魔王ちゃんを狙う者4
特訓をし始めてから早一か月、かなりリドリリの動きにも慣れてきた
この間吾輩を狙う者は一切動きがなくなってしまった
調査班からの報告も芳しくない
ギンジョウに付けられた刀傷、これの出所は国お抱えの刀鍛冶が作った一振りで間違いないのだが、誰でも買える低レベルのもので、かなりの数が出回っている
どうにも調査が遅々として進まない
結局何もわからないことだけが分かった
敵は結構なやり手だ
「キーラ様、息抜きをしましょう。 ずっとこう気を張っていてはお体に障ります」
リドリリが吾輩を気遣ってくれている
ここはその言葉を受け止めて少し息抜きをすることにした
ショッピングなのだ!
リドリリと一緒に街で服を買うことにした
実は吾輩、最近入荷したという異世界の服を着てみたかったのだ
用意をして街に繰り出す
一応変装しているのだ
そのままで行けばあっという間に取り囲まれてサインをねだられたりたたえられたりとショッピングどころではなくなってしまう
吾輩はメガネにツインテール、帽子で角を隠し、白いワンピースを着た
リドリリは普段のぴちっとしたスーツではなく、ゆったりとした落ち着いた女性らしい服にウィッグをつけて髪を長くした
これである程度大丈夫だろう
城にいる吾輩たちをよく知る部下でなければわからないはずだ
まぁ城の部下たちはめったに街に出ることは無いから大丈夫だろう
そう思っていたらリドリリ直属の部下であるカミネという少女(と言っても吾輩の方が年下)が現れた
リドリリを慕っているので人目見ればばれてしまうだろう
見つかって騒がれる前にリドリリが彼女を捕まえて
「カミネ、私たちは今プライベートな用件で街に来ています。 騒がないでください」
カミネは一目リドリリを見るなり
「お姉さま! こんなところでお会いできるなんて運命です! あ! ちょうどそこに怪しい宿屋があります! そこで少し休みましょう!」
まくし立てるようにリドリリに迫ったので、首元にチョップを入れられて気を失っていた
ひとまず倒れていたと宿屋に寝かせて急いで商業地区の奥の方まで逃げた
「ごめんなさいキーラ、あんなとこにあの子がいるとは思わなかった。 あの子、妙に鼻がいいから嗅ぎ付けちゃったのかも」
「大丈夫なのだ。 ほら、異世界の服を売っているのはちょうどここなのだ」
吾輩が指さす方向には服屋の看板があった
ここは異世界の服専門店で、異世界人の女性が店を開いているのだ
二人で中に入ると、今まで見たことない服が所せましと並んでいた
セーラー服と書いてある異世界の学徒が着る服や、スーツという異世界人が戦場に赴くための戦闘服、ブルマというパンツのような運動をするための服、迷彩服という森に隠れるのに最適な服などなど
吾輩は目をきらめかせながら服を見て回った
このスーツとかいう服はリドリリにすごく似合いそうだ
いろいろと服を見て回り、リドリリは着物というきらびやかな服を、吾輩は体のラインがよくわかるノースリーブのワンピースを着た
店員さんがこれが良く似合うはずだと勧めてくれたので、間違いないだろう
服を試着した吾輩を見てなんだか興奮しているようだけど、自分の作った服を着てもらえてうれしいのだろうな
興奮しすぎたのか、鼻血が出たので今は鼻にティッシュを詰めている
その二つの服以外にもいろいろと買ったのでこれからそれらを着るのがすごく楽しみだ
いい息抜きなった
リドリリには感謝しないとな
余談だが、カミネが目を覚ましたのは吾輩たちが去ってから5分後のことで、吾輩たちを探して街中を駆け回ったそうだ
帰って来たカミネは疲弊していたが、リドリリを見るなりすぐ元気になっていたので大丈夫だろう




