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AI棒  作者: 君名 言葉
第二章 特別訓練編
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第十四話 大規模イベント

 次に大きな変化があったのは、特別訓練が始まってから一週間経った頃だった。1日の活動を終え、洞窟で休んでいたシンに、1通のメールが届いた。この訓練の運営局からだった。


『3日後に大規模イベントを開催します。内容はいたってシンプル。H型とO型のアーティーに分かれて市街地に移動し、そこで一騎打ちの戦いをしていただきます。制限時間終了時に、生き残り数が多い方が勝勝利となります。 勝ったチームは、全員が7000マイル獲得。負けたチームは全員がマイナス5000マイルされます。もちろん撃破されたら訓練自体が失格。さらに、イベント内で敵アーティーを撃破した場合、そのアーティーの所持するマイルをそのまま獲得できます。参加希望の方は、このメールに参加希望の旨の返信をしてください。各チーム25人になった時点で受付終了です』


 といった内容だった。実は、この訓練の敷地の中心の島、市街地エリアはまだ解禁されていない。近づこうとしたらバリアが張ってあった。このイベントに使うためだったのだ。

 シンは、もう一度メールを読み返してみようと、一度閉じたメールアプリをもう一度開いた。すると、ちょうど、コルンとサキが帰ってきた。


「シン、メール、見たかい?」

「ああ。また新しい要素の追加だな。盛りだくさんすぎて困る」

「そうだね。でもこれについては話し合う必要がありそうだ」


 コルンが腰を下ろし、サキは壁にもたれかかりながらこう言った。

「H型とO型に分かれるんでしょ? それじゃあO型のコルンと、H型のシン、私は敵同士になるわ」

「そうだよね。チーム分けの関係上、3人とも同じチームではないね。だから、どうしようかな。シンとサキだけでも参加する?」

 参加は絶対にした方がいいが、期間中にコルンが1人になるのは危険でもある。


「正直微妙な判断だな。相手による。コルンが言ってた、バーブってパワー型のアーティーはO型だったよな」

「バーブはO型だね。それに、間違いなく参加するだろう。逆に、ここで奴を叩いておけばかなり今後優勢になるけど…… なんせ自分の腕に圧倒的自信を持つくらい強いからね」

「まあバーブ叩きは今回じゃなくてもいいさ。サキはどうする?」


 先程からサキはずっと考え込んでいるようだったが、突然口を開いた。

「あの、こんなタイミングでこんなイベントをするなんて、何かおかしいと思わない? まるで、運営側は早くこの訓練を終わらせたいみたいに」


 その発言に、コルンが素早く反応する。

「確かに一理あるね。今現在の残り参加者が87人。仮に各チーム25人申し込んだら計50人。これじゃ、イベント後にはかなり数が減るよ」

「俺は今のところ参加しようと思う。トレースの特技スロットさえ間違えなければ、やられることはないはずだ」

「分かったわ。じゃあ私も参加する。私が盾役に専念すれば、あなたも攻撃寄りの特技を設定できるでしょ?」

「助かる。これで大きく戦い方の幅が広がった」

 防御を気にせずに戦えるのは、単にうまい話だ。


「じゃあさすがに僕は不参加だね。2人の敵になっても意味がないし」

「そうか?俺は参加すればいいと思うけどな」

「な、何言ってるのシン!?」

「だから、コルンは勝たなくていいんだよ。先に俺とサキにマイルを預けておけば、負けても没収される心配はないだろ。 まあこっちチームが負けたら終わりだけどな」

 生憎、シンはそんなことは想像がつかなかった。


「でも、僕に参加してできることなんてある?」

「例えば、あっちチームの連中を騙して俺とサキに倒させるとか」

「なるほど…… 確かにスパイ的な役割は出来そうだね」

「早く返信しちゃいましょう。すぐに定員になるかも」

 そして、3人全員が参加することを選んだ。コルンは、スパイとして、O型チームを裏切り、H型チームを勝たせるための作戦を練っていた。


「そういえば、同盟の方はどうなんだ?」

 この中で唯一同盟に属していないシンは、2人の同盟での様子が気になった。

「私の方は特に何も。参加希望の人すらいないみたい」

「こっちの同盟は、昨日、裏切りが出たよ」

 すごいさらっと言うな……


「ってことは、誰かが疑われたりしてんのか?」

「いや、成立はしてない。つまり、裏切り者が最高マイル保持者を外したんだ。でも、チャレンジ失敗ってメールは届いた。だから、今リーダーは狼探しをしてるよ」

「コルンは疑われてないのか?」

「なんとかね。でも、これで崩壊することはなさそうだ。疑わしい人物は外される予定になってる」


 そして全員が晩ごはんを食べた後、数日後の大規模イベントの会議が始まった。

「このイベントの目的はあくまでこのチームの勝利。まず、コルンは俺かサキにマイルを全額渡してもらう。それから、コルンの役割だが、同じO型を裏切ることになると、心が痛むと思う。それでも大丈夫か?」


 しかし、コルンの目に迷いはなかった。

「この島に来たら、O型もH型も関係ないよ。このチームで勝つのみだからね」

 サキもかすかに微笑んだのが分かった。


「よし、よく言った。コルンは、敵陣営にいるはずなので、他のO型アーティーの位置を教えて欲しい。それだけだ。そしたら、俺とサキが仕留めに行く。コルンが攻撃されないように細心の注意を払いながらだ。やれるか? サキ」

「当たり前じゃない。侮らないで欲しいわ。とにかく守りに徹すればいいんでしょ? 楽勝よ」

 サキの強気な性格はこういう時に助かる。

「さすがサキ。よろしく。それで俺の方なんだが、サキが守りにまわってくれる分、攻撃に特化できる。だから、スロットはこれでいこうと思う」

 そう言って、端末に表示される3つの特技を二人に見せた。



【かまいたち】 【レーザー砲】 【ルーレット】



「おお!すごいねシン! 【かまいたち】って、あのスピード型最上級の攻撃特技でしょ? 気づかない間に斬られてるってやつ! よくこんなの持ってるね」

 コルンは目を輝かせながら言った。サキの方はと言うと、相変わらず冷静だ。

「【レーザー砲】があるのね。なるほど。私とタッグプレイだから瞬間移動を除いたってわけかしら。しかも、この間の【大砲】の上位互換まで持ってるなんて。なんかムカつく」

 なぜか冷めた目で見られているのだが。


「えっと…… シン……」

 コルンが怪訝そうにつぶやく。

「ん? どうかしたか?」

「あえて最後まで言わなかったけど、この、【ルーレット】ってなに?」

 なんだ、それに引っかかっていたのか。


「ああ、これは、俺のタイプの、【トレース】の固定特技でさ。最初から使えるんだ。持ち特技全てからランダムに1つ発動される。まあ、今の段階で100個くらいあるから…… 狙って出すのは無理だろうな」

「へえ。そんな固定特技なんだ、トレース型は。砲撃型だと、固定特技の大体が【ミサイル】だからね。全然知らなかった」


 ◆


 アーティーの仕組みは少しだけ複雑だ。ここで一度、復習しておこう。


 まず、すべてのアーティーは、H型かO型かに分かれる。この段階でも多少の違いはあるものの、元々の製造元が違うだけでほとんど同じだが、世界各地で対立が起こっている。これは、絶対に変更はできない。

 そして、次に、【スピード型】【パワー型】【砲撃型】【空中型】【防御型】【双剣型】【特殊型】など、戦闘の型まだまだ多種に分かれる。これは、改造などによって変えられるが、改造のリスクや失敗率が高いのでほとんど行う者はいない。そして、各型ごとに、最初から持っている 、"特技"という概念がある。


 特技は、腕、頭、脚、胸パーツなどの、パーツの組み合わせで無数に増えるし、その都度変化する。レア度の高いパーツを組み合わせると、特技数は少なめだが、一つ一つは強力になる。逆にレア度の低いパーツは、特技の量が増え、一つ一つは微妙なものになる。また、最大15個まで設定できる。


 ◆


「例えばなにが出るの?」

「そうだな。場合によるけど、ピンチの時に欲しいのは、【5秒無敵】とか、【1分後に攻撃全反射】とかだよな。【自己修復】、【一定時間防御力アップ】もいいけど」

「まあいいわ。ピンチになるようなことはないでしょ」

「いや、実際結構ある」

 コルンとサキは、完全にシンの強さを信じ切り、勝つために盲信している。


「そうだね、シンの強さを改めて知ったよ」

「とりあえず、今日の会議は終わりにしよう。明日、俺は、市街地エリアを周囲から少しでも視認できないか確認してくる」

「了解。じゃあ、また明日」


 その日は、それでお開きとなり、コルンは同盟の集まりに、サキは見張り当番をしに行った。もう既に見慣れた洞窟の壁を見て、シンは思う。



 俺は、今に俺の選択は正しいのか……?

 珍しく弱気になったシンだったが、すぐに眠りについた。3日後には、戦争が始まるのだ。胸の高まりが抑えられなかった、

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