ゲーム2
「はあ、はあ、はあ、このばか女!」
あれから校舎内を軽く1周つれ回された佐藤が文句を言っている。たしかに陸上部なだけ深雪さんは速かったけど、あまりにも佐藤の体力が無さすぎた。俺はなんとかついていけたけど。
「部屋にこもってゲームばっかりしてるからよ!」
「別にゲームが悪いわけじゃないだろ!?」
「たしかに。運動しないあんたが悪いんじゃない?」
「こいつ、ちきしょー覚えてやがれ」
まったく覇気のない捨て台詞を吐いて廊下に寝てしまった。崩れ落ちるようにふて腐れながら。もうこいつダメかという深雪さんの視線を感じたので可哀想だから少しだけフォローしてあげるか。
「まあまあ、当てずっぽうで探すよりピンポイントで探した方がいんじゃない?例えば先生の好きそうな場所とか」
「そうだそうだ。国語の先生なら図書館とか!」
「そうそう。そんな感じだけど僕が朝早くから図書館にいたからそれはないと思うけど」
フォローすると少しだけ佐藤が甦ってきた。
俺も最初は図書館を疑ったけど俺が朝早くからいて、誰もいなかったからこれはないと思う。
「う~んでも他のところは運動部が探し回るだろうからやっぱり何個か候補を絞った方が良さそうね」
「こういうのってゲームだと大概さっき通った道だったり暗号がちゃんとあるんだけどな。それかボスを倒してゲットするか」
「あんたねぇーそんなゲームの話が通用するわけないでしょ」
「まあまあ、ほら先生が自己紹介の時になんて言ったか覚えてる?ゲームが趣味だって」
「あ、たしかに。なるほど。それで今回もゲーム風にしたんだね」
「お前俺の時は信じないくせに………」
少し拗ねる佐藤だけどナイスアイディアだ。
ゲーマーのことはゲーマーに聞くのが一番。あの先生のことだからまず暗号なんか用意できないだろう。
「えーだってあんた意地汚いっていうかひねくれてるもん」
「はぁー!?お前が真っ直ぐすぎる馬鹿なんだよ!」
「なんですって!?」
「……ん?ちょっと待ってくれ?意地汚い?」
「うるさいな。これはゲーマーにとっての性なんだよ」
「それなんだよ。あの先生が真っ当に宝探しをさせるとは思わない。今頃職員室で一人くつろいでるんじゃないかな?
もしかしたらそこにヒントがあるのかも」
「なるほど。自分は高みの見物ってか」
「もーじゃあどうするっていうの?」
困ったように深雪さんが問いかける。たしかに意地汚いっていってもどこをどうすればいいのかわからない。
「俺だったら絶対他人にさわられたくないところ。そうだなー自分のロッカーとか?」
「流石に先生の机見るのまずくない?」
真っ当な意見だがそういうのを逆手にとって来そうなんだよな、
「僕たちにとってボスってなんだ?」
ふと疑問に思った。僕たちにとってボスとは?もしかしてそれを倒せば報酬が得られるのか?
高校生の僕にとってボスとは?
「そりゃ陸上のライバルかな?」
「いや、違うんじゃないか?俺たちの本分は勉強だぞ。とすれば俺たちにとってボスって……」
「先生だな………」
もし佐藤の言うとおりゲーム好きならそうかもしれない。
でも先生を倒すって?
「なあ、絶対に触られたくないところって佐藤にとってはロッカーだよな?じやあ佐藤を倒せばロッカーを触れるのか」
「あぁ、そうだな」
なるほど。段々わかってきたぞ。
そうか。そういえば先生は二日酔い中だし俺より遥かに遅くに学校に着いたはず。早く来て隠したってのは嘘だ。
先生が必ず立ち寄って今いる場所……つまり職員室だ。
「なあ、二人ともごめん。もしかしたら場所がわかったかもしれない」
「えっ!?どうして!?」
「ほぉー流石俺の親友だな」
佐藤の言い方はイラッとくるが佐藤がいなければここまでこれなかったのも事実だ。友達ぐらいはいいか。
「よし行こうか職員室に」
「「へ??」」
驚く二人には事情を後で説明しよう。それより今はのんびりお茶してる先生をしばき……捕まえに行くのが先だ。
さぁーてどんな驚く顔をするか楽しみだ