5 魔族の国9
事態も終息して落ち着いたキーラは自分の仕事である視察に戻って行った
勇者の方は少し世界を旅してくると言ってどこかに行ってしまったけど、一か月に一度は必ず戻ってくるとキーラを安心させていた
さて、観光、の前に母さんに報告しなきゃ
それとシノノに調査はもういいって言っておかないと、あのお姉さんはいつまでも情報収集しかねない
それぞれに連絡を終えてから早速観光名所を回ることにした
まずは近くの街に向かおう
そこには異世界人が建てた時計塔があるらしい
ビッグベンみたいな感じかな?
それより、この世界に時計があるなんて驚きだ
どうやらその時計塔を建てた異世界人は時計職人だったみたい
腕時計も作れたらしい
もう亡くなってるので今は魔族の弟子が作ってる
歩いて数時間後、時計塔のある街に着いた
大きなイギリス様式の建造物が立ち並ぶ中、その中心に件の時計塔があった
大きい、今まで見たこの世界の建物で一番大きい
そして、そのてっぺんあたりに数字の文字盤で作られた大時計がはまり込んでいた
かなりおしゃれな文字盤で、日光に照らされてほんのり輝いて見える
「リディエラ様、あそこに時計ショップなるものが!」
テュネ?
どうしたの、性格変わってない?
いつも冷静なテュネがものすごく興奮している
どうやら彼女、異世界の技術がものすごく好きらしい
よし、一つプレゼントしよう
と、思ってたんだけど…
高い
ものすごく高いんだ
この腕時計一つで屋敷が買えるよ
「いいんですよリディエラ様、見ているだけで幸せですから!」
本当に幸せそうだ
だけど、普段からお世話になってる四大精霊たちにはこういうものをプレゼントしたかったんだ
しょぼんとしていると、職人らしき魔族の男性が話しかけてきた
「こちらは一番弟子であるクーロークさんが作成したものですから少々お高いのです。 ですのでこちらはどうでしょう?」
彼が出してきたのは懐中時計だ
文字盤はなく、線のみだけど、綺麗でよくできていた
「これらは全てうちの職人たちが作った練習作品でございます。 腕を磨くために作成したものですが、どれも製品としてはちゃんと完成されています」
確かにどこを見ても普通の時計と遜色ない
それに、振ってぜんまいを巻くタイプなので簡単だ
お値段は…
これなら今のポケットマネーで買える!
どうやら練習用なので部品などは大量生産されているものを使ってるらしい
でも、品質は折り紙付きだ
よし、これを5つ買おう
それぞれデザインが違うやつをね
僕はその懐中時計5つを自分が冒険者として稼いだお金で購入して四大精霊たちに渡した
みんなすごく喜んでくれてる
テュネなんか涙を流してくれた
なんだか成長した子供を見るお母さんの目をしてる
プレゼントは大成功かな
そんなことを考えていると、突如町中に鐘の音が鳴り響いた
天まで届きそうな美しい鐘の音がお昼を告げている
グゥ~
お腹が鳴った
「お昼にしよっか」
街を歩き、飲食店を探す
そして見つけたピッツァ屋さん!
なんと、異世界でピザが! 食べれるのですよ!
それも! 本格的な窯焼き!!
興奮してきた
中に入るとすでに席は埋まっていたので、外にあるテラスで食べることにした
気持ちのいい風が吹き抜けていて、日光がポカポカと温かい
メニューを見てそれぞれ別なピッツァを頼んだ
僕はオーソドックスにマルゲリータ
ふと思ったけど異世界人の料理人多すぎない?
普通にマルゲリータがあることにびっくりだよ
いや、でもこの世界は転生者や異世界人が非常に多いのでそういうこともあるのかな
次にテュネはシーフード、エンシュはディアボロ風、これは辛そうだね、絵を見る限り真っ赤なんだもん
フーレンは鶏肉にモッツァレラチーズとルッコラが乗ったピッツァ
アスラムはクアトロフォルマッジハチミツソース付き
しばらくするとピッツァが運ばれてきた
良い匂いだ
それぞれのピッツァをシェアしあってかぶりついた
うまい!
マルゲリータのトマトソースが絶妙だ
モッツァレラチーズの味と香りを引き立ててくれてる
それにこのルッコラ、ほのかに甘みがある
シーフードはエビ、ホタテ、イカ、タコ、サーモンの燻製、とにかく具沢山で、食べ応えがある
ディアブロ風、すごく辛い、でも、チーズがいい感じでまろやかにしてくれている
鶏肉のピッツァは蒸し鶏が使われているみたい
柔らかい鶏肉とチーズの絶妙なハーモニー
ソースはさわやかなレモンソースだった
クワトロフォルマッジはあまいハチミツ、ハニーシロップによってゴルゴンゾーラの臭いがうまい具合に包まれて味がより一層引き立っていた
大満足としか言いようがない
この世界で大好きなピッツァが食べれるなんて幸せすぎる
また僕のメモ帳に新しいお気に入りの店が加わったのは言うまでもないのです
やっぱりほのぼのが一番




