多種多様
「えーと佐々木佑樹君?君は持ってるね」
「持ってる?」
「うん。持ってる。だってそうだろう?新任の先生がまさか自分の隣の部屋で朝のロームルームで明かされる。
ほら、こんなの物語の主人公にしか起きないイベントだろ?」
イベント?何を言っているんだ?
とりあえず朝のホームルームのことを言っているのはわかる
「俺の名前は佐藤一郎。どこにでもいるモブキャラさ。だけど君には何かシンパシーを感じてね。困ったことがあったらいつでも僕を呼んでよ」
「うん。ありがとう」
まとめると勝手にシンパシーを感じたから何か困ったことがあったら頼ってくれってことか。
東京はこんな奴ばかりなのか?
「また佐藤がやってるよー。私は深雪って言うんだけど。ねえねえ佑樹君ってさ運動部とか入るの?」
次はまともそうな女の子。活発そうな子できっとリーダー的存在なんだろう。
「いや。僕は部活には入らないよ。バイトして生活費入れないと上京してきて居候してるから姉に殺されちゃう」
「へー大変なんだね。ていうかお姉さんそんなに怖いの?」
「もう。怖い怖い。まあ、昔堅気の情に厚い人?かな?」
「今どき珍しいね~。あ、バイトはなにするか決めてる??実はさー近くに喫茶店あるんだけどそこ私の家なのね。親が手伝えってうるさくてさー。嫌なら変わりを連れてこいって。佑樹君なら身長高くて清潔感あるからきっと大丈夫だからさ!」
「ありがとう。喫茶店か。いいね」
「ほんとー?やった!これで部活に集中できる!」
「ところで何の部活に入るの?」
「陸上部だよ!えっ!?なにもしかして陸上に興味あるの!?」
「あ、いや単純に深雪さんに興味があって」
「なっ!なにそれ!?……ってただ自己紹介しあってるだけだもんね。あっ!さてはそうやって中学の時は数々の女の子を落としてきたでしょー!」
「してないないって。未だに彼女すらいたことないよ」
「えーもったいない。まあ、高校ではお互い頑張ろうね!バイバーイ」
嵐のような子だったな。バイト先も決まって新たな人間関係も朝の事件の割には上手くいきそうだ。あの活発そうな女の子に嫌われなければなんとかやっていけそうだ。
「あ、これうちの連絡先!今日って暇?」
「うん。暇だよ」
「おっけ!じゃあ今日さっそく面接してもいい?」
「いいよ。こっちも早いほうが助かる」
「決まりだね!それじゃまた~」
「………」
実は初めて女の子と連絡先を交換したのでけっこうドキドキした。午前中はそのせいでずっと上の空だった。
高校生活……悪くない