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猿人族の国2

 美味しいものも食べられたし、僕らは猿王ワスカさんに会いに行くことになった

 ワスカさんにはすでに話が通ってるみたいで、歓迎してくれるらしい

 この王は拳王で賢王なんだとか

 格闘技のセンスもさることながら、ここまで国を発展させたとても頭のいい王

 精霊にも気に入れれていて、ここにはよく癒しの精霊カイユや木漏れ日の精霊ヨウカなども来ているらしい

 あの精霊達のことだ、多分美味しいものが多いから来てるんだと思う


「精霊様、あそこの館が王のいる場所だそうです」

「え、あれなの? こっちのおっきい館じゃなくて?」

「あ、そっちは資料館みたいですね」

「そうなんだ…。質素にしてるのかな?」

「そのようですね、ワスカさんは質素倹約を旨として国を導いているようです」

「なるほど、自分じゃなくて国民が豊かになるようにってことか」


 館は小さくて、人が10人も入ればいっぱいになりそうだ

 館って言うより小屋だね

 その扉の前には中華ドレスを着たキンシコウ型美猿人と、筋肉粒々のゴリラ猿人が立っていた


「そこで止まれ、貴様ら何者だ」

「あの、僕らは」

「まさかワスカ様のお命を取りに来た者ではあるまいな!? それは許せぬ! ここでその命、散らしてもらおう!」

「ちょ、ちょっと待って!」

「こらラカン! その方たちはお客様ネ! ほら、精霊様と鬼神姫様ヨ!」

「む、ぐぐ、わかった、分かったから放してくれルカナ」

「またく、そのすぐ頭に血が上る性格なんとかしろヨ。お前が暴れる度こちはいい迷惑ネ」


 一連のまるでコントのような突っ込み撃

 このルカナさんって女性、相当強いと見た

 中華ドレスにこの話し方、典型的な中国美女っぽくてなんだか好きだ

 ルカナさんは僕らに一礼すると中へ案内してくれた

 頭に大きなコブをつくったラカンさんも一緒にね

 ラカンさん、なんだか落ち込んでる

 きっとこういう失敗は一度や二度じゃないんだと思う


「どぞ精霊様、待てたヨ。こちら座てしょしょ待てネ」

「ありがとうルカナさん」

「フフ、精霊様、可愛ネ。あとでお()さんと良ことしヨ」

「え?」

「じょだんネ。すぐワスカ様呼で来るネ」


 ルカナさんはウキウキと奥の部屋へ行ってしまった


「その、精霊様、申し訳ない、です。俺、頭に血が上ると何も見えなくなって」

「いいよいいよ、ラカンさんはワスカさんが心配だっただけなんでしょ? それに怪しい人を見たら警戒するのが普通だもん。特にこっちの白いお姉さんなんて怪しさ満点だもんね」

「そうそう、私は怪しさの塊…。何を言いますか精霊様! 私のような可憐な少女を捕まえて!」

「ふふ、ごめんごめん」


 僕らのそんな様子を見てラカンさんも落ち着き、笑ってくれた

 そうこうしてるうちにワスカさんを連れてルカナさんが戻って来た


「ワスカ様連れて来たヨ」

「おお、精霊様に、鬼ヶ島の姫ですな。わしがワスカ、しがないジジイですじゃ。して精霊の王女様、エコ様からの伝言がありますじゃ」


 ワスカさんは全身の毛並みが真っ白の綺麗でジェントルマンな雰囲気のなおじいさんで、落ち着き払った大人な印象を受ける

 彼は顎にあるふさふさとして仙人のようなひげをさすりながら話をつづけた


「エコ様曰く、ミーの改良した狒々王の迷宮最奥にて待つである! とのことですじゃ」

「狒々王の迷宮ですか?」

「はい、狒々王の迷宮はこの国から少し離れた場所にありましてな、難易度の高い迷宮として有名なのですじゃ。わしも依然挑んだことがあるのですが、苦労しましたわい。なにせ最大限の勇気が試される迷宮ですからな」

「それは一体…」

「おっと、これ以上は言えませんぞ。入ってからのお楽しみというやつですわい」

「分かりました。早速」

「まぁ待ちなされ、今日はもう直に日も暮れますじゃ。ほれ、そこのルカナの家にでも泊まるとよいですぞ」

「え、でも、悪いですよ。宿を探しますから」

「精霊様、私ずと待てたヨ。精霊様来たら絶対うち泊まてもらう決めてたネ。ぜひ泊まて欲しヨ!」


 押し切られるようにルスカさんの家に泊まることが決まった

 彼女は僕達精霊に昔命を助けられたことがあるらしくて、ものすごく尊敬してくれていたんだ

 凄く、凄ーく嬉しそうなルスカさんに連れられて、僕らは彼女の家に着いた

 一般的な家屋で、手入れもよく行き届いている

 その家じゅうに、どこで手にいれたのか僕のぬいぐるみや、テュネたち四大精霊のフィギュアやグッズ、シノノやセツといったあまり知られていない精霊グッズまであった


「あ、あの、これって…」

「おお、それに目をつけるとは流石お目が高いネ。それ全部私作たヨ!」

「え、これ全部!? すご!」


 家にある精霊グッズはその全てがルスカさんの手作りで、よくできたリアルなフィギュアも、何度も失敗しながら作り上げたらしい

 そういえば、僕らの写真が飾ってあったんだけど、どうやら黒族がその技術を世界中に発信したらしい

 目まぐるしいほどの発展は破滅を産むけど、黒族は機を見て少しずつ技術提供をしていくみたいだ

 

 その日、僕らはルスカさんに大歓迎されながら眠りについた

 そして夜中のこと、僕の寝込みを何者かが襲いに来た

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