9桃源郷19
第十六階層
ここまで来るといよいよ大詰めって感じじゃない?
どうやら十五階層からは一人一人と戦闘する形式らしくて、今度はこれまた猫耳の生えた青毛の女性と赤毛の女性が立っていた
その二人はこちらにうやうやしくお辞儀をするとニコリと微笑んで話し始めた
「ようこそリディエラさん」
「私達はこの階層を守護するために使わされて天使、アマメと」
「カナメです」
「私達、ニャコ様に仕える天使ですの。以後お見知りおきくださいませ」
「はい、よろしくお願いします」
「フフ、いいお返事ですね」
「私達の試練はこの枠内から私達二人を、どんな手を使ってもいいので動かすことです」
「どんな手でも?」
「はい、何をなさっても構いませんが、その、変なことは、やらないで下さいね?」
「しませんよ!」
「ふふ、では、始めましょうか」
二人は髪と目の色が違うだけで、口調からちょっとしたしぐさまでそっくりだ
同じタイミングで尻尾をあげるし、寸分の違いもなく手を振る
「ここから私達を動かすのは」
「難しいですよ」
「頑張ります! 行こうマコさん!」
「はい、リディエラ様」
まずは魔法で様子を見てみることにした
「エーラレイ!」
光を固めて撃ちだす魔法
さっきの階層でセブンスエレメントを手にいれてから魔法までもが少し変わったみたいで、光魔法に至っては形から動きまで自由自在になっていた
光を固める魔法だから、空中に制止させて足場としても使えそう
硬くなった光が二人に当たった瞬間、弾けて消えた
「あ、あれ? 失敗?」
「ふふ、失敗ではありませんよ」
「フフ、私達が打ち消したのですよ」
「打ち消すって、そんなの魔法効かないってことじゃない」
「さぁ、どうでしょうね」
「さぁ、どうなのでしょうね」
二人は相変わらずニコニコ笑ってて、僕がいろいろと撃ちだす魔法を全部打ち消してる
さらにマコさんが格闘術で攻撃してるんだけど、それもいとも簡単に手で受けていた
こちらの攻撃が全く届かないからその場から動かすことができない
「いい動きですが」
「まだまだですね」
「そ、それなら!」
さっき習ったばかりの力だけど、セブンスエレメントを発動させて体にまとった
それを魔法に組み込むと魔法合成でさらに強力な魔法に組み替える
「エレメンタルランペイジ!」
七つの属性魔法球が空中で高速回転して、二人に襲い掛かる
どうやらこれは打ち消せないみたいで、手で叩き落し始めた
「あららら、これはなかなか」
「フフ、やはりこの子はニャコ様の言う通り逸材ですね」
「ええ、先ほど手にいれたばかりの力をすでに使いこなし、応用までさせてるのですから」
「素晴らしいですね」
「素晴らしいですよ」
二人は嬉しそうに球を打ち落としつつ躱しつつ僕をほめてくれる
魔力球は撃ち落とされてもまた浮かび上がって二人を襲い続けた
その隙をついて、マコさんが二人に足払い
「あらら、なんてことなんでしょう」
「まあ、なんてことなのから」
動い、た?
いや、ジャンプで躱しはしたけど、二人分の枠からは動いていない
す、すごい。ジャンプしつつも球を払いのけてる
マコさんは何度も蹴りで攻撃をするけど、球といっしょで簡単に受け流されていた
「まだまだ!」
「マコさん、一旦引いて!」
「わ、分かりました!」
マコさんが僕の隣に立つのを待ってから、魔法球をさらに増やした
「まあ! 増殖まで」
「集中力も目を見張るものがありますね」
球を増やしてもなお二人は余裕で避けたり受け流したり撃ち落としたりしてる
加えてマコさんの攻撃もあるって言うのに…。もしこの二人が攻撃に転じたら、僕らはあっという間にのされちゃうんじゃないかな?
戦いじゃなくて少し安心。でもこのままじゃ埒が明かない
それなら、今までやったことないけど、4つの属性を魔法合成で合成してみた
前にも言ったけど、魔法を合成するのは体内の魔力を異常に消費する
確かに成長と共に僕の魔力も高まって行ってるけど、今はまだ二つの属性を合成するので精いっぱい
でも今ならいける気がしたんだ
多分セブンスエレメントを手にいれたことで魔力が上手くかみ合ったんだと思う
体内の消費量を抑えて、周りから補助的に魔力を吸収して、見事に四つの属性を合成することができた
「炎、風、土、水の四大元素を合成しました! フォスエルメベル!」
四つを合成することでキューンと言う変な音がし始めて、高エネルギーの塊になった
それを二人に思いっきりぶつける
「あらら、これはこれは」
「あらら、防げないわね」
二人は少し驚いたような顔をしてその場から飛びのいた
直後に僕の作った塊は二人がいた場所に落ちて、その場でぐるぐると回転して炸裂
「ふぅ、危なかったです」
「危なかったわねえ」
「思わず逃げちゃったわ」
「当たったら痛かったわ」
「合格よね?」
「合格だわ」
二人は嬉しそうに僕の元へ駆け寄って来た
そして僕の手を取るとブンブン振る
「頑張ったわね!」
「頑張ったわね!」
どうやら二人に合格をもらえたみたい
「ふふ、また会いましょうね」
「フフ、また会いましょうね」
二人はまた会いましょうって言うけど、別世界の人なんだよね
会う機会ってあるのかな?




