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3 鬼人族の国16

 二日目、この日は屋台がさらに出店される日だ

 今はまだ食べ物の屋台だけだけど、三日目四日目から遊びの屋台が出るらしい

 射的、輪投げ、くじ、型抜き、ヨーヨーすくい、広場では水鉄砲による対戦型のゲーム

 それに、人魚救いという変わったものまであった

 この人魚救い、その名の通り、鬼人族の実力者を倒して姫のような格好をした人魚を助け出すと商品をもらえるというものだ

 もともと異世界の人が伝えた金魚すくいを聞き間違えて始まったゲームらしい

 敵である鬼人の人の強さはピンキリで、くじを引いて強さが決まる

 一番弱い鬼人に当たれば戦わずして商品をゲットできる

 ちなみに一番弱いのは設定だけで、本来はかなり強いとのこと

 これはあとでやってみることにしよう

 まずは腹ごしらえだ

 

 屋台を見て回ると、鬼人国名物、鬼握りという看板が見えた

 美形のお兄さんお姉さんが手で握ったおにぎりを味わえるらしい

 具材は梅、こんぶ、鮭、てんぷら、高菜、わさび漬け、鳥そぼろなどなど、約30種類から選べる

 さらにはそれらを組み合わせることもできるらしい

 作り方はまず炊き立てご飯をパットに置いて少し冷まして人肌にする

 それを手のひら大にすくい、中に具材をこめて握る

 握り方はふんわり優しくだ

 

「美味しそうです~、私、あちらのお兄さんの握ったのが食べたいです~」


 フーレンが目を輝かせてよだれまで垂らしている

 このままではお兄さんごと襲いかねないのでこの屋台で食事にすることになった

 おにぎりを買った人には無料で熱いほうじ茶が出る

 僕は鮭と梅の組み合わせに高菜と明太子の組み合わせの二個

 テュネはわかめの塩焼きとトビコの塩漬け、魚の粗煮の二個

 エンシュはベーコンと桜鹿のしぐれ煮の二個

 アスラムは梅とたくあん、ムカゴ(山芋のツルにできる栄養素の塊)の塩焼きの二個

 フーレンは焼き鳥とカレー風味のタンドリーチキンのような鶏肉の二個


 僕は一口おにぎりを頬張ってみた

 途端に広がる梅の香りと鮭の程よい塩加減

 具材はたっぷりと詰まってて、僕の小さな口でどこから食べてもすぐに具に当たるほどだ

 鮭と梅を食べ終わり、ほうじ茶をすする


「あつっ」


 少し舌を火傷した上に、この暑さの中熱々のお茶を飲むとどっと汗が出た

 でも、どこかすっきりとして、むしろ清涼感が吹き抜ける気がする

 次に高菜と明太子

 ピリッと辛い具はご飯にすごく合っていて、すぐに平らげてしまった

 そのおにぎりを食べ終わると、店員の鬼人のお姉さんが冷たく冷えた緑茶を出してくれた

 水出しでゆっくりとお茶の成分を溶かしこんでいる味わい深いお茶だと説明してくれた

 クイッと飲むと、熱々だったほうじ茶の効果か、体中が涼しくなっていく

 なるほど、涼しさをも味合わせてくれるということか

 おにぎり、すごくおいしかった

 普段も普通に出店しているのみたいなので今度行ってみよう

 季節ごとに具材も変わるというので今から楽しみだ


 腹ごしらえも終わったところで遊びの屋台に向かった

 まずは射的に挑戦

 幻獣や神獣を可愛くアレンジしたぬいぐるみや、お菓子の詰め合わせ、ハクラ姫やクロハ姫、三獣鬼のアイドルグッズなどが景品としておかれている

 僕はユニコーンのぬいぐるみを狙って撃った

 その弾は見事にユニコーンの角に当たり、転がり落とした


「おめでとうお嬢ちゃん!」


 屋台のおじさん(と言っても若く見えるイケメン)がぬいぐるみを僕に渡してくれた

 嬉しい、この子とは夜一緒に寝ることにしよう

 ん? 思考が子供に戻ってる気がするけどまぁいいか

 今は本当に子供なんだしね


 次は型抜き

 綺麗に抜ければ景品ゲットだ

 龍を模した型が一番点数が高いので迷わずそれを選んだ

 ここで型抜きが分からない人に説明しておく

 型抜きとは砂糖などで出来たお菓子に絵が掘ってあり

 針を使ってその絵の通りに形を抜くことができれば点数をもらえ、その点数に応じた景品がもらえる

 砂糖菓子なので削った部分はもちろん食べることができる

 ちなみに柄の部分がひび割れたり崩れたりすると失敗だ


 龍の型抜きはかなり難しく、ゆっくりと針を刺していった

 今までにないほどの集中力で抜いて行く

 30分くらいかけてようやく抜き終わった

 我ながら非常にきれいに抜けたのではないだろうか

 屋台のおじさん(もちろん若く見えるイケメン)に持っていくと、おじさんは型をじっくりと見て

 

「すごいじゃないかお嬢ちゃん、完璧だよ」


 僕は誇らしくどや顔をした


「ここから景品を選んでね」


 景品の中にはゲーム屋台無料券(祭り終わりまで有効)、大きなハクラ姫とクロハ姫のぬいぐるみ、鬼ヶ島アイドルズの限定サイン色紙

 そしてなんと、鬼ヶ島製造の刀一振りというものがあった

 これには自分の好きなようにデザインができる特典までついていた

 刀、欲しい

 僕はその景品をもらうことにした

 なぜここまで景品が豪華なのか

 もちろんそれほどまでにこの龍の型抜きが難しいからだ

 この祭りで最初に屋台が出された59年前から今までで僕を含めて三人しか成功していないのだ


 刀の引換券をもらい、後で工房へ行くことにしてまた屋台を楽しんだ

 途中に焼きトウモロコシやたこ焼きなどを挟みながら充実した祭りを過ごす

 人魚救いは明日にしようっと

 それに明日は御神輿が出るそうなのでそちらも見学することにしよう


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