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AI棒  作者: 君名 言葉
第四章 センテレントエリア編
42/50

第四十二話 最終形

 シンとバキのビリビリとした空気は収集する気配を見せなかった。

「ちょっとやめなさいって。二人とも」

 珍しくサキが焦った顔で止めに入る。

 しかし、そこで火に油を注いだのは女帝、リッカだった。

「あら。私は好きよ。そういうの。若いって感じがして可愛いもの」

 その言い草は、少し揶揄っているようにも受け取れたが、そんなことは2人にとってどうでもよかった。

「さすが分かってるな女帝は」

 満足げにうなずくバキ。それに対してシンも言い返す。

「もちろん、俺はいつでも相手してやるよ」

 こちらも余裕の表情だ。

「シン……」

 コルンは止めるでもなく心配そうな眼差しを向けるだけだった。


「管理官、A棟のトレーニングルーム借りるからな。いいだろ?」

 恐神管理官は若干顔をしかめた。

「バキ……分かっていると思うが……」

「わぁーってるって。別に殺したりしねえよ。AI破壊もしねえ。それでいいんだろ?」

 一応、乱暴な性格でも最低限の分別はあるらしい。

 シンの内にある闘争本能は、燃え盛って広がっていた。それはバキも同じだろう。


 シンとバキの二人は、中央管理棟から一番近い戦闘施設、A棟のトレーニングルームに入った。

 他のアーティはと言うと、恐神も含め、2人の動向が気になったので、施設の二階、鑑賞用スペースで全員が見守ることとなった。

 いつの間にか、空は赤く光っている。

「これでよしっと」

 バキがトレーニングルーム中央にある台に設置されたモニターを触った。


 ピ、ピ、ピ


『ゲームを開始します 任意の タイミングで 開始 を タップしてください』

 場内にアナウンスが流れ出す。シンの脳裏には、昨晩、家の二階で急に始まったトレーニングモードがよぎった。


「ルールは簡単。相手のAIの機能を停止させるかギブアップさせるのどちらかで勝ちだ。分かったな?」

 単純でおもしろい。どこかアーティカルグランプリを彷彿させる。

「勝った時のメリットと負けた時のデメリットは?」

「そうだな……負けた方は互いに持っている最もレアなパーツを勝った方に渡す。これでどうだ?」

 シンは自分の脚パーツに目をやった。このパーツのレアリティはトップクラス、失うには痛すぎる。が、それだからこそおもしろい。

「いいだろう。俺はこの脚パーツを賭ける」

「じゃあ俺はこの剣のパーツだ。レアリティは同じくらい、交渉成立だ。特別に、お前に開始ボタンを押させてやるよ」


 モニターに近づき、真ん中に堂々と書かれた開始ボタンに触れた。

 けたたましいサイレンが鳴り響く。


『ウォォォォォン! 3秒後にゲームを開始します』


 真ん中に突出していた台は収納され、全方位に高濃度粒子のバリアが張られた。二階席には観客が9人もいる。


『ゲーム 開始』

 そのアナウンスが入り、先に仕掛けたのはバキだった。


「飛ばすぜぇぇぇ!! 【フォース:火の陣】!」

 途端に、肌が熱を感じ取ったのが分かった。バキの周囲に炎の渦が巻きあがり、振りかざす双剣には炎が纏わりついている。

「おらぁぁぁ!」

 目にもとまらぬ速さで上空まで飛び上がり、そのまま重力に身を任せ、シンに斬りかかってきた。本能で危険だということを察知した。


「っ……!【瞬間移動】発動!」

 とっさの判断で回避特技を発動した。相変わらず、攻守ともに便利な特技だ。


 ボォォォォ!


 バキは何もない床に双剣を打ち付け、おもむろにこちらを見た。

「クク……」

 笑ってる……のか……?


「そんなコスい技ばかりじゃなくてよ……楽しませてくれよもっと!」

 再び斬りかかってきた。しかし、先ほどとは様子が違う。


 ブゥン!!


「いつの間に?!」

 ついさっきまで50メートルはあった距離が、もう2、3メートルまで縮まっていた。

「食らえ。【回転火炎斬り】」

 その場で剣を振り回して一回転すると、周囲に炎が飛び散った。シンは避けきれず、腕パーツに少し損傷を追ってしまった。

「なるほどな……炎から起きる爆風を利用して一気に距離を詰めたのか」

 右腕を庇いながら立ち上がるシン。バキの顔には余裕という文字が書いてあるかのようだった。

「ここが頭の使いどころだ……まさかもう終わりじゃないだろうな?」

 相変わらず不敵な笑みを崩さない。


 だが、この時、シンには1つの確信があった。

 だがそれを試すのはもう少し耐えてからにするしかないな。

「もちろん俺も本気じゃないさ。今度はこちらから行かせてもらう」

 いよいよ、反撃開始だ。

「特技発動。【時空移動】!」

 そう、先程、恐神の特技【創造】で創り出してもらった特技。創造された特技は、重複して画面に表示されるので、【瞬間移動】から派生して選択できるようだ。

 自由な時間軸の地点を選択し、その場所にタイムリープすることができる。ただし、移動した世界で活動できるのは3秒のみだ。過去にも未来にも行くことができる。

『1分前 に 移動します』

 時空がだんだんとゆがみ始めた。初めて使う特技だが、思った以上に強力だ。


 ウォォォン……


 シンの意識が戻ると、すぐに特技を発動した。

「【5秒間無敵】発動!」

 時間はバキが【回転火炎斬り】を発動する瞬間。これにより、損傷したシンの右腕は守られ、元の時間に戻った後も無傷で戦闘を続けられる。


『時間軸 修正完了』

 その言葉と同時に再び時空が渦を巻き、元の世界となった。腕を見ると、真っ赤なメタリック塗装は健在だった。


「クク……そういう使い方もできんのか。やるじゃねえか」

「悪いけど簡単にやられる気はない」

「ならどうかな。こっちも本気で行くぜ! 【フォース:風の陣】!」


 辺りに竜巻が数個出現する。やがて、その竜巻はシンに向かって近づいてきた。

「はは! どうだ! 避けられる術などないだろう!」


 フッ……


 シンは自分の幸運さに感心した。たまたまスロットに入れておいた特技が役立つとは。

「チャン! お前の特技借りるぞ!」

 チャンとはまさに、アーグラ決勝で対戦した黒ずくめのアーティーの一人、中国の仙人のような風貌のアーティーだ。

「はぁぁ!【螺旋剣】!」

 シンは高速で自転し始めた。そして徐々に、周りの竜巻をも飲み込んでいく。

「なんだぁ? そんな特技見たことないぞ」

 これにはさすがのバキも驚いたようだ。シンはもちろん、裏の世界のアーティーの特技もコピーできる。

「おらぁ!」

 渾身の一撃を喰らわせた感触がした。

 竜巻が消え去ると、徐々に視界が晴れていった。


「はぁ、はぁ、奴は……」

 おもむろにバキのいた方を向いた。


 その時だった。


 シンの周りに、数々の火柱が出現した。

「なんだ?!」

「フハハハ! みな、これが俺の合わせ技、【フォース:風の陣】で発生させた竜巻と【フォース:火の陣】を組み合わせて炎の渦を作り出したんだよ! しかもお前が巨大化させてくれたしなぁ!」


 ボォォォ……


 燃え盛る火炎。もはや逃げ場はない。

 くっ……防御系の特技で防いでも意味がない……


「【空気コントロール】発動! 周囲の温度を氷点下にする!」

 ついに4番目の特技も披露してしまった。トレース型という特性上、これ以降は不利な戦い方を強いられることになる。

「やっとすべて吐き出したか。つまりこっからは俺のターンってことだ」

「どうかな? まだ始まったばかりさ」

 とは言いつつも、かなり厳しいな。


 次なる攻撃は、銃弾の嵐だった。

「どうだよ。俺の撃つ弾は!」

「悪くはないけど、当たんないね!」

 ギリギリでバキからの弾を避けていく。スピードに特化したシンならなんともないことだった。

 しかし、そんな状況も長くは続かない。


「【閃光】発動! 死ね!」

【フォース:光の陣】に切り替えていたバキが、特技を発動し、辺りは眩しすぎる光に包まれた。目くらましのような戦法でシンを追い詰める。

「くそっ! 目が見えない!」

 このままでは不意を突かれてダメージを追ってしまう。

 察しろ……空気の揺れを感じるんだ……

 バキが現れる場所を、肌で突き止めようと努める。

「ここだ!」


 パン!


 空気の振動を感じた方向に、銃弾を放った。


「残念でしたっ!」

 耳元で声がした。背筋は一瞬で凍り、本能的に死を感じた。どうやらはずれだったようだ。


 ガシャン!


 背中を大剣で斬りつけられる。かつてない大ダメージを負ってしまった。

『背中パーツ 損傷 一部機能 停止します』


「クク……どうした」

「お前……なぜ背後から……」

「この光フォースってのは便利でなぁ。【光速移動】なんて特技が使えるもんだからなぁ」

 シンはなんとか立ち上がった。しかし、立っているだけでやっとだ。

「まだ立てるとはな。ここでお得意の変身でもすんのかよ?」

 サキやコルンと違い、シンは自由に変身状態になれるわけではない。しかし、そんなことはもう関係ない。


「フッ……」

 シンは頬を緩めた。


「あぁ? なに笑ってやがる」

「いやぁ。感謝したくってさ。あんたと戦ってよかったよ。これで俺はまた、レベルアップできた」

「何が言いたい」

「見せてやるよ。お前がくれた強さだからなぁ!」


 シンは特有の構えをして、特技を発動する。

「見ろ! これが俺の新しい特性! 【フォース:火の陣】発動!」

 体からメラメラと炎が沸き立ってきた。周囲の温度は急上昇する。

 なんと、シンはバキの特性であるフォースをもコピーしてしまったのだ。

「ふざけるな! なぜフォースを……!」

「俺も戦いの中で成長していく。今回、あんたとの戦闘中に、フォースのコピーを試みた。トレース型は、敵の特技しかコピーできないが、パワーアップした俺のsariは、あんたの"特性"であるフォースまでコピーした。しっかし時間がかかったぜ。できるだけダメージを喰らわないようにここまで戦ったんだ」

「お前が攻撃系の特技をあまり使わなかったのはそういうことかよ」

「正解。じゃあここからは俺のターンだ」


 シンに出来てバキに出来ないこと。それは、特性と特技の合成だ。

 通常、バキは戦闘で、設定したフォースに関連した特技しか使えない。【フォース:火の陣】の時は、【回転火炎斬り】のような。

 しかし、シンの場合はあくまでコピー。フォースを身にまといつつ、別の特技も使うことができる。


「お返しだ。【螺旋剣】!」

 再び高速回転し始めるシン。今度はさっきまでと違って、フォースの影響で炎の竜巻が出来上がった。

「こんなことが……!」

 必死に対抗するバキだった、盛り返すことはできない。明らかにシンの方が一段上手だ。


「ぐわぁぁぁぁぁ!!」


 バキの悲痛な声がこだました。

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