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3 鬼人族の国13

 集落を見て回ってみるけど、建物の形がまばらでコロポックル族などの小さな種族のための小さな家や、ダイダラボッチ族などの大きな種族のための家などがところどころにあってそれだけでもなかなか楽しめた

 しかしだ、この集落の醍醐味はそこではないのだ

 色々な妖怪族が集まっているため文化は入り混じっているけど、ここにはそれぞれの良いところだけを寄せ集めたような祭りがあるのだという

 

 祭り

 僕は前世で子供のころ祭りの縁日に連れて行ってもらったことがある

 たったの一回だけだったけど、ものすごく楽しかった覚えがある

 ここの祭りも食べ物の屋台や、いろいろな遊びができる屋台が出るのだそうだ

 それに、花火や御神輿、そして最後には神降ろしによる神様との対話があるという

 実際に神様がいるこの世界は、神様と対話のできる人の中でも特に同調性の強い人が神降ろしの儀式をして神様の見えない人や対話のできない人達のための窓口となる

 そこで神様にお願いするというわけだ

 お願いは聞き入れられることもあればもちろん聞き入れてもらえない時もある

 そういった場合は私利私欲のためとかの場合で、誰誰の健康を願いたいや、どこどこを浄化してほしいなどと言ったことはかなえてもらえることがあるらしい


 ちなみに今回神降ろしをするのは、なんと、先に会った九尾族の少女クノエだ

 妖怪族の中でも特に神様に近い種族なのでこういった神降ろしの儀式などには引っ張りだこなのだ


「楽しみだね」


「はい、今回降ろされる神様は太陽の女神アマテラス様だそうです。 心優しい神様で、信仰している人も多い神様ですね」


 テュネが得意げに説明してくれた

 アマテラス、前世の世界でも語られていた神様だ

 まさかこっちの世界に実在するとは思わなかったけどね


 祭りは3日後に始まって一週間続くので、のんびりと街で待つことにした

 初日と最終日に神降ろしが行われて、そこで抽選で選ばれた10人の願い事を聞くそうなので僕にもチャンスはあるかもしれない


 この時期の鬼ヶ島は非常に観光客が多いので宿を取れたのは奇跡かも

 偶然一部屋空きが出たからすぐにそこに泊まる手続きをした

 

 3日後の祭りまで英気を養おう

 早速街で何かおいしそうなものがないか探してみることにした

 すると、ある看板が目に入った

 そこには「鍋物」と書かれている

 少し熱いこの季節だけど、鍋もいいかもしれない

 思い立ったが吉日ということでそこに入ってみる

 昼過ぎだったのですでにお客さんは僕ら以外にいないみたいだ


「いらっしゃ~い」


 そう言ったのは河童族の女性

 ここで働いている方で、ここの料理人見習い兼看板娘なんだと自分で言っていた

 店主はお父さんがしているらしい

 河童というけど頭に皿はなく、甲羅を背負っているわけでもない

 額の部分に輪っかのような丸い突起物があるだけだ

 見た目はすごく美人で、胸が大きいお姉さんと言った感じで、少しカールのかかったおかっぱのような髪型がすごく似合っていた

 彼女は僕らを席に案内してくれると、本日のおすすめ鍋を紹介してくれた

 

「本日はですね~、アオアシオドリと季節の野菜鍋がおすすめですよ~」


「アオアシオドリ?」


「はい~、その名の通りですね~、足が真っ青なんです~。 その足からとった出汁は絶品なんですよ~。 ちなみに私が狩ってきました~」


 ニコニコとわらってほんわかとした雰囲気の彼女、説明を聞いた限りおいしそうだったのでそれを注文することにした

 アオアシオドリは空は飛べないけど非常に速く走れる体長1.5メートルほどにもなる大きな鳥で、捕まえるにはそれなりの膂力が必要なんだとフーレンが教えてくれた

 さすが鳥のことはすごく詳しい

 というかそんな鳥を捕まえれるって、あの河童族の女性、なかなかの実力者なのかも

 そんなことを考えていると、出汁の入った鍋と具材が運ばれてきた

 その具材を丁寧に、そして綺麗に鍋に入れて行ってくれた

 見た目と香りでなんだかすごくお腹がすいてきてしまった

 

「この部位はお腹で、少し弾力があって食感を楽しめます~。 こちらはもも肉で、とっても柔らかいんですよ~。 それから~…」


 色々と説明しながら入れて行ってくれるので耳でも楽しめた

 もう、よだれが止まらない


「いい感じに煮立って来ました~。 もう食べごろですよ~」


 少しピンク色が残っているけど、そのくらいが食べごろらしい

 早速ポン酢のようなタレの入った器にとって口に含んだ

 食べたのはもも肉

 噛んだ瞬間肉汁が口の中いっぱいに広がって、まるでとろけるような柔らか食感に舌鼓を打った

 次は薄くスライスされている胸肉で長ネギや細切り大根などをくるんで食べてみる

 こちらは程よい歯ごたえを残しながら野菜の甘みを引き立ててくれる

 どの部位も目からうろこが出そうなくらいおいしくて、五人であっという間に平らげてしまった

 

「それでは、しめに入りましょうか~?」


「え? しめもあるんですか?」


「はい~、うどんとご飯、選べます~。 どちらにします~?」


 悩んだ末ご飯にした

 また今度来た時はうどんにしよう


 ご飯を出汁に投入して、アオアシオドリの卵、青ネギを加えて雑炊を作ってくれた

 味付けはしない

 出汁が十分にうまみを含んでいるからだ


 木で出来たスプーンですくい、一口口に含む

 熱々ハフハフだったけど、噛むごとにうまみが広がっていった

 出汁とご飯はベストマッチだ

 

 大満足で食べ終わって河童のお姉さんにごちそうさまでしたと言って外に出た


「また来てくださいね~」


 玄関先まで出てきて手を振ってくれる

 絶対また来ようと心に誓った


ご飯食べさせるシーン書くのが一番楽しいかも

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