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ヒーローになりたかった。

あるドラマのキャラクターをを久しぶりに見て思いつきで構想を初めて、いつの間にかモデルがそのキャラじゃなくなっていた恐怖。

僕はヒーローになるんだ。


いつしか、そんなことをずっと考えていた。多分、テレビの中のアニメや特撮のヒーローに憧れて、彼らのように生きたい、彼らのようになりたいと思いだしたのだろう。勿論、アニメや特撮のヒーローのような力を持っているわけじゃないし、いきなり良くわからないベルトや変なアイテムを与えられるような機会も、それを使わなきゃいけないような敵ですら、この世界にいるわけもない。僕は英雄になれない。そんなことはわかってた。自衛官や警官、弁護士に医師といった人を守る、或いは人を救う仕事を志すことも考えたが、「社会的正義は時に弱者を切り捨てる」近くにすんでいた母子家庭の親子が衰弱死体で見つかったとき、そう気づいてしまった。英雄になりたい、でも英雄になる方法がない。


…トンッ


多分、車に轢かれそうな子供を突き飛ばしたのは、間違いじゃなかったのだと思う。考えるより先に体が動いていた。あー…でも、英雄なら、助けた上で、自分も傷すら負わなかったのだろうな。そんな思考とともに、意識がブラックアウトした。



目が覚めると、ベットの上だった、いや、どう甘く見積もっても重症、悪くすれば挽肉になっているような事故だったと思う。


「どこだろう…ここ…」


少なくとも、病院ではない、僕の部屋…一人暮らしをしている八畳ワンルームの僕の部屋でもない。例えるなら協会のような石造りの壁、学校の保健室のような設備のある部屋だ。そう考えていると修道女のような格好の女の子が部屋に入ってきた。


「あぁ、目が覚めたんですね。コレ何本かわかります?」


いきなり、安心したような顔をして、目の前に3本指を立てる。


「3本…、え…と、ここはどこなんですか?」


「多分問題なしっと…、ここはヴェルバス村の教会ですよ、あなたは村の近くの森で倒れていたんです…何があったか思い出せます?」


…どこだ?ここは…。よく見れば修道女の子は黒髪黒目だけど、どこか日本人離れした見た目をしている。というより、今時教会で倒れている人を面倒見るだろうか…面倒事でしかないし救急車を呼んで終わりだろう。僕だってそうする、それが一番その人を助けられる可能性が高い方法だし。


「…わからない…、えっと…病院は無いのかな?救急車は呼んだの?」


「ビョウイン?キュウキュウシャ?何を言っているんです?」


話は通じているのに言葉が通じない…、そのものの存在を知らない?どういうことなんだろう?


「え…?…それなら僕のカバンはないかな?黒い布のリュックがあったと思うんだけど…」


「あぁ、それならここに」


いくつかの資料と、PC、スマホ、どれも壊れていたりしないことを不思議に思いつつも、スマホを使い連絡を取ろうとする、この際適当な知り合いでいい、あまり多くない連絡先を確認しつつあることに気づく。


「電波がない…?あり得ないだろ…?」


一応、契約しているのは国内大手キャリアで、とりあえず人の住んでいるところなら使えるはずなのである。まさか今日日隠れ里とかサンカみたいなものが現存しているわけもない。まさか…日本じゃない?


「…まさか、お兄さん迷い人なんじゃないですか?」


「迷い人…?」


聞いたことのない単語を反芻する。何を意味するのだろうか?


「放浪の神、キュラムの悪戯、様々な場所、時に別の世界から人を連れてきてしまうんです。過去の事例では言葉も全く通じないような人もいたし、時にはこの世界に厄災をもたらすようなこともあったらしいんですけど…」


まぁ、お兄さんなら心配なさそうですね。と笑って言う女の子。頭の中は混乱している。別の世界?日本じゃない?そもそも神様なんて…、見た感じ宗教者の前でいうのは憚られるけど、信じたって何かあるわけでもないだろう。日本にいて日々のイベントを楽しんでいる都合上、無神論者というのは違う気がするが、誰かが言っていた無宗教という宗教の信徒なのだろう。


「…やっぱり混乱します?うーん…」


「フィナ、私から説明してみましょう」


黒い詰襟…神父が着るような服を着た老人が部屋に入ってくる。


「フィナが申しわけありませんね、悪い子ではないのですが、ちょっと遠慮が無くて…」


「いえ…彼女の話が本当なら、どう対応されても僕は混乱しますよ…」


混乱しすぎて逆に冷静になってきたけど、情報を総合するとそんな感じだ。そもそも別の世界というだけで意味が解らない。


「…そうかもしれませんね、ここは恐らく、あなたのいた世界とは違うのでしょう」


そのことばからはじまった説明は、到底信じられるものでもなかった。が、状況がそれを信じるしかなかった。


「嘘だろ…」


「…あなたの信じる神とは違う神に祈ることを許してほしい。あなたの生に幸多からんことを」


帰れないと決まったわけではないが、帰れる方法は神父の聞く限り見つかっていない。世界の誕生、神話の時代からいるのだから、いくらでも検証しているはずだ、村に配置されているとはいえ、教養のある人物であるはずの宗教者が聞いたことのないのだから恐らくは無いか、かなり厳重に秘匿されているのだろう。何の力もない所か、何の保証もない僕ではどうしようもない。



どうすれば…いいんだ…。



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