表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
328/464

9桃源郷1

 桃源郷へ行くことは決まったけど、ゴトラさんには一応挨拶して向かうことにした

 今後もエンシュや炎の精霊たちがこの国に加護を与えることも伝えておかないとね


「そうですか! 精霊様のお導きに感謝いたします」


 ゴトラさんもその妃のカルセさんも、双子王子もティリアちゃんも僕らに深々と頭を下げている

 ありがとうくらいでいいのに…

 でも立場的にやらなきゃいけないのかな


「また遊びに来てもいい?」


「もちろんです! 是非とも! 今度は冬に遊びにいらしてください。この辺り一帯は冬になるとセツ様の加護で一面雪景色になり、アイスフラワーが咲き乱れるのです」


 ほほぉ、ここってセツも来るんだ

 セツと言えば雪の精霊で、いつも刀の精霊ムラサメと一緒にいる女性だ

 本人はあまりしゃべらない寡黙な精霊だけど、最近は竜神になったガンちゃんことガンドレ君と一緒にいることが多いらしい

 この前も楽しそうに通信魔法でガンちゃんとののろけ話をしてきたしね

 まあ今度は冬に来てみようっと

 冬には冬用の温泉もあるみたいだから楽しみにしておくとしよう


「じゃぁ桃源郷に行こっか」


 桃源郷まではこの国から転移装置を使って行けるんだ

 黒族の装置はかなり普及してるからね

 一応犯罪者なんかが使えないよう常に監視がついてるんだけど、この装置の優れたところは、悪事目的で使おうとすると弾かれて使えなくなっちゃうところなんだ

 黒族の謎技術です

 ひとまず転移装置で行き先を指定。魔力を流し込んで転移を開始した

 視界が変わってあっという間に桃源郷、とはいかず、桃源郷の入り口にある門に飛ばされた

 仙人たちはなるべく機械に頼りたくないみたいで、転移装置は国の外に作られたんだ

 それと入り口付近には幻術がかかってるらしいんだけど、どうやら僕達精霊には効いてないみたいだ。入り口が普通に見えてるもん


「ようこそおいでくださいました!」


 突然後ろから声がして僕は飛び上がるくらい驚いた

 慌てて振り向くと、一見したらただの人間に見えるけど、仙力を感じる女性が立っていた


「わらわ、私はこの里の長をしております、ジョカと申すしがない仙人でございます」


 その美しい女性、ジョカさんは仙人の長にして神仙に近い非常に力ある人だった

 仙人というのは人が進化したもので、さらにその先に神仙(真人とも言う)という種族がいるみたいだけど、過去神仙になれたのはたった二人だというから驚きだ

 そしてこのジョカさんも神仙になれそうだったんだけど、前の長だった神仙がどこかへ消え、行方不明となってしまい、仕方なく彼女がこの国の長へと就任した

 

「国を案内したいのですが、私は少し鍛えている者がおります故、別の案内を用意いたします。それまでこちらでおくつろぎください」


 ジョカさんが案内してくれた部屋は質素だけど手入れの行き届いたところで、綺麗な花がいくつか飾られているのが部屋とよく調和がとれている

 花も摘まれたものじゃなくて、土に植わっているものばかりだ

 この国の人の自然に対する慈しみがそこかしこで見受けられて、僕らも満足

 部屋で出された緑茶をすすり、お菓子を食べながら(エンシュ食べ過ぎ)待っていると扉が叩かれて一人の女性が入って来た

 その人の爪は長くのびていて、まるで鳥の爪みたいだ


「失礼いたします精霊様、仙女のマコと申します」


 しずしずとした印象でおとなしく、ふんわりとした微笑みで周りを癒してくれそうな女性だ

 でも爪が怖い

 実はこのマコさん、ジョカさんと同じくらいすごい人で、神仙へ至る兆しを見せてる人だってあとで知ったよ

 そのマコさんは僕達に軽く挨拶を済ませるとゆっくりとお辞儀をした


「桃源郷に来られたばかりで、お腹はすいていないでしょうか? よろしければお食事などいかがでしょう? 私が腕によりをかけて作らせていただきます」


 精霊だからお腹はすかないけど、お食事は大好物です! ん? 大好物ですはおかしいかな?


「では少々おまちください。すぐに用意してまいります」


 ふと思ったけど、マコさんあの爪でちゃんと料理できるんだろうか?

 ま、まあ本人が自信満々だから多分?大丈夫!

 そう信じよう

 で、一時間ほど四大精霊たちと言葉遊び(しりとりやなぞなぞなど)で遊んでいたら再び扉が叩かれてマコさんが入って来た

 その手にはよくホテルなんかで使われるような食事を運ぶためのカートが押されていて、たくさんの料理が蓋をつけられて状態で乗っていた

 そこから漏れ出る良い匂いに無い涎がタレそうになる


「お待たせいたしました精霊様、仙料理フルコースです」


 マコさんがふたを開けて料理の説明をし始めた


「まずこちらは仙草とゴマ、ニンジンの炒め物です」


 ほんのり香るゴマの風味が素晴らしい食欲をそそる一品だ


「こちらはトウゲンタケの揚げ物、こちらは天仙レンコンと甘からしのはさみ揚げ、それと野菜水餃子スープに野菜練り麺を使った拉麺です。食後には桃饅頭とゴマ団子をご用意しています」


 これは! 野菜尽くしの豪華な料理!

 様々な香草を使ってるからか香り高い素晴らしい風味

 拉麺もしっかりとしたこしがあってのどごしも素晴らしい。スープがすっごく美味しくて、醤油ベースにいろんな野菜から出汁をとってるみたい

 とにかく野菜が美味しいのなんのって、エルフの国で食べた野菜とはまた違った美味しさだよ

 大満足で食べ進め、食後のデザートをぱくつくとこれもまたすんばらしいお味!

 桃の風味が強い桃饅頭はホクホクとしたこしあんで、ゴマ風味がする

 ゴマ団子はサクッと揚がっててこれもゴマの風味が引き立てられてる


「すっごくおいしかったよ! ありがとうマコさん!」


 マコさんにお礼を言うと彼女は頬を赤く染めて照れていた

 可愛い人だ

 さて、食べ終わったし、この国を見て回ろう。食後の運動がてらね

孫の手ってありますよね?

あれって一説にはこのマコという仙人の爪みたいだから

マコの手がなまって孫の手になったそうですよ

ちなみに実際はマコも神仙の一人です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ