第二十一話 真打登場
「コルン。今からある仮説を検証したい。サキが今格闘しているが、サキを避けて敵に飛び道具を当てられるか?【パワースナイプ】でだ」
「【パワースナイプ】? いいけど……いくよ、発動!」
コルンは片目を瞑り、狙いを定めて数発の矢を放った。
すると、グレンはサキの攻撃を避けつつ、まるで全てを知っているかの如く、矢を打ち砕いた。完全に、攻撃を読んでいるに違いなかった。
無敵時間の解けたサキは、一旦こちらに下がった。
「残念ですねぇ。下がるのですか。もう勝ち目はないと思いますけどねぇ。ボスが出るまでもなかったです」
「フッ」
シンは、なぜかこの状況で、笑った。
「そうかな? 本番はここからさ。俺は見抜いたぞ、その特技。お前、"敵の特技が分かる"って特技だろ。たしか、【サイコハッカー】って特技のはずだ」
「敵の特技が分かる?! そんなセコイ特技が存在するの……?」
サキは半信半疑のようだった。
「ほぉ。証拠は一切ありませんが、大した推理です。ですが、だから何だと言うんです? あなた方の勝率は今までの戦闘から鑑みても1パーセントを切っています」
「考えるな、感じろってやつさ。サキ、コルン、奴を叩きのめすぞ!」
「いけ! 【銃弾の雨】発動!」
「【盾突進】発動! 消えなさい!」
続いて、シンも特技を発動する。
「Hey,sari 【空気コントロール】発動。気圧を急上昇させてハリケーンを作り出せ」
『了解』
3つの特技が、同時にグレンに炸裂する。
「甘いですねぇ……そんなものでは私は倒せませんよ! 【レーザーバリア】!」
ガガガッ……!
グレンのバリアと他の特技が衝突し合う。
すると突然、シンが飛び出した。
「「シン!?」」
コルンとサキが同時に叫ぶ。
「お前、言ってたよな」
「なにぃ!?」
なんと、攻撃を防いでいるグレンの前に、突如としてシンが現れた。
グレンにとっても完全に予想外だった。
「俺たちの勝率は1パーセントを切っているって。でもな、0パーセントじゃなけりゃそれで十分なんだよ」
「私が【サイコハッカー】使いならば、攻撃は全て防がれるのですよ? それなのにノコノコと出てきおって!」
「確かにお前は俺の特技を知っているかもしれない。何型かもな。けれど、その上で俺が戦っているとしたらどうする?」
「何を言っているんです? お前の特技は3つのみ! 新たにあるわけがない!」
「特技、【ルーレット】発動!」
シンの端末の特技ストック一覧が、ぐるぐると回転しだした。
端末に表示されたのは……
【レーザー砲】
ウィィィィィィン……
『充填完了 発射します』
ビィィィィン!!
ノータイムで高濃度レーザーが放出した。辺りは強すぎる青白い光で何も見えないが、
「うがぁぁぁぁ! くっそぉぉぉ!」
というグレンの咆哮だけが静かな森に響き渡った。
シューーー
ボロボロになったグレンが這いながら、執念深い顔でこちらを睨んだ。
「なぜだ……私の特技では……3つまでしか確認出来なかった……」
「AIを破壊されてまだ喋れるのか。大したもんだ」
「最後の切り札ってのは、ずっと出さないものだ。出さないように戦うんだよ。4つ目の特技があることは、仲間を含め誰にも言わなかった。奥の手はもっと用意してある。そういうことさ」
「すみません……ボス……」
そして、グレンはドローンに回収されていった。バーブが、ようやくその重い腰を上げて立ち上がった。
「まさかグレンを倒すとはな。認めてやろう。だが、お前らはまだ踊らされていることに気づいていない」
「踊らされている? なんのことだか。じゃあ言うが、バーブ、お前のポイントがどうやって守られているのか。それをこちらが掴んでいるとしたら?」
「ほぉ? 中々面白いことを言うな」
「最初にこの訓練であの島に来た時、異変を感じた。俺の番号が170番で最後だったのに、島には168人、俺を含めても169人しかいなかったからだ。そこで、その1人がどこかに隠れているという仮説は容易に立った。ただ、そこからBグループに繋げるまでには時間がかかったがな」
「なるほどな。それで、だからなんだ?」
バーブはずっとニタついている。その笑みが不気味だった。
「そして、こちらはスパイを用意し、バーブと俺達との戦闘の隙にその1体のアーティーを撃破しに行ってもらっている。まさか、あのテンドとかいうアーティー、盗聴器をつけられているとは思いもしなかっただろうな」
「フハハハハ!! 面白い。面白いぞ!!」
意外だ。まるで驚いていない。
「気が狂ったのか? リタイアするなら今のうちだぞ」
「悪いな。まさかここまで上手くいくとは思わなかった」
バーブの笑みはさらに不敵になっていた。
「何だと?」
「お前は、テンドに盗聴器をつけた。そして、こちらの作戦と最後のアーティーの居場所を突き止めた。だが…それさえもこちらの作戦だとは考えなかったみたいだなぁ」
「……………は?」
シンはまるっきりその意味が理解できなかった。息をするのも忘れていた。




