猿人族の国10
「わしは金毛狒々のカテン。エコ様が天使の一人である!」
その見た目にそぐわずなんだか可愛らしい声のカテンくん?ちゃん?
どっちかわからないけどかなり強そうだ
カテンはいきなり構えた
「さぁこい、わしが直々に稽古をつけてやろうぞ」
「ハクラちゃん、ルカナさん、気を引き締めてかからないと勝てそうにないよ」
「そね、私も最大限の力を持って相手するヨ」
「肌がピリピリするほどの力の本流。お姉ちゃんより強いかも」
こちらが構えるとカテンはすぐに拳を握って走って来た
目の前に来たかと思ったら視界から消えて後ろにいきなり出現し、その拳をハクラちゃんの背中に思いっきり打ち付けた
「がふっ」
「ハクラちゃん!」
転がって壁に打ち付けられたけど、すぐに立ち上がってカテンとの間合いを詰めるハクラちゃん
刀で斬りつけるけどそれは空を切って逆にすれ違いざまに拳を撃ち込まれた
「うぅ、やっぱり一筋縄ではいきませんね」
「なかなか頑丈にできてるな。わしの渾身の一撃を喰らってすぐに立てるとは思わなかったぞ」
「これでも鍛えてますからね。鬼神の強さを思い知らせて見せますよ」
「なんと、お前は鬼神だったか。それならばわしも本気でいこう」
「すきありネ!」
話している最中にルカナさんが後ろから如意棒で襲い掛かったけど、振り向きもしないでその攻撃を避けた
「嘘、見てないのに避けぶぐぅ!」
裏拳を顔面に受けてルカナさんの顔がへしゃげて、大量の鼻血を吹き出しながら倒れた
「油断するな。わしはどこからでも気配を察知できる。安直な考えで動くな」
「ぐぅ、鼻が折れたぽいヨ」
曲がった鼻をコキリと戻して鼻を覆うように布を巻くと彼女はすぐに如意棒を構え直した
「痛みに対する耐性はあるか。ならばよし。来い」
「言われなくても行ってやるヨ! 大僧正式乱咲雷鳴!」
体をクルクルと回転させつつ地面にバチンバチンと打ち付けながらカテンに迫る
それと同時にハクラちゃんも同時攻撃した
そしてそれに合わせて僕も魔法を撃ち込む
「精霊魔法、セレニティアフラム!」
「神力解放! 鬼剣舞詩編、六道白影!」
ハクラちゃんの方は見たことない剣技を使ってる
舞いを踊るかのような優雅で美しい動きに見惚れそうになる
彼女は六つの真っ白な分身を出して多方向からカテンを攻撃
僕はその動きに合わせて白い炎を打ち出して彼の動きを阻害した
「ふむ、今のはなかなかにいい動きだな」
気づくと、彼、または彼女は僕らの後ろにいて、僕のお尻を蹴り上げた
「うっぐぅ! いったぁ! お嫁にいけなくなるじゃない!」
「油断するなと言っただろう」
「く、僕たちは幻影を相手に戦ってたってことか」
「ご名答。だがわしの幻影は実態を持つ。さぁ本物がどれかわかるか?」
遊ばれてるよ完全に
カテンは数十体もの分身を出して一斉に襲ってきた
一人一人が強敵な上に動きも速いし、実態があるからどれが本物かわからないし三人じゃ手におえない!
「ホラホラどうした? 一人はもう瀕死だぞ」
「ルカナさん!」
ボコボコにされて血反吐を口から吐き出し、首元を掴まれてぶら下がるルカナさんが見える
このままじゃ殺され・・・
そう思うと体が勝手に動いて
「せ、精霊様・・・?」
体の奥が熱くなって、僕は瞬間的に移動してルカナさんを助け出していた
なんだろう、今ならもっともっと早く動けそう
体中にあざを作って気絶しているルカナさんを回復させて(その回復も一瞬だった。魔力が上がってる?)一瞬でカテンの後ろに回り込むと魔力を限界まで込めた拳を数十発も叩き込んだ
「グギャエ!」
カテンの背中に僕の拳跡がボコボコと出来てはるか上空に吹き飛んだ
それをさらに追撃するようにカテンの上まで飛びあがると地面に蹴り落とした
「ギュッガァ!」
足が思いっきりお腹にめり込んで、カテンは地面にクレーターを作る
「あ、う、このわしが、ここ、までの、ダメージをオグァアアア!!」
まだ元気そうなのでそのまま再度お腹に拳を数発叩き込んだ
「ま、待てもう、アガァ! やめっ」
この時の僕はルカナさんをあんな状態にしたカテンに相当キレてたと思う
失禁するカテンに構わずまた拳を叩き込もうとしてハクラちゃんに止められた
「うう、ぐすん、ごめんなさぁあい、調子に乗りましたぁ」
ボフンとカテンから煙が上がって、金色の髪が美しい少女が現れた
これが本来の彼女の姿で、可愛らしい声がしっくりくる
とりあえず失禁した服を僕が持ってた着替えに着替えさせてから回復してあげた
「うう、わし、ここまで殴られたことないよぉ。エコ様にだってぶたれたことないのに」
「ご、ごめんね。えと、カテンちゃん」
「うううう、お前怖い、嫌い!」
あ、あああ、すっかり嫌われちゃった
泣きじゃくる彼女をなだめて、ようやく目を覚ましたルカナさんを立ち上がらせる
「ごめんなさい、少しやりすぎた。でもエコ様がいいって言うから」
「いやいやそれでいいネ。私に力足りなかただけヨ」
二人は仲良くなったみたいだけど、僕は相変わらず嫌われたまま
理不尽!
そして彼女を倒したことで次への扉が開いた




