三獣鬼と三妖鬼3
はぁ、なんでこんなに資料が溜まっているのかしら
こっちの束もまだ目を通してないし、隣の部屋にもまだまだ積みあがってるし
コクウさん、これをいつもこなしてたの?
いくらなんでも背負いすぎよ。 コクウさんにだって優秀な部下がいるんだから任せてもいいのに
例えば茶蛇鬼のチャダノとか、灰兎鬼のカイラとか
チャダノは私より頭がいいし真面目だし眼鏡かけてるし
ただあの子は眼鏡を取ると性格が激しくなるのよね
オラつくというか、誰にでもけんかを売って回るような武闘派に
カイラはコクウさんのことが好きだからコクウさんの言うことなら何でも聞くし
でも橙馬鬼のマリハはだめね、あの子不真面目すぎるもの
いつまでたってもハクラ様やクロハ様にため口だし、どこで覚えたのか変な言葉ばかり言ってるし
何よチョリッスとかマジパネェとか、どこの言葉よ!
彼女たちは私達三獣鬼や三妖鬼と違って誰かのお付きじゃなくて、人手が足りないときなんかに駆り出される自由な連中。 それが彼女たち三幽鬼
もともとが一癖も二癖もある鬼たちだからちょっと浮いてるけど、私達の世代はモモネさん以外がみんな幼馴染だからそれなりには仲がいい
モモネさんだけは百年ほど年上なのよね。 それを言うとものすごく怖いから言わないけど
「ふう、やっとこの資料の整理も終わったわ」
今目を通してハンコを押していた資料をまとめてトントンとそろえていると扉をたたく音が聞こえた
「コクウさんですか? 空いてますよ」
「私」
入って来たのはチャダノだった
「あらチャダノ、どうしたんです?」
「手伝いに来たの。 コクウさんに言われてね。 私は隣の部屋の資料をまとめてあとはハンコを押すだけにしておくから、キキはこの部屋の資料を引き続きお願い」
「ありがとうチャダノ。 これなら今日中に終わりそうだわ」
助かった。 チャダノなら隣の部屋の資料くらいなら数時間で終わるはずね
さて、私も続きに取り掛からなくちゃ
ふぅ~、お料理って楽しいです~
私は今~、城中の鬼たちのご飯を作っています~
私はのんびりしてるから~、よく怒られるんですけど~
お料理だけは得意なんですよね~
今日の献立は冷ややっこに菜っ葉の浅漬け、海藻のお味噌汁にメインはぶり大根です~
私は~、ウキウキしながら~城の人達のことを思って~愛を込めに込めて~、お料理を作っていくのです~
うん、味もいい感じですね~
「ソウカちゃん、流石だねぇ。 童子に成ってからまた腕をあげたねぇ」
料理長のチヨおばあちゃんが褒めてくれたよ~
チヨおばあちゃんは和食の達人で~、遥か昔にこの世界に流れ着いた~異世界人さんに~、たくさんの和食料理を習ったそうなの~
でね~、その中でも一番美味しいのがチヨおばあちゃん特製のお味噌汁~
お味噌も自家製で~、わかめとお豆腐、おネギっていうシンプルな具材だけで~、最高に美味しいお味噌汁を作るの~
私も出汁の取り方を~教えてもらってね~、かなりチヨおばあちゃんの味に近づけたと~思うんだけどね~、まだまだな気がするよ~
「うんうん、そうそうそれでいいよぉ。 ソウカちゃん、盛り付けももう免許皆伝してもいいねぇ。 おばあちゃんの弟子で一番センスがあるねぇ」
和食は盛り付けも大切~!
お皿との調和も~保たないとなんだって~
お魚にはこれ~、お肉にはこれ~、お野菜にはこれ~っていう感じなんだけど~、それ以外にも~煮物や焼き~、揚げ~とか調理方法でも~違ったお皿を選ぶんだよ~
盛り付けも~終わったから~、そろそろ食堂に料理を~運ぶよ~
お腹を空かせた鬼たちが~、いっぱい来てるからね~
「お、ソウカちゃんが運んでくれてるのかい! 最近はソウカちゃんが手伝いに来てくれてるからおじさんの俺たちにとって最高の癒しになってるよ!」
「あんたらのは癒しというよりいやらしいだろうさね。 ソウカちゃんをそんな目で見るんじゃぁないよ!」
チヨおばあちゃんがおじさんたちに何か~怒っているけど~
何で怒ってるのかさっぱり~ですよ~
癒しになれてるなら~いいんじゃないですか~?
やっと見えてきましたわ、タイコウボウ様のお家
それにしても簡素で質素ですわね。 本当に仙人の偉い方が住んでいるのでしょうか?
少し疑ってしまいますわ
でも扉をたたくと、非常にたくましくて美しい男性が出てきましたわ
思わず頬を赤らめてポーッと見てしまいましたわね
「おや、君たちは鬼仙だね? いや、妖力の方が強いから、あれ? まあいいや、僕に何か用かな?」
「あ、あの、これを」
緊張して言葉に詰まりましたが、ジョカ様のお手紙をお渡しできましたの
わたくしの手から、直接受け取ってくださいました
ああ、なんと魅力的な方なのかしら
それにあの発達した筋肉、ハァハァ、山のような上腕二頭筋に岩盤のような大胸筋、前からでもよく鍛えられているのが分かる大殿筋がそそりますわ
「ど、どうしたの? なんだか様子がおかしいけど、調子が悪いのかな?」
手紙を読みながらわたくしのことを心配してくださるなんて!もう!だめっ!
わたくしは鼻血を吹き出しながらその場に倒れてしまいました…。




