勇者4
ニーバのことはこれで解決した
まさか精霊の王女様がコンタクトを取ってくれるとは思わなかった
それより精霊女王様に娘が生まれていたとはな
生まれてまだ1年ほどと言っていたがしっかりしていた
とりあえずニーバのことはこれで安心だ
俺は魔王を狙う黒幕を追うことに専念しよう
だが手掛かりは全くないと言っていい
さて、どこから探したものか…。
一旦ジューオンに帰ってみるか
俺は帰還の魔法を発動させた
このくらいの魔法なら今の俺でも使えるみたいでよかった
ジューオンに帰ると精霊が来た話で住民たちが盛り上がっていた
王女様は異変を調査していると言っていたな
それに魔王を襲っている何者かの捜索も手伝ってくれるみたいだ
精霊達に感謝しないとな
ここに来ていた王女様はサルハに行ったみたいだ
どうやらそこの視察をしていたキーラがまたしても襲われたらしい
くそっ、俺がいない間に襲うとは油断した
俺は急いでキーラの元へと走った
あの子の居場所なら探知で大体の居場所は確認できる
探知を発動させると、キーラは意外と近くにいた
すでにジューオンに戻ってきているようだ
まぁ命を狙われているんだから本当は動いてほしくないんだが、魔王だから仕方ないこともあるのだろう
久しぶりに会うキーラ、10年ぶりくらいか
「キーラ、久しぶりだな」
「アイシス!」
キーラが嬉しそうに駆け寄ってきてくれた
俺は彼女の頭に手を乗せた
「大丈夫か? 俺がいれば守ってやれたのに」
「大丈夫、何とか自分で退けれたから。 それよりもアイシス、この国にはしばらくいてくれるの?」
あぁ、こうやって話すのも懐かしいな
「ああ、そうだな。 君の暗殺をたくらむ奴を向付けたいのだが、今のところ手掛かりがないんだ。 しばらくはここを拠点に痕跡を探そうと思う」
キーラは俺に抱き着いた
「アイシス! 嬉しい。 私ね、頑張ってるよ。 でも、やっぱり敵は多くて…。 殺されそうになって…。 怖いの、すごく怖い、ぐすっ、うぐっ、うぅうう」
普段強がってはいるがこの子は本当は怖がりだ
リドリリもそれを知っているからキーラを抱き寄せている
俺たちが守ってやらなきゃ
キーラは一通り泣いて落ち着いた
俺はしばらく彼女と一緒にいてやることにした
彼女は屈託のない笑顔を浮かべている
この子は50歳を超えているが、魔族での50歳はまだまだ子供だ
人間でいうところの10歳くらいか
リドリリも同じくらいのはずだが彼女は成長の早い魔族だったはず
魔族もピンキリなのだとよくわかるな
俺の膝を枕にして寝息を立て始めたキーラをリドリリに預けて俺は再び探索に向かった
そういえば、ギンジョウとかいう魔族が殺されていたらしい
そいつの殺害現場に行ってみるか
何かわかるかもしれん
ギンジョウは操られていたらしいが、操ったのはニーバで間違いないだろう
だがギンジョウを殺した何者かは他にいるはずだ
彼が殺された時ニーバは遠いところにいたのだからな
俺はまずギンジョウの素性を調べた
どこにも怪しいところはないが、周囲の魔族とはあまり話さない男
剣術に優れていて、ヒノモトという島国で修行をしていたということが分かった
ヒノモトか、あそこには特殊な職業があったな
侍、忍者だったか
遥かな昔に異世界から来た者が作った国
まだ行ったことはないが、礼儀正しい人たちばかりで観光に適しているとか
キーラを狙う者を倒した暁にはキーラと一緒に名物の温泉巡りもいいかもしれんな
そんなことを考えながらギンジョウの殺されたところへとやってきた
人通りの少ない大きな木の陰
そこには刀傷のついた幹といまだ血染みの残った剥き出しの木の根があった
魔力の残り香は…。 ないな
刀は一般的なものでどこででも手に入る
そこで俺は地面にきらりと光る何かを見つけた
ガラス片?
いや、まるで宝珠のようななにかのかけらだ
そこから少し魔力を感じた
これはもしかしたら手掛かりを見つけれたのかもしれない
かなり小さいが、これを魔族の調査員たちに見せてみるか
俺はそのかけらを持ち帰り、調査範囲渡して結果を待つことにした




