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魔王ちゃんを狙う者1

 新しい吾輩のお尻にぴったりと合った椅子に座りながら公務をこなしているとリドリリが情報部のカラリアを連れてやって来た


「魔王様、ご報告がございます」


「なんなのだ? 吾輩は今忙しいのだが」


「ハッ! 実はまだ確定情報ではないのですが、魔王様の御命を狙う不届き物がいるとのことなのです」


 左目に黒い眼帯、その眼帯には絵で目が描いてある

 頭には角が二本そびえたち、その二本共に可愛いリボンが巻かれている

 着ているものはフリフリの付いた黒いワンピースで、非常に可愛らしい顔立ちをしているカラリア

 目立つのでおよそ情報収集には向いていないように見えるが、彼女はこれでもプロである

 潜入侵入はお手のものなのだ


「吾輩を狙う者? ハハハ、そんなの吾輩を襲ってきた瞬間に取り押さえてしまえばいいのだ。 なんの問題もなかろうなのだ!」


 心配そうにしているカラリアとリドリリ、そんな顔を見たくないので笑い飛ばしたけど、吾輩だって怖いのだ

 机に隠れて見えないが、今足が震えている

 正直吾輩は魔法の威力はこの国の誰にも負けないと自負している

 しかし、腕っぷしとなると下から数えた方が速いくらいに弱い

 この城にいるメイドたちよりはるかに弱いのだ

 もしいきなり襲われれば… 吾輩のような小娘に抵抗するすべはないだろう

 怖い、怖い…


 カラリアが出て行ったあと、リドリリが吾輩に近づいてきた


「大丈夫ですか? 魔王様、いえ、キーラ」


「リドリリ、どうしよう、吾輩怖い」


 涙目でリドリリに訴えかける

 本当はすごく怖い、でも、部下たちにそんな姿など見せることはできない

 リドリリだけなのだ

 吾輩が唯一心を許し、全てを打ち明けられる親友


 リドリリはそっと吾輩を抱きしめて頭を撫でてくれた

 胸が大きいので少し息苦しかったけど落ち着いた


「大丈夫、キーラのことは私が絶対に守る」


 リドリリ、頼りになる親友だ

 今でこそ吾輩の秘書だが、昔は戦闘班で猛威を振るっていた最強の一角

 彼女がいれば百人力なのだ

 

 安心した吾輩は再び公務へと戻った

 その傍らにはずっとリドリリがついていてくれる

 これほど安心できることはない


 公務を終えると激務だったため昨日から入れていなかったお風呂に入ることにした

 もちろんリドリリと一緒なのだ

 なんだか一緒に入るのは久しぶりなのだ

 吾輩は安心しきっていた

 心を許せる親友と一緒だったから


 そのお風呂で事は起こった

 その信頼していたリドリリが…


 共にお風呂に入ってすぐのことだった

 リドリリが私を刺した

 突如背中に受けた激痛、思わず倒れ込んだ

 肺を傷つけられたらしく息ができない

 

「ハァハァハァ、ウグフッ」


 血が口から込み上げてくる

 

「リ、ド、リリ、なんで?」


 リドリリは答えない

 その顔を見ると、何かがおかしいことに気づいた

 目が怪しく光り、表情がない

 そうだ。 リドリリに限って吾輩を襲うことなどありえない

 彼女は何かに操られている?

 彼女をよく見てみると、非常に巧妙に隠されていたが、リドリリのものではない魔力があった

 

「リドリリ、グフッ」


 血がのどに詰まってうまく喋ることができない

 意識が遠のいてきた

 リドリリが手に持ったナイフをこちらに向けて振り下ろそうとしている

 その目には涙が浮かんでいた

 彼女も抗おうと必死なのが分かったが、催眠は強力みたいで、ナイフが振り下ろされてしまった

 吾輩は力を振り絞ってなんとか自らに結界を張り弾くことができた

 それによりリドリリは吹き飛ばされる

 壁に叩きつけられた彼女は倒れた

 

 朦朧とした意識の中這いずりながらリドリリに近づく

 

「リド、リリ」


 込みあがる血を抑え、意識を失わないよう必死で踏ん張りながら

 彼女に触れて催眠を解除した

 誰のものともわからない魔力は消えた

 すぐにリドリリは意識を取り戻したようだ


「キーラ! そんな、私は… キーラを」


 泣きながら吾輩を抱き上げるリドリリ

 そんな顔をしないでくれ、お前は悪くないのだから


「キーラ、キーラ、しっかりして」


 大丈夫だと言おうとしたが、しゃべろうにもうまく言葉が出てこない

 あ、だめだ、意識がもう保てない

 これが、死ぬ? なんだか痛みも和らいできて、リドリリの腕の中で死ぬのもいいかもしれない

 だんだんとリドリリの泣き叫ぶ声も遠くなってきた

 ごめん、リドリリ、もう、一緒には、いられない、な


 

 目が覚めた

 もう覚めることはないと思っていたけど、目を開けることができた

 周りを見渡すと、吾輩のベッドだった

 その傍らには泣きはらしたであろうリドリリが疲れ果てたように眠っている


「リドリリ?」


 吾輩は彼女をゆすってみた


「うぐっ」


 背中が痛んだ

 ゆっくりと目を覚ますリドリリ


「キーラ! よかった… 目を覚ましてくれた」


 また涙を流し始める

 落ち着かせるように彼女を抱きしめた

 

「キーラ、私はこれから処刑されてきます。 私のしたことを討ち明かしてきます」


「何を言ってるのだ! そんなの、そんなの絶対だめだ!」


 本当に処刑されに行こうとするリドリリを何とか引き留めた

 

 ひとまず信頼できるものだけを集めていきさつを話し、リドリリに風呂に入る前に誰かに会わなかったか聞いてみた

 

「確か、あの時ゴダの部下であるギンジョウという男に会いました。 他愛のない話をしただけですね」


 ゴダは幹部の一人で、今現在もこの会議に出ている

 穏健派で、吾輩を可愛がってくれるおじいちゃんみたいな存在だ

 前の魔王、つまり父上のころからこの城に仕えてくれているのだが、その頃から穏健派で鼻つまみものにされていた

 その部下ギンジョウは目の細い男で、何を考えているのか分からない節がある

 誰もプライベートなことを知らないらしい

 怪しい、非常に怪しいぞ

 そう言えば戦闘スタイルも何をやっているのかも知らないぞ?

 部下たちのことなら大概のことは分かっているつもりだったのだが…

 仕方ない、奴を呼んで直接聞くことにしよう

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