3 鬼人族の国14
祭りの開催まであと三日というところで問題が起こった
やぐらを建てるための木が腐っており、全てをとっかえなければならなくなったのだという
集落では結構な騒ぎになっている
やぐらが建たなくては祭りの開催の儀式ができない
それに、神降ろしはやぐらの下で行われるのだ
今現在緊急クエストとして木を取りに行ける冒険者を募っているようだ
これは僕らも行かなければ
何か役に立ちたいしね
「お願いします~、こちらで緊急クエスト受け付けてます~」
この集落にもギルドはある
その受付嬢さんがクエスト参加者を募集していた
なぜこの集落の人達で取りに行かないのか
それはやぐら用の木が生えている場所が問題なのだ
木は神木で、神聖な森に生えているんだけど、そこには森を守るために神獣が何匹か放たれている
森を守るためなので当然神木を切ろうとすると襲ってくるらしいのだ
神獣の名前はカムイオオカミ、大昔に神様に敗れて軍門に下った災害指定の魔物だった
それゆえか気性は荒く、森の侵入者を排除しようと動くらしい
殺されはしないが、木を切るのに厄介なので無力化する必要がある
通常こういう危なそうなクエストはAランクやSランクの冒険者が受けるんだけど、このクエストは絶対に相手が殺しに来ないとわかっている
そのため人海戦術的に木を伐りに行くことになった
「災害指定くらいなら滅せるのですが」
エンシュが物騒なことを言い始めたのでくぎを刺しておく
相手は神獣なんだからそんなことしたら神様を怒らせかねないしね
結構な数の冒険者が集まった
観光目的で来ていた冒険者がほとんどで、この時期だからこれだけの数が集まったんだろう
これならそう労せずにクリアできるかもしれない
目標の木材の数は50本、さぁ、張り切って行こう!
その考えは甘いことと知らされた
ほとんどの冒険者があっさりと倒され、森の入口へと運ばれていった
どうやらカムイオオカミは眷属を大量に従えているみたいで、その数の暴力によって数百組いた冒険者はあっという間に十数組となってしまった
もちろん僕たちは残っている
眷属たちを軽くいなしながらフーレンの風の刃によって木を伐っていった
すでにテュネの袋には20本ほどの木が集まっている
ひとまずこれを持って戻ることにした
ちなみにベテラン冒険者でも持って帰れたのは最高で4本
僕らのを合わせても40本ほどで、10本ほど足りなかった
なので、まだまだ動ける僕らがまた取りに行くことになった
なぜDランクの冒険者があれほど動けるんだ?と不思議がられたけど、そりゃぁ僕らは精霊で、それも最上位だ
いくら人間に化けているからと言ってそう簡単にやられたりはしない
再び森へと入るのは僕らだけ
これならだれにもばれずに精霊に戻って行動できそうだ
その方が動きやすいので助かる
入ってすぐに精霊に戻ると、あれほど襲ってきていたカムイオオカミの眷属が一切襲ってこなくなった
それどころか尻尾を振ってすり寄ってくる
すごくかわいい!
まるで子犬のように甘えてくる彼らをモフモフしていると、森の奥から走ってくる何者かの気配を感じた
「あら、リディエラ様、どうやら神獣が挨拶に来たようですよ」
走って来たのは巨大な白い狼だった
真っ白な毛並みは美しく輝き、大きな口から白い牙が覗いていた
あまりにも大きな狼だったけど、神獣というだけあって、理性と神聖さを感じた
気性が荒いと聞いていたけど、それは森を荒らす者に対してだ
僕らは荒らすのではなく神様と交流するための準備をしている
それを分かってもらうため話しかけてみた
「カムイ、僕らは神様と交流したいだけなんだ。 どうか木を伐ることを許してくれないかい?」
カムイはこちらを優しい目でジッと見つめ
「クゥン」
と一鳴きしてうなずいた
カムイは眷属たちを連れて森の中へと消えていった
「ありがとう」
消えていく背にお礼を言って木を伐り始めた
木を伐り終わり、森の中に一礼した
神様に感謝を伝えるためだ
無事残り10本の木を持って戻ってくると歓迎された
これでようやくやぐらが建てられる
僕らも役に立ててよかった
やぐらは急ピッチで建てられるので祭りには間に合うだろうとのこと
早く始まらないかな
楽しみすぎて夜も眠れない
まぁ毎日ぐっすり寝てるんだけどね
七夕!
銀河!
宇宙!




