魔王ちゃんを狙う者2
会議のあとのことだ
ギンジョウを呼ぶため城の中に伝令を走らせたが、奴の姿はどこにもなかった
私室はもぬけの殻、すでに逃げ出した後のようだった
ただ、不思議なのは、私室から何かを持って出た形跡がなく、普段着やカバンなどと言ったものもすべて残っていた
慌てて逃げだしたのだろうか?
奴の姿は忽然と消えていた
城の出入り口は東西南北に4つあるのだが、そのどれもに衛兵がおり常に見張っている
それなのにそのどこからも奴が出ていったとの報告がない
誰も城から誰かが出てきたのを見ていないのだ
「一体どこに消えたのでしょう。 私にキーラ様を傷つけさせた罪は必ず償わせます」
怒りに打ち震えるリドリリ
そのとき、戦闘班の現リーダーであるシュロンが帰って来た
「魔王様! 報告があります!」
どこか嬉しそうな彼女の報告とやらを聞いてみることにした
「ガンドレに会いました」
「ほぉ、どんな様子だったのだ?」
「あいつ、精霊の配下になってましたよ。 なんでも、精霊たちを守りたいとかで、それにですね、聖竜になってました」
「聖竜だと!? すごいじゃないか!」
吾輩も喜んだ
聖竜といえば神様から認められた神聖な竜だ
いずれ神竜と成れる日も来るかもしれない
「いやぁ、魔王様の元を離れたときはどうなるかと思いましたが、今のあいつ、幸せそうでしたよ。 一回殺しましたけど」
豪快に笑っているが笑い事じゃない
吾輩はとりあえずシュロンを叱った
「すいません…」
シュンとしている彼女はなんだか可愛かった
「ところで魔王様、その包帯は一体?」
「これはだな、どこかの不届き物がリドリリを操って私を殺そうとしたときに出来た傷だ」
「なに!? 私の魔王様を傷つけるだと? リドリリ、お前がついときながら何だその体たらくは! しかもお前の手で魔王様を!」
「攻めるなシュロン、リドリリは操られていただけだ。 それに、犯人のめぼしはついているのだ。 そうだ、シュロン、どこかでギンジョウをみなかったか?」
「ギンジョウ? あぁ、ゴダの爺さんとこの細目か。 それならさっきここに戻る途中の森で見かけましたよ。 なんか生気の抜けたような顔でどこかへフラフラと歩いて行ってました」
シュロンが見たギンジョウはまるでゾンビのようにどこかへ向かっていたらしい
ついさっきのことなのでまだ近くにいるかもしれない
「よし、リドリリ、部隊を組んでギンジョウを捕縛せよ!」
「はい!」
「俺も行くぜ魔王様! 魔王様に手を出したあのにやけた面をぶん殴ってぶっ殺してやる!」
「お前は殺すという考えしかないのか…。 いいか、殺さず捕縛しろと言ったのだ。 他にも吾輩の命を狙う輩に繋がっているかも知らないからな」
放っておいたら本当に殺しかねないシュロンに十分釘を刺してからギンジョウを捕縛に向かわせた
それから約10分後、リドリリとシュロンは帰って来た
ギンジョウの死体を連れて
ギンジョウは何者かに殺されていた
その死体からはリドリリが操られた時と同じ魔力の残りかすがあった
そしてその魔力はギンジョウのものではなく、別の何者かの魔力だとわかった
そう、ギンジョウもまた操られていたのだ
一体だれがギンジョウを操りリドリリを操ったのだ?
この時より、吾輩の命を狙う何者かとの戦いの火ぶたが切って落とされたのだ




