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AI棒  作者: 君名 言葉
第一章 2人の博士編
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第二話 目的

「ほれ、終わったぞ」

 人気のない工場に、老人の声が響く。

「ああ、博士。いつもありがとな」


 シンはしゃがれ声の老人に言う。O型アーティーとの戦闘後、シンは都内某所の研究施設兼、部品工場に来ていた。戦闘で得たレアなパーツを見てもらうためだ。

 それから、この白いひげがよく似合う老人は、菊間博士。シンの最も信頼する人間であり、幼いころからシンを知る人物でもある。


「で、どうだった? 例のパーツは?」

「ああ、sariの言う通り、今は製造しとらん。製造中止になったのは最近じゃが、これから価値は上がるじゃろうな」

 どうやら、かなりの戦利品だったようだ。

「やった。また強くなれそうだな。sari」

「ほっほっほ。成長したなあ。シン。昔のお前がすでに懐かしいわい」

 幼いころに父を亡くしたシンにとって、菊間博士は父親のようなものだった。


「ああ。感謝してるよ」

 菊間博士がいなければ、生きてこれなかったのだから。


「ところで、シン。お前、アーティカルグランプリには出るのか?」

「あー?まだ今は検討中って感じの所だけど……」

「お前、そもそもアーティカルグランプリとは何か分かっておるのか?」

「まあ……多分……」

「おい!バカもん! なんでそんな肝心なことをごまかすんじゃ……ほれ、sari説明してみい」


『了解 アーティカルグランプリ とは 応募された アーティーの中 から トーナメントを 行い 優勝者には センテレントエリア への 入場パス と 賞金 そして 超希少パーツが 贈られる ドラゴン〇ール で言う 天下一武〇会の ような ものです』


「その通り。ちなみにセンテレントエリアとは、この世界で限られた人物だけが入場できる、特別なエリアじゃ。そして、3年に一度しか行われないアーティカルグランプリ、通称アーグラに、お前は挑戦するのかと聞いてるんじゃ」

「あ。なんか言ってたなあ。確か2か月後だっけか?」

「そうじゃ。いくらお前でも、正直優勝は厳しいぞ」

「え?マジかよ? じゃあどうすりゃいいんだよ?」

 自分が全くの無知であったことに今更気づく。

「アーグラの優勝者は毎回別格じゃからな。到底及ばんじゃろ」

「そ、そんなあ……」

 シンはがっくりとうなだれた。


「まあ話を最後まで聞けい。無理とは言うとらん。わしの技術があればな。しかし、技術があっても素材がなければ不可能じゃ。何が言いたいかわかるじゃろ?」

「つまり……パーツを集めろってことだろ?博士」

「ああ。その通りじゃ。優秀なパーツがなければ優勝など100%不可能じゃ。それこそ、宝くじの一等当選より」

「そんなに厳しいのか。まあとりあえず、2か月で死ぬ気で集めるよ」

「おう。その意気じゃ。頑張ってくれ。そして、優勝賞金でわしの老後を楽にさせてくれ」

「やっぱりそれが目的か……」

 だが、博士のこういう正直なところも、シンは大好きだった。


「おお、そうじゃ。忘れとったわ、ほれ。さっきのパーツを改造して作ったブースターじゃ」

「ブースター?」

 シンは、その名前を初めて聞いた。

「ああ。ブースターってのはな、簡単に言えば、手のひらからでるレーザーの威力とか、範囲をレベルアップするんじゃ。少し体が重くなるが、まあ変わらんじゃろ。ほれ。装備してみい」


 そう言うと、博士は、その「ブースター」というメタリックな赤色のものを差し出してきた。手のひらの部分に穴が開いていて、腕パーツの上からさらに重ねて装着するようだ。


 ガチャン!


 パーツがハマった音がして、sariから音がした。

『ピロピロリン! ブースター 装着 完了』

「おお!すげえ! 早く打ってみてえ!」

「ほっほっほ。そうじゃろそうじゃろ。だが、燃料と充電は忘れずにな。アーティーにとって燃料&充電は命そのものじゃぞ」

「ああ!ありがとな博士。これでパーツ集めはかどりそうだ」


「それはそうと、これからどこに向かうんじゃ?」

 嬉々とするシンを前に、博士は言う。

「え?そうだな。そういえば、箱根に行こうとしてたんだよ。俺」

 すると、博士の目の色が変わった。


「お前、あいつに会いに行くのか?」

「あいつ? 博士、知り合いか?」

「知り合いも何も、昔、あいつはわしと一緒に研究しとったんじゃ。それがいつのまにか、H型とO型などという派閥ができて、今じゃ関りはなくなってしもうた」

「へー。そうなのか」

 シンがそういうと博士は少し怒った顔で言った。


「シン、お前、どれだけ危険なことかわかっとるんか? ハチの巣に突っ込んでいくようなもんじゃぞ」

「大丈夫だって。こっちには作戦があるんだ」

「作戦じゃと? お前がそんなものを考えるなんて珍しい。まあいい。とにかく死ぬんじゃあないぞ」

 博士の目は少し穏やかな色になった。


「分かってるって。そもそも俺が戦う目的だって、H型だとかO型だとか、そんなくだらない境界をなくして平和な世界を作るためだからな」

「それは知っとる。気を付けるんじゃぞ」

「もちろん。よし、行くか、相棒」


 シンは少し青空を見てから言った。

「Hey,sari 飛行モードに変形してくれ」

『了解 脚 パーツを 飛行モード に 変形 します』


 ウィーンガチャ、とお決まりの音がしてから、青白い炎が出る。目指すは箱根、そこに新しい強さがあるのだ。


「箱根までどれくらいだ?」

『目的地まで 約 23分 です。適当な音楽 を 流しますか?』

「いいねえ。せっかくだからこの青空に似合うやつ頼むよ」

『はい RADWIMPS の 君と 羊と 青を 再生します』

「最高だなお前」

 冒険はまだ始まったばかりだ。

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