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AI棒  作者: 君名 言葉
第三章 アーティカルグランプリ編
30/50

第三十話 殺戮兵器

『さあ、それでは二回戦です!各チームのメンバーを紹介していきます。まずはチーム"サンドラ"!リーダーのサンドラさんは先ほど一回戦で見事勝利されたクイーンさんの妹で、前回大会ではベスト8との事ですが、何か意気込みはありますか?』

「そうね。やはり優勝しかないんじゃないかしら。今度こそお姉ちゃんを超えて1番になってやるわ」

『ありがとうございます!是非姉妹対決を見たいものです!さて、対するチーム"メダロン"!こちらは初出場で情報が一切ありません。リーダーのメダロンさん、なにか意気込みはありますか?』

「……ゃ……ろ……」

『むむ?すみませんもう1度よろしいですか?』

 なにやら怪しげな雰囲気が流れ始める。


「はや……く……はじめ……ろ……」


 部屋で見ていたシン達にもはっきり伝わるほどの殺気。やはり只者じゃない。むしろ、感情を失った殺戮マシーンのような印象を受ける。今にも司会者を攻撃しそうだ。

『あ、ああ!そうですよね!は、はい!始めましょう!そ、それでは両チーム準備をしてお待ちください』


「博士……こいつ……」

「うむ。明らかにやばい奴じゃな。他の2人はまだまともに見えるが」

 メダロンの他に2人、黒ずくめのアーティーがいた。1人は白い髭を伸ばした中国の仙人のような身なりをした老人。もう1人はショートカットの女子大生といった、なんともアンバランスな組み合わせだ。

「シン、特技の特定よろしくね」

 コルンが後ろから声をかけてくる。

「オッケー。ただ、初戦は特技を使うかどうか………」

 そう言っているうちに準備が整ったようだ。


『さあ!お待たせしました!いよいよ決勝トーナメント第二回戦です!両チームルールを守り勝ち抜いてください!それでは行きます!レディ…………ファイッ!』

 きた…………初手はどう出る……!?

 シン含め、部屋にいるコルン、サキ、菊間博士も固唾を飲んで見守る。


 ウィィィィーーン……


「なに!?この音は!?」

 サキが耳元で叫んだので鼓膜がキーンとなった。確かに、何かの音が聞こえてくる。メダロンのチームの陣形は、特殊だった。てっきり攻撃専門かと思っていたメダロンは後ろに下がっている。あとの2人が前に出て攻撃を華麗に受け流している。

「なんだ?メダロンは攻撃特技を積んでないのか?」

 そんなわけはない……


 サンドラチームも休まずに攻撃を加えるが、状況はあまり変わっていない。

「喰らいなさい!【十字剣】!」

 サンドラは、剣と盾での戦闘が得意な、"剣士型"というタイプだったようだ。

 カンッ!!キン!!

 今、確実にメダロンチームの仙人みたいなアーティーにヒットした。はずなんだが……


「フフ……」

 そのアーティーは笑っただけだった。そして、次々に切り落とされたパーツが元どおりになっていく。


「あいつ、"復活型"だ!」

 今度はシンが画面の前で叫ぶ。

「復活型?そんなのあるの?」

「以前博士に見せてもらった映像で見たことがある。破壊されても、パーツ同士の電子力で引き合って何事もなかったかのように復活するのさ。決定打がなけりゃ不死身かもな」

「なんてチート性能……」

 サキの言い分ももっともだ。ただ、シンの場合、決定打となる特技は積んであるので安心だが。


 しかし、次の瞬間、信じられないようなことが起こった。今まで後ろにいたメダロンが合図すると、今度は前にいた2人が後ろに下がった。そして、その2人はともに防御系特技を発動したのだ。

 わざわざ後方に下がってなぜ防御特技を………?

 次に聞こえてきたのは、メダロンの咆哮だった。

「オオォォォ……!【ベリアルジャッジメント】……!」

「なんなの?!このパワーはっ!?」

 サンドラチームが圧倒されているのがわかる。まだ、特技が発動していないのに、だ。

 最初後方に下がっていたのは溜め時間か

 そして、特技が発動した。会場は闇に包まれ、視界が奪われる。


『なんだ!? 一体なにが起こっているというんだ!?競技場が見えなくなっております!』

 やがて、30秒ほどで闇は消えた。そこに残されていたのは、倒れている3体のアーティーだった。にわかには信じがたいが、今の間にチーム"サンドラ"は全滅してしまったのだ。

『お、おおっと!?相手チーム全滅によりチ、チーム"メダロン"勝利です……』


 ざわざわざわざわ…………


「シン……わかるかい?今の」

 コルンの声も重たい。

「………まさか。初見だ。」

「そもそも、あの闇エネルギーは攻撃だったのか目くらましだったのかの議論からよね」

 サキは以外と冷静だった。

「そうじゃな。あれは攻撃じゃろ。直接打撃を叩き込む音はせんかった。溜めが必要にしろ強すぎるわい。範囲攻撃は」

「恐らくあれで予選も駆逐したんだろうな。でもサキは耐えられるだろ?あれ」

「ええ、多分ね。【大防御】とかなら。でも、あれは【5秒間無敵】じゃ無理ね。30秒も続いたらいつのタイミングでダメージを受けているのかわからない。ずっとかもしれないし」

「そうだね。とにかく、あの攻撃の対策をしなきゃ。僕が弾幕で支援しても無理そうだし」

「いや、俺たちと戦うときはあの特技を使わないんじゃないか?さっきのチームだったからこそだろ」

「まあそれはあるはね。さっきのサンドラチームって接近戦メインだもの」

「そっか……同じ手では来ないか……」

 どうすっかな……


 結局なにも答えが出ないまま、次々と試合は進んでいき、いよいよ、シン達の出番が回ってきた。

「いくか、2人とも。博士はスタンドで見るんだろ?」

「うむ。がんばってくるじゃぞ」

 そうして3人は部屋を跡にした。次に戻ってくるときは、すべてが終わった時だ。


『それでは!いよいよ、決勝トーナメント第二回戦、最初の試合です!戦うのは……チーム"クイーン"VSチーム"シン"、いきなり優勝候補同士の戦いだぁああ!」

 会場は十分温まっているようだった。不思議と緊張はしない。

『それではリーダーのシンさん。特別訓練でもご活躍されたそうですが、なにかコメントございますか?』

「いえ、ありません。勝つだけです」


 うぉぉぉぉぉぉ!!!

 やっちまえ優勝候補!


 もはや応援か野次かすらわからない量の歓声が飛んでくる。

『はい、では両チームとも準備をお願いします!』

「2人とも、作戦通りに」

 目で合図をした後、クイーンと目が合う。溢れんばかりの闘志が伝わってくる。


『決勝トーナメント第二回戦最初の戦いです……レディ……ファイッ!!』

 試合が始まってすぐに、こちらから仕掛ける。このチームを攻略するには、サポート役で【全体修復】を使える、ノアという少女を叩かなければならない。逆に、それに時間をかけすぎると後に残ったのクイーンとハルキを倒すのがきつくなるので、出来れば最小の労力で倒したい。


「シン!こっちだ!【蝶の舞】発動!」

 コルンが特技を発動したのを確認してから、俺は左腕を銃に変形し、銃弾を撃ち込む。

 コルンの作り出した蝶の群れは、敵にぶつかると誘発して爆発していく。その混乱に乗じてシンが銃弾を撃ち込み、さらにコルンも追加で飛び道具を投入する。

「まだまだ!【狩人の矢】!」

 ボボン!!ボン!

 煙幕で視界は悪くなるが、問題ない。クイーンは間違いなくノアを庇っているので、奇襲に会うことはない。万が一があっても、サキがいる。

「サキ、そっちは頼んだぞ」

「オッケー、ハルキと遊んでればいいのね」

 サキは空中にいるハルキと鬩ぎ合いを行っている。


 よし……順調だ。後はノアの破壊度だが……

 時間が経って、視界が開けた。ノアは予想通り1度目の修復を使って攻撃を防いでいた。

「クイーンさん~反撃しましょう~私痛かったです~」

 クイーンがある程度の銃弾は迎撃していたようだ。

「ええ、そうね。次はこっちの番よ。【昇華】!」

 クイーンが負けじと反撃してくる。

「確かにあんたの化学の力は強い……でもこの俺の速さは化学じゃ説明できないだろ?」

「くっ……こそこそ逃げ回って……だが逃げるだけでは勝てないわ!」

 シンは持ち前のスピードで、次々と攻撃を避けていく。

「もちろん逃げるだけじゃないさ。じゃ、そろそろ終わらせるか、コルン、サポート役の子は頼んだぞ!」

「了解したよ!はぁぁぁぁぁーーー!!【エレクトリックキャノン】!!!」


 ビリビリッと電気の音が流れ、クイーンを引き寄せておいたおかげでノアまでの道が開けて、直撃した。


 ジジジジ……バリンッ!


「うう……ごめんなさいです……クイーンさん……」

「ノア!?」

 クイーンの叫びは届かない。


『チーム"クイーン"、ノアさん脱落です!』

「あんた達よくもノアを……」

「悪いな。こっちも勝たないといけない事情があるんだ。サキ!戻ってくれ!」

 空中で戦闘していたサキも一旦戻り、3人が揃った。

「ここからは連携で叩くぞ!」

「「了解!」」

「Hey,sari スピード強化モード」

『了解 脚パーツ 変形 顔パーツ 装着』

 脚の形が尖って、顔には装甲がつけられた。これなら、さらなる速さに耐えられる。

 あ、そうか。スピード型に見せてるってことは、それらしい特技を1つ見せておいたほうがいいな。ちょうどあれがセットしてある。

 シュパ!と気持ちのいい音を鳴らして、コルンは発砲し、ハルキの妨害をしてくれている。サキは片手を剣に変形させ、片手剣と盾というスタイルでクイーンと戦っている。

 片方だけで十分だな。よし、やはり女王か。叩くなら。


 クイーン。あんたは強い。だけどな、こっちはもっと強いんだ。特技、【音速斬り】発動」

「あなたやはりスピード型なのね……こんなところで負けるわけ……っ!?」


 シュンッ………バリン!


【音速斬り】は、目に見えないほどのスピードで切りつけ、一撃で仕留めることを狙えるので、数秒間は斬られたことすら分からない。ここで、クイーンのアーグラは終わった。

「えっと……ハルキだっけか。どうすんだ?1人だけど」

「も、もちろんリタイアです!あ、ありがとうございます!ました!はい!」

『クイーンさん脱落、ハルキさん降服で、チーム"シン"の勝利です!3回戦進出!』


 うぉおおおおおおお!


「よし、ひとまずだな」

「うん、作戦バッチリだったよ」

「そうね。この調子でいきましょう」

 こうして、2回戦、シン達にとっての初戦は無事終わった。前回準優勝者だったので少し不安だったが、3人ともこの短期間だけでーかなりの成長を見せていた。

 試合参加中は、それぞれのチームの個室があるとのことなので、そこで待機しようと向かっている途中で菊間博士と合流した。次の試合に備えて修理してもらわなければならない。

 その間にも、着々と試合は進んでいた。そして、また回ってきた、黒ずくめのアーティー達。しかし、シン達は勝利の余韻でそのことには気づかなかった。

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