表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
426/464

人間族の国再び1

 トコ様を連れて僕は自分自身の転移で人間族の国へと飛ぶことにした

 今までは黒族の転移装置をずっと使ってたし、テュネたちに頼りっきりだったけど、自分の力で転移がちゃんとできるようにならないと後々困ることになるかもだからね

 でもやっぱり不安はあるよ。何せもし転移先に人間がいて、僕と重なってしまった場合、僕の強すぎる魔力にあてられてしまった人間は最悪死に至る

 それは何としても避けなきゃならない

 転移先に誰もいないことを感知で何度も何度も確認していると、トコ様がそれを遮って口を出した


「どうしたっちか? 転移しないっちか?」

「転移先に誰もいないかを確認しているんです。恥ずかしい話僕は転移を一人でするのが初めてなので」

「何だそんなことだっちか。それならあちきがサポートしてあげるから問題ないっち。ほら手を貸すっち」

「いえ、それでは僕は成長できないと思うんです。だから時間がかかってもいいから自分の力でやってみたいんです」

「ほほおー、いい心意気だっちね! そういうの好きだっちよ! よし、頑張ってみるっち!」

「はい! ありがとうございますトコ様!」


 トコ様に応援されつつ僕は感知を何度も実行して転移先を確認

 それから確実に誰もいないことが分かったから一気に転移した


「あ!! トコ様忘れた!」

「酷いっちよ! 集中しすぎてあちきのこと忘れていったっちね!」


 すぐに同じく転移でトコ様が現れて僕の足をポコポコと叩いている。可愛いなぁ

 僕はそんなトコ様を肩車して周りを見た

 やって来ました久しぶりの人間族の国

 僕の家がある開拓地とは違って街並みはきちんと整備されてて歩きやすいし、馬車もたくさん通っている

 それに街頭。これは魔法の光を詰めたものらしい。夜でも安心だね

 キョロキョロとしているとトコ様が大声をあげた


「リディエラ! あそこ行くっち!」

「え? え?」


 トコ様に言われるがままにその場所に行くと、そこはパン屋さんだった


「いい匂いがするっち! ここでちょっとパンを買おうっち」

「はぁ、じゃあ買ってきますから待っててください」

「あちきも見たいっち!」


 トコ様の手を引いてパン屋に入ると僕も目が輝いた

 何せ美味しそうなパンが所せましと並んでいるし、さらにいい匂いが鼻を突いてパン買いたい欲がむくむくと沸き上がって来た

 とにかくトコ様の好きなパンと僕の好きなパンをいくつか買ってから、外にあるテラスで食べてみることにしたよ

 僕はクロワッサンで、トコ様はシンプルな塩パンだ

 一口齧るとサクッとしてほのかな甘みとバターの濃厚な香りが口に広がる

 トコ様なんて美味しさでもだえて耳をピョコピョコさせて喜んでるよ

 あっという間に食べ終えて大大大満足でお腹をポンポンと叩いた


「ふひ~美味しかったっち~。これはまた来たくなる店だっちね。時々降臨して買うっち」

「そうですね。また来たいです」


 こんな風にまた来るためにも、僕は世界を救わなくちゃならない

 世界の外から来るっていう脅威がどれほどかは知らないけれど、僕はやる気に満ち溢れているのさ!

 パン屋を後にして僕らは迷宮に向かう

 ここの迷宮は国内にあるみたいで誰にでも解放してある

 ただ今は僕の修行のために閉じられてるみたい

 とにかく早速迷宮に行ってみたけど、なんだろう、なぜか人がたくさんいたんだ


「なんだっちお前たちは! ここは今からこの子の修行場になるんだから邪魔だっちよ! ほら散るっち!」


 トコ様の大声に反応した人間たちは僕を見て歓声を上げた

 どうやらみんな僕と言う精霊王女が来るのを一目見たかったみたいだ


「えっと、とりあえず通してもらえると嬉しいかな」


 そういうとまるでモーセの海割りのように道がサーッと開いた

 これじゃまるでパレードに向かうようでなんだか気恥ずかしいな。まあ悪い気はしないんだけど

 人々の壁で出来た道を抜けていよいよ最後の迷宮へ入る

 みんな僕を応援してくれたからすごく元気が出たよ

 必ず試練を終えて、皆を守る力を手に入れて見せるんだ


「リディエラ、頑張るっちよ。あちきは手助けできないけど応援はするっち」

「ありがとうございますトコ様、必ず古代魔法の力を手に入れて見せますよ」

「うむ、頑張るっち!」


 トコ様の激励にも後押しされ、迷宮の扉をくぐった

 まばゆい光に包まれて目をつむったけど、光はすぐに治まって目を開けた

 そこには二人の女性が立っていて、一人はアコ様で、もう一人は…。誰だろう? 石野さんって人はおじさんらしいから違うはず


「来たか、ではまずそこにいる妖神ヨウコに教えてもらえ」

「えー俺からっすかアコさん」

「いいからやれって。お前はまったく、人間だったころからめんどくさがりだったよな」

「いやだってそれは性分だから仕方ないじゃないっすか。石野さ…。アコさんこそそんな可愛らしくなるとは思わなかったっす」

「え? 石野さんって」

「ああ、俺だ。元々人間のおっさんだったんだがな。アマテラス様の神獣としての力を得てから体がそっちに引っ張られてこんな風になっちまった。まぁ腰を痛めてた人間の頃よりかは動きやすいからいいんだが…。思うところはあるな」


 びっくりした、びっくりした、おじさんだと思ってた石野さんがまさかこの美人のお姉さんアコ様だったなんて

 ああでも僕も元々男から精霊王女になったわけだし、不思議なことじゃないのか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ