は疾駆する。


襲いかかると思えば方向を変え

壁や棚へと飛び跳ねる。

物は散乱し、店は滅茶苦茶になる。


「そこっ!」


ハークは鉄槍で男の急襲を防ぐ。


男は防がれたのを確認すると

すぐさま身を引く。


その目線はハークの鉄槍と

ユミナを行き来する。


「うー!」


ユミナは男を目で追いつつ

腕を高く上げたり

ぶんぶん振り回してみたりし

自分なりの方法でけん制している。



男は疾駆すべく脚に力を入れる。


ハークが身構えた瞬間

男は身体をひねる。


それに驚き、ハークの構えが緩まる。


「ガルル……ッ!」


男は引き絞られた弓矢のごとく

そのままハークへ突進。


「嘘ダ、ろ――ッ!?」


それは爪や牙での急襲ではなく

体当たりである。


強靭な肉弾が、勢いが

そのまま衝撃となる。


半竜ハークとの体格差が

そのまま威力となる。

直線上に抜けていく。


「うーっ!?」



男の身を挺した攻撃に

ユミナも鉄槍ウェネスも

ハークから離れた。


ユミナはライラナの近くに

ウェネスは誰からも遠い位置にある

店の壁に突き刺さる。


「ぐるる……」


男は倒れたハークの腹に

すかさず片足で押さえつける。


上から握られる拳。

ゆっくり、確実に握られる。


男は躊躇なく振り下ろす。


ハークは防御のために

赤い半竜へと変えるも

一歩遅い。


負ける。

そう思った瞬間。


――兄貴!


店の扉。突如として開かれ

男へと飛びかかったのは

ベルードであった。

ここまで読んで頂き

ありがとうございます。


続きます。次話投稿予定は

2022年3月18日(金)のお昼頃です。


お楽しみに。

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