3 鬼人族の国9
母さんはもともと神だった
そのためなのか、僕にも神力が宿っているらしい
それはクオン様が最後に言い残した言葉だ
まだまだその力は弱くて使い物にはならないけど、神殿をめぐって神様たちに会えば神様と同等の力を得ることができるらしい
すごいことを聞いた気がした
けど、平和なこの世界にそこまでの力は必要ないだろうと思う
一応心にとどめておくことにした
神殿から帰る途中、鬼人たちからいいことを聞いた
もうすぐ鬼ヶ島は海水浴シーズンなんだそうだ
周りを海に囲まれ、どこも非常に綺麗で澄んでいるので海水浴にはもってこいだろう
それならばと僕らもビババカンスだ
このシーズン、海水浴目当てにいろいろな種族が観光に集うらしい
前世でいうところのハワイみたいな感じなのかな?
街には戻らずにそのまま海水浴のできる海辺の町まで向かうことにした
最初に上陸したところとは反対方向にその街はあるらしい
毎年この時期になると宿は埋まってしまうので早めに行こう
予約なんかは電話や通信機器のないこの世界ではできないので早めに行くのが宿を取れる手段ともいえる
神殿からそんなに離れていなかったので街には2時間ほどで着いた
「海です! 海ですよリディエラ様~!」
フーレンははしゃいでいる
行きにも見ただろうに、すごく嬉しそうだ
すぐに宿を探すとまだ早いこともあってすぐに取れた
しかも、海にほど近い宿で、露天風呂もあるうえに様々なお風呂がついているのだ
健康ランド並みと言えるだろう
これは夜が楽しみである
転生して女の子になってからは一応ちゃんとおしゃれや美容に気を遣うようになったのだ
まぁテュネの受け売りではあるけどもね
僕たち5人は宿で少しくつろぐと海を見に行くことにした
まだ海開きされていないので泳ぐことはできないけど砂浜を歩くことはできる
「綺麗ですね、よく管理が行き届いているようです」
満足そうなテュネ、水の精霊だけあって水がきれいなのは嬉しいのだろう
「砂浜が鳴き砂です。 ここも非常によく手入れがされています」
鳴き砂とは極限まできれいになった砂浜に見られる現象で、砂を踏むたびにキュッキュと音がするのだ
まさに鳴いているようで可愛い
現世だとオーストラリアの海岸なんかがそうだ
鬼人たちが自然を大切にしているのがよくわかる
砂浜で駆けまわるフーレンとエンシュを見ながらテュネ、アスラムと共に砂浜に寝転がった
少し暖められた砂が気持ちいい、このまま寝てしまいそうだ
数時間後、テュネに起こされた
どうやら本当に寝てしまっていたようだ
なんだか四大精霊の顔がホクホクして嬉しそうだ
この時リディエラは気づいていなかった
四大精霊にずっと寝顔を見られていたことを
ちなみに彼女らはいつもリディエラの寝顔を拝んでいるのは言うまでもない
リディエラ様、可愛すぎます
テュネはそう心に思っていた
マイリトルレディのためなら死んでもいいとさえ考えていた
十分に砂浜を堪能した後は宿に帰り、夕食だ
今日のメニューはサザエに似た貝のつぼ焼き、ウナギのような魚のかば焼き(たれが絶品)を乗せたうな重? ウナギじゃなくてメガリララという名前らしいからメガ重とでも名付けよう
それに、焼きウニやアワビの酒蒸しなんかもあった
ウニは濃厚で口の中でとろけるし、そのウニをつぼ焼きや酒蒸しの上にのせて食べるとさらに味に深みが増してうまい
メガ重の方は実がホクホクとしていて、骨なんかもほろほろと口の中で解けるように柔らかいので気にならなかった
何よりこのメガ重、たれがすごくおいしいのだ
何十年も継ぎ足しで守られてきた伝統的な秘伝のたれは、甘いのだけどくどくなくて、魚の身とご飯にベストマッチしていた
「ふぅ~、満足だよ」
僕はお腹いっぱいになり、余韻を楽しみながらくつろいだ
急遽だったけど来てよかった
それから海開きまでの数日間は、宿でのんびりと過ごした
毎回変わる新鮮な海の幸の料理に舌鼓をうち、時折砂浜でじゃれあい、他の観光客たちと他愛ない話で盛り上がったりした
そしていよいよ海開き
街は海水浴客であふれかえっていた
浜辺にもたくさんの人がいたけどありあまるくらいに浜は広いので問題なかった
「さぁ、泳ごうみんな!」
水着に着替えた僕らは海へと走った
次回、水着回
それぞれの水着をご紹介




