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猿人族の国5

 崖の上には次はこちらという立て札があって、その先に洞窟があった

 今度はさっきのショウジョウがいたような洞窟よりもさらに大きくて広い洞窟だ

 そこに進むと内部は水晶で覆いつくされててすごくきれいだった

 ハクラちゃんもルカナさんも見惚れるくらいにね

 ゆっくりと歩きながらさらに奥へ進んでいくと迷路のように入り組んだ地形になってることが分かった


「これは迷いそうですね。どっちに行きましょう、右が、左か、真ん中か」

「私の感覚がこちって言ってるヨ。右進むネ」

「よし、それで行こう」


 右に進んでいくと何かの気配を感じたけど、それはこちらの気配をうかがうかのように息をひそめていた


「うー、また怖いやつだったらどうしましょう」

「おしっこ漏らさないようにしてネ」

「漏らしません!」

「でもさっき漏らしてたネ」

「それは魔力でしょう!」

「それならそゆことにしとくヨ」

「だから!」


 ふたりが漫才をしている間にその気配の主がゆっくりと姿を現した


「二人とも! 出たよ!」

「はいな!」

「はい!」


 二人はすぐに戦闘態勢を取ると武器を構えた

 つまり相手は二人が武器を使わないと倒せないほどの相手なのかな?

 そいつは咆哮をあげて辺りの水晶をやたらめったら破壊する

 その姿は様々な魔物と組み合わされた猿型のキメラ

 顔はつぎはぎだらけの人に似た顔で、腕はゴリラ、尻尾は虎、足はヤギのようで、頭には曲がった角が生えている


「こんな魔物見たことないヨ。顔だけは猿鬼のようネ」

「えんき? 猿の鬼ですか?」

「そうネ。でも鬼とは違うヨ。猿鬼は人を痛めつけるのが大好きなヤバイやつネ。姫のような理性を持ち合わせてないヨ」

「つまり凶暴ってことだね?」


 確かにその通りに、怪物はぶんぶんと腕を振り回しながらハクラちゃんに腕を振り下ろす

 大振りだからハクラちゃんなら簡単に避けれるはずなのに、なぜか動かない


「ハクラちゃん!」

「せ、精霊様、あいつの目を見てたら、体が」


 ぐしゃっと言う音がして、ハクラちゃんが潰される


「姫! ああ酷い、ぐちゃぐちゃネ」

「み、見てないで助けてください」


 ぐちゃりと潰れているけどハクラちゃんは生きている

 そこが精神生命体のすごい所かな

 魂を砕かない限り死なない

 あっという間に魔力を吸収して元に戻ると、白刀散雪を拾った


「ふぅ、痛いじゃないですかもう!」

「げ、それで平気なんておかしネ」

「おかしくないです! 私は鬼神だから体が自由自在なんですよ」

「あ、そだたネ」


 何にせよ目の前の猿鬼はハクラちゃんを殺せなかったことに怒ってさらに暴れ始める

 もう水晶は滅茶苦茶だ


「さっきやられた分を返します。精霊様、ここは私が」

「気を付けてね」


 ハクラちゃんは猛烈に暴れてる猿鬼の攻撃をかわして懐に潜り込む


「一刀、白うねり!」


 下から上へ向かって刀を振り上げると、白煙が上がって猿鬼にまとわりつく

 猿鬼が胸に受けた傷口にその白煙が潜り込んで傷を広げていった

 でも猿鬼は傷口を手で塞いでから無理矢理に傷を癒してしまった

 驚くべき再生力


「これではだめですか。なら、一刀、白炎(はくえん)!」


 再び懐に潜り込むと今度は胴を白く燃える刀で斬りつけた

 途端に傷口は白く燃え上がって猿鬼は悲鳴を上げる

 痛みからかさらに激しく暴れて、洞窟が崩れ始めた


「このままじゃ洞窟が塞がるネ。奥に急ぐヨ」

「うん!」


 ようやく絶命したのか、猿鬼は倒れ込む

 死んだかどうかは確認する余裕はないけど、とにかく早く奥へ進まないとね

 走って走って、崩れていく洞窟からやっとの思いで抜け出した


「ふぅ、いくら精神生命体とはいえ、こんな洞窟に閉じ込められたら抜け出すのは酷だね」

「ハァハァ、精霊様も姫も速すぎるヨ。精霊様、ちょとお膝貸してほしネ」

「え、なんで?」

「休ませて欲しヨ」

「いいけど…」


 僕はルカナさんの頭を膝に、膝枕だね。膝枕をして彼女を休ませた

 顔がなぜか股間の方を向いてるのがちょっと怖い

 でもそんな休憩もつかの間のことだった

 崩れた洞窟、塞がった出口の岩が砕かれてなんと猿鬼が飛び出した

 ものすごい咆哮がして猿鬼の肉体が変化する

 傷口はあっさり塞がって再び僕らに狙いを定めた


「これは、全員でかからないと無理かも」

「ですね」

「精霊様、援護するヨ」


 僕は魔力を高め、ハクラちゃんは神力を刀に込める

 ルカナさんは気力が拳に宿り、赤く光っている

 最初に駆けだしたのはルカナさんで、猿鬼の腹部にその拳を叩きつけた

 でも猿鬼はまったく効いていないみたいで、ルカナさんをつまみ上げると地面にたたきつけた


「くぷっ」


 ぐしゃりと彼女の体はあらぬ方向に曲がってへしゃげる


「ルカナさん…。そんな」

「精霊様! 攻撃が!」

「この!」


 僕は闇の精霊魔法で猿鬼を拘束する

 でもその拘束は簡単に壊されてハクラちゃんに手が伸びた


「甘いです! 鬼仙剣術極み、二刀、神露祁(かむろぎ)!」


 ハクラちゃんが変質させ、氷の神力を込めた二刀の散雪で猿鬼の首を撥ねた

 それによって今度こそ本当に猿鬼は倒れ、絶命したみたいだ

 僕は急いでルカナさんに駆け寄る


「ルカナ、さん?」


 目を開かない

 呼吸も、していない

 この迷宮も獣人族の国にあった迷宮と同じ

 死した人は、排出されることなくその場で死んでしまうんだ

 あまりにも突然のことで頭が追い付かない

 死した者に回復魔法を使っても意味がない…

 ルカナさんは、本当に死んだんだ

 悲しんで、ようやく涙が出始めたときにそれは起こった

 グチャグチャに曲がっていたルカナさんの体がゴキゴキと元に戻っていって、はみ出ていた骨や内臓も再生していく

 そして最後に完全に折れていた首の骨がゴチリと元に戻ってパチリとルカナさんの目が開いた


「うぴぃ、あばばばば、危なかたヨ。も少しで死ぬとこだたネ」

「え、え、なんで…。確かに、死んでたんじゃ」

「私の体は特別製ネ。ちょとやそとじゃ死なないヨ」


 ルカナさんは立ち上がると首をコキコキと鳴らした


「な、なんで大丈夫なの?」

「こう見えて私特別再生力強いヨ。そういう特殊な能力持て生まれたネ。一日に二回、死ぬよな傷受けても死なないヨ」


 よかった、本当によかった

 ルカナさんも無事だったことだし、先に進もう

 今度はもっと慎重に行かないとだね

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