表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
341/464

9桃源郷8

 五階層まできたけど、これでまだ四分の一か。先は長そうだね

 階段を降りきるとかなり大きな門扉があって固く閉ざされている

 おかしな、あの五匹の猫ちゃんたちは鍵なんて持ってなかったから、ここは鍵がかかってないと思うんだけどなぁ


「精霊様、あそこの上に何やら張り紙がありますよ」

「ホントだ! えっとなになに“天を仰ぐ猫は青い魚の夢を見る。目を見開けばそこは真なる海、枯れた海を見つけよ。聖なる水を捧げよ。さらば扉は開かれん”だって、どういう意味かな?」


 よく分からないメモを見ながら考えているとマコさんが何かを見つけたようだ


「精霊様精霊様! 扉の横に箱がありますよ!」


 マコさんが持ってきた箱には穴が一つ空いている

 僕は恐る恐るその穴を覗いてみた

 中は少し暗いけど、何か光の粒が見えて月明かりが差し始めた

 そう、箱の中には小さな世界が広がっていて、広い広い海岸が見えたんだ

 さらに言うとその海岸の中央に小さな猫ちゃんが座り込んで星を見ている

 ただ星の輝きは段々と弱まっていて、猫ちゃんはそれを悲しそうに見ていた

 やがて星は一つ、また一つと海に落ち始めてその海から水が引いていって、やがて枯れてしまった

 どうやらこの海を海水で満たせばいいみたいだね


「海水ですか…。申し訳ありません精霊様、私はそのような術を身につけてはおりません。お役に立てず申し訳ないです」

「うーん、実は僕も海水は出せないんだよね。水ならテュネから水魔法を習ってるから出せるんだけど…。もしかして」


 僕は水の精霊魔法を発動してみて、さらに魔法合成でアスラムが教えてくれた土の精霊魔法である塩を作り出す魔法を混ぜてみる

 精霊魔法の合成は結構コントロールが難しいけど、今回は攻撃系の魔法じゃないから意外とすんなり合成できた

 生成系なら問題なく合成できることが分かったよ

 で、その魔法合成で生み出したのは塩水だ

 海水と同じ塩分濃度だけど、不純物は一切ない

 聖なる水を捧げよって言うのは多分だけど不純物なしって意味かな?

 出来た塩水を穴からゆっくり注ぎ込んで小さな世界の海を水で満たしてみる

 すると箱が光り始めて、パカンと開いた


「にゅああああ! うまいこと出来たねえらいえらい!」


 中からさっき空を見上げていた小さな猫ちゃん(今は普通サイズ)が飛び出してきて僕の顔に張り付いた

 モフモフ感と猫ちゃんの良い匂いがする

 たまらないにゃー


「精霊魔法合成のコツをつかんでもらうため急遽設けた鍵にゃ。おばちゃんから頼まれたのにゃ」

「おばちゃん?」

「うにゅ! ニャコおばちゃんにゃ。 あちしはニャコおばちゃんの姪っ子、ニャルミだにゃ」

「ニャルミちゃんって言うんだ、よろしくね」

「うにゅ! あちしがこの五階層の案内猫にゃから、しっかりとあちしについて来るにゃよ」

「うん、ありがとう」


 ニャルミちゃんはこの迷路の案内猫ちゃんらしくて、この迷宮をプロデュースしたニャコ様の姪っ子だ

 神様の姪っ子だからとんでもない力を持ってるらしいけど、今まで戦ったことがないからその実力は未知数なんだって本人が言ってた


「つまりにゃ、あちしは将来有望なんだにゃ。今のうちに媚び売っとくといいにゃ」

「あ、うん、それよりもこの扉どうやって開けるの?」

「簡単にゃ。神力を込めるだけでいいんだにゃ」

「神力を? やってみるね」


 僕は手に神力を込めてその扉を押してみた

 するとあっさりと扉は抵抗もなく開いて迷路の入り口が見える


「すっごく簡単に開いたよ」

「うにゅ、じゃあ行くにゃ。あちしにしっかりついて来るにゃよ!」


 ニャルミちゃんはそう言うとそのまま走って行って見えなくなってしまった」


「ま、待ってよニャルミちゃん!」


 慌てて追いかけて行ったけど、曲がり角の奥を見たらすでにそこに姿はなかった


「まずい、見失っちゃった」

「どどどどどうしましょう!」


 二人して慌てていると上からニャルミちゃんが落ちて来た


「んにゃ! 何でちゃんと付いてこないのにゃ! おかげで君らのとこ戻されたにゃよ!」

「ご、ごめんね」

「んにゅ、分かればいいにゃ、じゃあ行くにゃ」


 また走り出そうとしたので思わず尻尾をムンズとつかんでしまった


「んにゃああああ! にゃにしてるにゃエッチ!」

「ごごごごめん! そういうつもりじゃなくて、ゆっくり進んで欲しかったんだよ」

「にゃんだ、それならそうと早く言えばいいのに。じゃあ君らに合わせてやるにゃ」


 ニャルミちゃんはそういうと猫から人型に変化した


「にゅっふ~ん、これが本来のあちしの姿よ。どう? 可愛くてびっくりしたでしょ?」


 確かに可愛かった

 ニャルミちゃんはとっても女の子らしくて、釣り目に金色縦ロール髪の美少女だった

 服装はまるでおてんばな和風お姫様って感じかな

 着物にフリルがたくさんついてて、ゴスロリ着物だね


「これで歩幅も合うはずよ。さあ行きましょうか」

「うん!」


 さっき僕が掴んでしまったフッサフサの可愛い尻尾を振りながらニャルミちゃんは先頭を歩いて案内してくれる

 彼女がいなきゃここの攻略はかなり時間がかかっただろうね

 魔物や妖魔もちょくちょく出てくるから厄介だよ。それにトラップもあるんだ

 まあトラップもニャルミちゃんが解除してくれててガンガン進んでいける

 たった30分ほどで五階層を攻略してしまった

 そんな短い間だったけど、ニャルミちゃんはすごく気さくな人柄で、すっかり仲良くなった


「んにゅあ! ここまでだね、あちしはおばちゃんのとこに帰るね」

「そっか、残念だよ」

「何言ってるのよ。もうお友達なんだからまた会いに行くわよ」

「そっか! じゃあまた会おうね! 今度はどこかで遊ぼうよ」

「ええ、楽しみにしてるわね」


 ニャルミちゃんと握手して僕らは六階層への階段を降りていく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ