3 鬼人族の国15
いよいよだ、いよいよなのだ!
やっとこの日が来た
お祭りの開催である!
神聖な儀式の後、かなり盛大な開祭の宣言がなされた
歓声がそこかしこで沸き、屋台が一斉に開いた
そして、初日の神降ろしの儀式が始まる
やぐらの下の儀式台の上ではクノエがきらびやかな巫女服に着替え、鈴のような神具を空にかざし、ふるった
シャーンと、涼やかに響き渡るその音は聞いているだけで心地が良かった
鈴の音が空を覆うようになり続けると、太陽から光のカーテンが降り注いだ
そこに美を体現したような女性が降りてきた
彼女こそがアマテラス
まさに神々しいという言葉がぴったりと当てはまる
今この場にいるすべての人が女神アマテラスを見つめ、言葉を失っていた
「きれい…」
僕は思わずつぶやいた
アマテラスは微笑を携えて優しい目で僕たちを見渡すと、クノエの体へと入っていった
クノエはしずしずと儀式台の上にある神座に座るとゆっくりと目を開いた
「わらわの可愛い子らよ、さぁ、願いを言うてみぃ、年に一度のアマテラス開催、あなたのお願い聞いたげるじゃ! さぁ、さぁさぁ、まずは誰の願い事かの?」
ハハ、か、かなりフランクな神様みたいだ
まずは抽選会だ
ここであたりを引いた10人がお願いを聞いてもらえる
神様だけあってお願い事はほぼ確実に叶う
欲望に満ちた願いは聞き入れてもらえないけどね
例えば楽して儲けたいとか、有名になりたいとかね
それに、もし不純な動機で願おうものならアマテラスがすぐに気づくので嘘はつけないようだ
くじ引きが始まり、誰も当たりを引かないまま僕らの番になった
僕らの後ろにはまだまだかなりの人が並んでいる
当たりを引き当てた人から順に願い事を聞いてもらえる仕様だ
僕は棒状のくじを一本引いてみた
先端が赤く塗られていれば当たりだ
「よーし、引き当てるよー」
僕は気合を入れて棒を引いた
結果は
はずれだった
「あー、残念」
少しがっかりしたけど、精霊や妖精たちの健康を願う以外に願い事は特にないので別にいいか
四大精霊も順に引いていたけどみんなはずれ
まぁこれでよかったんだ
不老不死(攻撃されて消滅することはある)であまり敵もいない僕らが願い事を叶えてもらうより、他の種族の人達が叶えてもらう方がいいに決まってる
結局僕らのすぐ後に並んでいた人が引き当ててた
くぅ、もう少し後ろに並んでいれば…
いや、悔しくないよ? ホントダヨ?
さて、屋台巡りを始めるとしよう
これのために僕は朝ごはんを食べずに我慢したのだ
いっぱい食べてやる
まずは串の屋台を見て回った
焼き鳥、牛串、豚に野菜、いろいろな串料理が並んでいる
それら数種類を買い込み、早速近くのベンチに座って食べてみた
食べ歩き? 串なんて危ないもの持ってるのに食べ歩きなんてしちゃだめだよ
まずは焼き鳥
ボンジリという希少部位を使ってあり、柔らかい食感ととろけるような脂の甘みが広がる
あっという間に一本平らげてしまった
次は牛串
これは脂身の少ない赤み肉で、程よい食感が歯を受け止めてくれる
ジワリと染み出る肉汁はうま味をたっぷり含んでいた
野菜串
間に野菜を挟んで口の中をリセット
かぼちゃやピーマン、ニンジンが刺さってて、どれもごろっと大きめに切ってあった
どの野菜も甘い!
ピーマンが甘いって不思議だと思うかもしれないけど、前世で売られていた緑のピーマンはまだ熟れていないから苦いのだ
本来はパプリカのように甘い
そして豚串
分厚めに切ってあり、脂をたっぷりと含んでいるけど全然しつこくなく、むしろあっさりしてさえいた
串料理最高!
豚串を食べ終わってまた屋台の方を見ると気になる串屋台を見つけた
チーズフォンデュ串
これは興味と食欲をそそられる!
串に刺した様々な具材を熱せられたとろけるチーズに浸けて食べるのだ
もちろん二度浸け禁止である
これは食べるべしとばかりに僕らは屋台に向かった
またいくつか串を買い、大釜に入ったチーズに浸す
トロッと糸を引くチーズでよだれが出そうになる
チーズの付いた肉串にかぶりついた
…
「うっまーーー!」
思わず声が出るほどおいしい!
幸せだ
食べるって素晴らしい
精霊だから魔素でも十分だけど、やっぱり何かを食べるのは活力にもなるね
むーしゃーむーしゃー幸せー♪




