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AI棒  作者: 君名 言葉
第四章 センテレントエリア編
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第四十六話 世界一

「【絶対防御】発動……!」

「ふんっ!」


 キングのパンチに対して、ダメージ量を十分の一に軽減する特技を使用しても、シンの体は遥か後方まで吹き飛ばされた。

「ぐあっ!」

 何という威力だろうか。二つの状態特技によって強化されたキングの強さは、なんとも形容しがたいものだった。


「これは訓練だからね、シン君。存分に特技を吸収してくれたまえ」

 そう。これは異星人討伐のための訓練でしかない。だからキングもシンも互いに死ぬことはないし、AIが破壊されることもない。しかし、それでもシンは負けたくはなかった。


「ありがたいけど、こっちもこのまま負けるわけにはいかないんで」

「やはり君は面白い奴だ。いいだろう、相手をしようじゃないか」


 シンが唯一キングに勝てる点。それは、技の組み合わせだ。

 いくらキングと言えど、特技の種類は【全能型】の中に限られる。しかし、【トレース型】のシンだけは、その境界を飛び越えることができる。


 ダメだ。考えている暇はない。今も、キングがこちらに銃口を向けてこようとしているのに。

「sari 速度強化モードだ」

『了解 戦闘モードを変更します』

せめてスピードだけでも上回らなければ、歯が立たない。バッテリー消費量は上がるが、一矢報いるための苦渋の決断だった。


「いくぜ!」

 特技スロットを変更しながら、キングに突撃する。

【音速斬り】の流れで彼の背後を取り、そこから【シャイニングクロス】で矢を乱れ撃つつもりだ。


 バチッ!!

 さすがの反応速度とでも言うべきだろうか、特技を発動しようとしていて微妙に硬直があったにも関わらず、キングは即座にこれを防御した。


「いい動きだ」

「まだ終わらない!【分身】発動!」


 キングの向こう側に、シンの分身が出現する。性能は本物よりやや劣るが、これによりシンの方が若干有利となった。


「なるほど。ここまで精度の高い分身は初めて見たな」


 分身のシンの動きに合わせて、本物のシンが連携して動く。分身が【大砲】を撃ったのを確認してから、投剣特技の【スカイフラッシュ】を喰らわせる算段だ。

 左腕がブーメラン型の剣に変形し、それをキングめがけて投げつけた。青色の残像を残し、手元を離れる。両方向から攻撃されれば流石のキングも防ぎきれないだろう。


「君は賢いな。だが、私には一歩及ばない」

 キングのその発言を理解するまでに、数秒の時間を要した。彼の周りに、エネルギーの壁が出現している。

 そして、キングが手を広げると、その壁はみるみる大きくなっていく。放ったはずの剣はその壁に触れると瞬く間に消滅した。


「なんだ……これ……」

「全能型の上位特技、【スケールウォール】だよ。どんな攻撃も寄せ付けない。この壁に触れた物体は大ダメージを受ける」

 オレンジ色に光った壁がもう目の前まで迫っていた。これに衝突すれば、確実に戦闘不能になる。つまり、この戦いに負ける。


 相手がキングだから、と自分を納得できればよかった。そうすれば、ここで安らかに敗北を受け入れていただろう。

 しかし、違った。

 俺は負けたくない。相手が誰であろうと、絶対に勝ちたい。


 シンは目を閉じた。

 暗闇の中、姿の見えない相棒、sariに話しかける。


「なあsari、俺はキングには勝てないのか?」

『機体のポテンシャルでは 劣っています 勝利できる可能性は20%です』

「……そうか」

『ですが 70%まで引きげることも 可能です』

「なんだって?」

『私に 脳の意思伝達系信号への アクセスを許可していただければ』

「意思伝達系信号? 今まで設定にそんなものなかったけど」

『はい これは AIと使用者の信頼値が 最大になった際に設定できる アクセス権です』


 シンは短く微笑んだ。

 そのアクセス権の設定が、たった今できるようになった。

 それはつまり、sariは完全にシンの相棒となったことを意味している。


「勝とうぜ、相棒。アクセス権を許可する」

『設定を変更しています 意思伝達系信号へのアクセス権が 承諾されました』


 目を見開くと、鼻の先にまで壁が来ていた。少しでも動けばぶつかる距離。しかし、シンはそこから動かなかった。

 代わりに、胸のパネルからAIの音声が聞こえた。


『特技 【強制執行】 発動します』


 エネルギーの壁が一瞬で崩れ去った。シンの機体の耐久地も半分の値となる。

「シン君……まさか……」


 キングは、シンではなくAIの方から特技発動が起こったことに疑念を抱いているようだ。それもそのはず。通常はアーティーが特技名を口にするか、パネルで選択しないと特技は発動しない。

 ただ、意思伝達系信号へのアクセス権を許可した場合、頭の中で発動したいと思うだけで良い。あとは勝手にAIがアシストしてくれる。

 そして、わざわざパネルで選択する必要が無いということ。それは、トレース型の弱点である、特技の数の制限を無視することになる。

 つまり、今のシンは、スロットに関係なく全ての特技を自由に、頭の中で思うだけで使用できる。


 シンは黙って飛翔し、遥か下のキングを見下ろした。

【ステータス強化】を自分に使い、そのまま【閃光弾】を頭上に降らせた。キングは当然のように迎撃したが、これはフェイク。閃光弾はまばゆい光を放ち、辺り一帯を白色で覆いつくした。

 すかさず【瞬間移動】でキングの背後に移動する。双剣を装備すると、双剣上位特技【ダブルクラッシャー】で思いきり斬りつけた。

 確かな感触があったが、キングは【緊急回避】を用いてなんとか致命傷を防いでいた。


「なんて強さだ……」

 初めて聞く、キングの絶望の声だった。

「キングさん。あなたのおかげで、俺はここまで来られました。感謝します」


 そうして、先ほど入手したばかりの上位特技を発動した。【スケールウォール】だ。

 手を広げると、オレンジ色のエネルギー壁ものすごい速度で拡大していく。キングも必死に飛行して逃れようとするが、速さが違いすぎる。数秒で追いついた。


「ぐあああ!」

 断末魔が聞こえた。彼の機体がダメージを受けて地に堕ちた。

 勝負は終わった。

 近寄っていくと、キングは何やら満足そうな表情をしていた。

「私はずっと、自分より強いアーティーを求めていた。シン君、今日から君が本当の王だ」

 シンがくしゃっと笑い手を差し伸べると、それを掴んでキングが立ち上がる。


 この世で最も強いアーティーを倒したシンの心の中は、喜びに溢れていた。

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