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4 エルフの国1

 メローから新しく広がった開拓地、そこからさらに街道を通していく予定の森を進んでいく

 今までは森を迂回するルートを通ってこちらからエルフの国と交流をしていたらしいんだけど、この街道が出来上がれば一直線に向かえるのでかなりの時間短縮となるだろう

 まだ街道はできていないけど、僕らはちょっと手伝うことにした

 街の人達には迂回ルートを通っていくと言ってあるので多分ばれないと思う…


 これからやることは一つ

 街道になる予定の道を僕たちの精霊魔法で切り開くのだ

 エルフの国へまっすぐ向かいながらの作業となる

 

 問題はばれないかどうか

 まぁこんな作業、人間が一日にしてできるはずがないのでばれないとは思う

 もし怪しまれたら精霊様が来て気まぐれに手伝ってくれたと言っておこう

 現に精霊がやってることだしね


「ではいきます」


 まずテュネが方向を定め、エンシュが炎で一直線の道を作る

 その線に沿ってフーレンが街道分の幅木を伐っていき、アスラムが切り株を掘り起こしていった

 速い速い

 普通に歩いてるのと変わらないスピードで進んでいく

 途中途中に広場を作り、切った材木を重ねて置き、さらに伐って進み、また広場を作って材木を置く

 それを繰り返しながら順調に進み、早朝に出てから数時間、昼前にはエルフの国と目と鼻の先にまで来てしまった

 (ちなみに材木を積み上げているのは僕です)

 予定よりだいぶ早い


 僕たちが国境線に現れたことでどうやらエルフたちも気が付いたようだ

 木々の枝から枝へ飛びながらエルフたちが僕らの前にひざまずくように着地した

 

「精霊様、ようこそおいでくださいました! 何用でこの国に?」


 そう言ったのは精悍な顔をしたエルフの男性

 やばい、かっこいい

 

「顔をあげてください、僕らは旅行でここに来たんです」


「旅行? ですか? それはそれは、我らエルフにとっても大変喜ばしいことです!」


 少しだけ訝しんだ顔をしたけどどうやら歓迎してくれてるみたいだ

 今は満面の笑みで接してくれている

 この世界、精霊ってホントに人気者なんだね


「ところで、今この国で何か困ったこと起きてない?」


 遠回しに聞くなんて苦手だからストレートに聞いてみた


「あ、いえ、精霊様のお手を煩わせるほどでは…」


「いいから言ってみてよ。 もし手伝えることがあるなら手伝うよ?」


「しかし、これはエルフの問題でして」


 もう!頭が固い!


「いいから言ってみて!」


 ちょっと口調を荒げると、しぶしぶと言った感じで語ってくれた

 

 まず彼の名前はオーシュと言って、エルフの国ハイルーンと人間の国ラーマインの国境を管理する警備隊のリーダーらしい

 現在この国で起こっている問題、それは大飢饉だった

 今まで豊かだった森の食べ物や作物、畑などその全てが全く実らなくなってしまったようだ

 それもこの数ヵ月、ほぼ食物が取れていないらしい

 すでに体の弱い者や子供に餓死者が出始めているのでかなりの大問題だ

 この国、というよりエルフには老人はいない

 不老だからね

 ただ、寿命はあり、老衰で死ぬエルフもいる

 今は餓死者が多いみたいだ

 確かに改めてエルフたちを見てみると、誰も彼もやせ細ってしまっている

 だったらなぜ他の国を頼らないんだろう?

 疑問に思って聞いてみたら


「他の種族の方々に迷惑をかけるわけにはいかないとの女王様のお考えです」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? とにかく僕たちを女王様のとこに案内して!」


 死人も出始めているなら見ておけない

 何とかしなきゃ


 オーシュは分かりましたと僕たちを女王のところへ案内してくれることになった

 今向かっているのは首都ルーナだ

 かつてこの世界を救ってくれた異世界の人に敬意をこめて首都の名前にしているという

 ちなみに女王の名前はルニサニアと言って、その異世界人の二つの人格の名前からとられていて、代々女王になったエルフに受け継がれている名前だそうだ

 

 しばらく走ると、自然と一体化したような街が見えてきた

 街というより集落のようだけど、かなりの広さがあるので街かな?

 そこではところどころにやせ細ったエルフたちがいる

 その街の中心、そこに女王がいるみたいだ

 

 女王の居城は大きな木に築かれていて、周りの木々と調和のとれた綺麗な城だった

 僕たちを見た警備兵や城のエルフたちは跪いてお辞儀をしてくれてるけど、フラフラな体でそんなことするもんじゃないとやめさせた

 とりあえず女王に謁見するため彼女がいる部屋までやって来た

 

「女王様、失礼いたします。 精霊様がお見えになりました」


 それにこたえて中から弱弱しい声がする


「おお、精霊様が、お通ししなさい」


 中に入ると、そこには他のエルフよりさらにやせ細った女王がいた

 もはや立てないほどに衰弱しており、ベッドに横になっている

 僕らを見て座ろうと動いたので慌てて止めさせた


「精霊様、申し訳ありません、このような無礼な姿で」


「そんなこと気にしないから、とにかく今の現状を教えて、それとテュネ、たしかまだ袋にたくさん食料あったよね? それをエルフたちにあげて」


「はい」


 テュネは食料を出すため退席した

 

「そんな、精霊様、申し訳ありません」


 どうやら僕らからは施しを受けてくれるみたいだ

 断るのは失礼だと思ったのかな?


 女王ルニサニアさん(ルニアさんと呼ぼう)にもテュネが取り出した食べ物をあげた

 この数ヵ月ほぼ水しかとっていなかったので消化にいいバナナをマッシュして牛乳と混ぜ、果肉の入ったバナナオレを飲ませる

 それで少し回復したのか、座れるくらいにはなった

 ルニアさんは今のこの国の現状を切々と語り始める


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