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1 人間の街1

 僕は今空を飛んでいる

 そんな僕の周りを妖精や精霊が固めるようにして飛んでいる

 護衛のつもりなのだろうか、皆真面目な表情だ

 通常精霊は人には見えないそうだけど、妖精は見えるので念のため一人のみ姿を現してもらい、他の妖精は魔法で姿を隠してもらった

 精霊や妖精を纏った上位精霊がいきなり人間の街に降り立つなんて攻撃されるまではしないまでも大騒ぎになると護衛の精霊の一人、ウンディーネの女性テュナさんが言っていた

 テュナさんは揺蕩う水で出来た体にしなやかな肢体、後ろで束ねた青い髪に清楚な可愛さを持つ顔をしている


 ちなみに僕は今普通の人間の姿だ

 魔法は便利、ほんとに便利

 僕は大概の魔法なら創造できるほどの力を持っているらしく、人間に化ける魔法を作ってみた

 まぁ上位の精霊はのべつ幕無く使える魔法なので作ったといういい方はおかしいのかもしれないけど…


 そんなことを考えていると街らしきシルエットが前方に見えてきた

 大きさとしてはそうでもない

 念のため見つからないように手前の森に降り立ち、そこからは街道に出て歩いて向かうことにした

 

「周囲に敵性反応なし、ここならば安全です」


 そういうのはサラマンダーの女性エンシュさんだ

 炎の体に長い燃え上がる髪、彼女もまた多分に漏れず美しい

 上位精霊の彼女たちは僕の護衛のためだけに付いてきてくれている

 テュナさんとエンシュさんのほかにグノームの女性アスラムさん、シルフの女性フーレンさんがいる

 四人とも四大精霊(しだいせいれい)で、最上位の精霊だ

 

「ありがとうエンシュさん」


「エンシュと呼び捨てにしてください、我らはリディエラ様に仕える身、恐れ多いです」


 それに頷く他の精霊と妖精たち

 彼女らからは本当の忠誠を感じ取れた

 

「わ、わかったよエンシュ。それで、街に行く者たちなんだけど、僕を含めテュナ、エンシュ、アスラム、フーレンの五体で行こうと思うんだ。あんまり数が多いのも動きにくいしね。だから妖精たちはこの辺りで待っててほしいんだけど」


「できない」


「それはできないできない」


「リディエラ様ついて行く。私たちのお仕事」


「そうそう」


 妖精たちは口々にそうはいっているが、護衛は四大精霊だけで十分だし、彼らは人間に化けることなどできない

 気持ちは嬉しいけどここは我慢して待ってもらうよう説得した

 

 人間の姿に化けた僕と四大精霊は人間の街ロッティアへと向かった


 あまり大きくはないけど活気はある

 僕の知らない言葉で文字が書かれていたけど、転生の女神さまがそう言ったことに不自由しないよう理解できるだけの能力をくれているので問題はないね


 標識に冒険者ギルドと書かれている場所を見つけた

 テュナが言うにはここは様々な情報が集まったり、冒険者という人たちがいろんな依頼を受けて活動する拠点らしい

 情報、情報は力って言葉を聞いたことがある

 どこか住みやすい場所がないか聞いてみることにしよう


 ギルドに入ると、そこにいる冒険者と思しき人たちからの視線が一斉に集中した

 彼らは顔を見合わせ何やらひそひそと話し始めた

 無駄なんだよね、僕には丸聞こえだ

 彼ら曰く、「なんだあの美少女パーティは」だの、「素人か?ガキが何の用でこんなとこに来てんだ?」だの、なんだか視線が痛い

 敵意のある目や好意的な目、いやらしい目、様々な視線が突き刺さる

 そういった感情の流れまで見えるのは便利だけど不便だな

 あれ?なんか矛盾してる?

 まぁいいか、とりあえず受付で聞いてみるとしよう


「あの、情報が欲しいのですが」


「はい!ようこそ冒険者ギルドロッティア支部へ!」


 元気な受付嬢だ

 

「情報ですね、どう言った情報でしょうか?魔物の情報でしたら冒険者登録が必須となりますのでこちらで登録をお願いしますね」


「いえ、住む家を探しているんです。僕たち五人に他数人が住めるような大きさの家なのですが」


「なるほど、家ですね。少々お待ちください…えーっと、家、家、家の情報はっと」


 受付の下から分厚い本を取り出す受付嬢

 それをぱらぱらとめくり始めた

 

「家、家~、あらら~、この街には空き家はなさそうですね~」


「そう、ですか、じゃぁ他の街をあたってみます。ありがとうございました」


 少し残念だけど仕方ない。一朝一夕にいくものじゃないだろう

 幸い寿命なんてないらしいから気長に探すとしよう

 ギルドを出ようとしたその時だ


「あ!待ってください!」と、受付嬢に呼び止められた


「実はですね、この街の近くで新しい土地の開拓をしているんですよ。そこは常時働き手を募集していましてね。自分で家を建てるならその土地が街として開拓された暁には持ち家としてその家をもらえますよ?どうです?なかなかいい条件ではありませんか?」


 これは、なかなかいい情報ではないのだろうか

 開拓、とても心に響く言葉だ

 それに家づくりにも興味がある


「それは是非ともやってみたいです。その開拓、僕たちにも手伝わせてください」


 話はすぐにまとまった

 僕たちは開拓民としてそこに派遣されることとなった

 その過程で冒険者としても登録しておく。お金を稼ぐうえでも便利なので登録しておいて損はないだろう

 僕たちはみな(もちろん四大精霊も登録している)最低ランクのGランクからスタートだ


 僕らは意気揚々と開拓地へと向かった

 ん?何か忘れてる気がするけど…まぁいいか



 一方そのころ忘れられた妖精たちは


「遅いねリディエラ様」


「遅い遅い」


「まだ~?」


「帰ってこない」


「まだ待つ?」


「待たないとエンシュ様怖い」


「怖い怖い」


「鬼婆」


「鬼婆鬼婆」


 エンシュの悪口で盛り上がっていた


やっぱ開拓からでしょ

家の建て方?知らんわい


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― 新着の感想 ―
[一言] んんん? 何で精霊が人間の家を求める?
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