5 魔族の国18
五階
いよいよ最後のステージだ
今度はさっきと違って明るいね
シャンデリアや装飾がキラキラと輝いている
でも、それらのところどころは壊れ、敷き詰められた絨毯にはシミや穴がある
きれいなんだけどボロボロという矛盾のフロア
それが不気味さを醸し出していた
「ん? 今何か通った気がします」
テュネが怖いことを言った
やめて、心臓に悪いから(ありません)
「あほらまた!」
あれ? 確かに気配がする
後ろ?
「そっちです!」
テュネが指をさす方向に真っ白な子供レイス(といっても僕より年上っぽい)の姿があった
今までのレイスと違って神々しい気がする
衣装も豪華で、どこからどう見てもお姫様だった
「ハロー」
そのレイスは気さくな感じで挨拶してくれた
前階とのギャップがありすぎる気がする
「私がレイスプリンセスのエルナリアちゃんなのです! うら~メシア~」
う、うん
どう反応すればいいのか分からないけど
とりあえず怖くない
「あれ~? 怖がってくれないのですね。 せっかくトモエに怖がらせるセリフを聞いたのに~」
プンプン怒ってるかわいい
「あの、うら~メシア~じゃなくて恨めしやね。 それともっと恨みをこめて言わないと」
「あ、そうなんですか~。 エルナリアちゃんうっかりです~」
テヘペロと舌を出してる
今まで怖がらせてきたのに、ここはほのぼのしてるなぁ
「さてさて! ここまでたどり着いたことをほめてあげましょう! でもここまでなのです! このプリンセスクラウンを手に入れるには私を捕まえなきゃならないのですよ~」
どうやら五階はエルナリア姫との追いかけっこらしい
彼女にタッチすることができればクラウンを手に入れることができ、今まで集めた五つのアイテムを使って最奥のカギを開くとクリアだ
これなら怖がりな僕とエンシュでも大丈夫そう
エンシュもエルナリア姫のことを怖がってないし
「それではよーい、スタートなのです!」
エルナリアの掛け声で追いかけっこが始まった
そしてすぐに理解した
彼女、恐ろしく速い!
「こっちですよ~」
そして壁もすりぬちゃうから追いつめても逃げられてしまう
「あぁあああ無理! これ無理!」
僕が地面に転がって駄々をこねるとエンシュが抱き上げた
「もう少しだけ頑張りましょう。 まだあきらめるのは早いです。 私たちがサポートしますから」
「そうだね。 まだあきらめちゃだめだよね」
僕はところどころにお札トラップを仕掛け、全員に聖水を持たせた
これで追い詰めて一斉にとびかかるんだ
「そっち行ったよテュネ!」
「はい!」
テュネがエルナリアを追い立てる
逃げるエルナリアをさらにアスラムとフーレンが体で壁を作って通せんぼをする
「ふふん、その程度では捕まらないのですよ~。 あとトラップですか? 全部見えてるから無駄なのです~」
「かかりましたね!」
エルナリアが向かったのはエンシュの方向
彼女の横には部屋
エルナリアは迷わずすり抜けて飛び込んだ
「残念だったわね~」
「残念なのはそっちだ」
「え?」
エンシュが紐を引くと、部屋の上に仕掛けられていた聖水が一斉にエルナリアに向かってこぼれ落ちた
今まで手に入れていた聖水をほぼ全て仕掛けていたのだ
「うわわわわ」
慌てるエルナリア
でもその顔は笑ってる
「惜しかったけどまだまだね~」
彼女は既に僕たちの後ろにいた
「え?」
「ふふふん♪ 私はね、テレポートもできるのですよ~」
胸を張ってる
「そこだ!」
僕はなかまんじゅうを投げた
ここにはエルナリアしかいない
つまり、彼女がキーパーソンだ
口を開けて笑っているエルナリアの口に見事に飛び込んだ
「あぐむっ、ムグムグ、ゴクン。 美味しいですね~」
どうやら成功したみたいだ
彼女が逃げているとき一度だけテレポートをしたところを見た
だからこそ二重にトラップを仕掛けていたのだ
「ふっふ~、どうやら私の負けのようですね~。 はいこれ、クラウンなのですよ~」
嬉しそうに自ら王冠を外して僕たちに渡してくれた
「私は、ここにいる人たちを守れなかった。 ずっと、悔しかったのです」
悲しそうな顔をするエルナリア
「レイスプリンセスになってみんなを率いて復讐を果たしました。 その時この地は戦場となり、裏切った人間たちを皆殺しにしたことから悪夢の戦場跡と呼ばれるようになりました。 復讐の塊となった私たちは何年もこの地をさまよっていたのですが、現魔王様が私たちの恨みを一身に引き受けてくれました。 そのおかげで今私たちは幸せに暮らせています。 だから私たちはここであの方のお役にたちたいのです」
さっきとは一転、真面目に話してくれるエルナリア
その姿はまさしく姫だった
「さて! それではキーアイテムを全てここに置いてください~」
彼女が指したのは台座
そこにはそれぞれのキーアイテムに合ったくぼみがある
それにはめ込むと、台座が床に入っていった
それと同時に手前から宝箱がせりあがってくる
「これがホラーハウスクリアの商品です~。 おめでとうございます~」
宝を開けてみると、透明なオーブだった
「それは私たちレイスを呼び出せるオーブなのです! かなり貴重な宝なので大事にしてくださいね~。 あとあと、私とお話もできちゃいます! いつでもお話しましょうね、精霊様!」
あ、どうやらばれていたみたいだ
彼女は館に入った者の情報を読み取る力もあったみたい
そんなこんなで僕たちはホラーハウスを後にした
非常に楽しめたと思います
さぁ、おなかもすいたことだし、デスヘルズで何か美味しいもの探すぞ~!
ちょっと長かったかな
まぁレイスプリンセス思いついたとき色々書きたくなったからしょうがないね




