邪竜さん聖竜になる1
ここが精霊の国ってやつか、おうおう、弱そうな妖精と精霊がうじゃうじゃいやがる
暴れてぇ、こいつらを服従させて俺を崇めさせるってのも悪くねぇな
そんなことを考えていると俺を冷ややかな目で見ているやつがいやがる
俺を案内している雷の精霊だ
俺ほど強くはねえがこいつの目があると暴れれねえな
またあの精霊のボスにのされちまう
正直かなり痛かったぜ…。 いや、でもなんか、嫌じゃなかったかも
って何考えてんだ俺は!
「着きました。 女王様に失礼のないようご挨拶なさい」
「お、おう」
「おうではなくはいと言いなさい」
「はい…」
ちくしょう、なんで俺がこんな弱いやつに頭を下げなきゃなんねえんだ
絶対いつか滅ぼしてやる
俺は女王の前に来るとそんな思いもすっ飛んでしまった
あまりにも美しい
微笑を浮かべ、柔らかそうな唇と赤い頬、少しウェーブのかかった白銀の髪に大きな目、長いまつげ
たわわな二つの果実、あぁ、この方に仕えるために俺は生きてきたんだ
直感でそう分かった
俺は頭を下げて跪き、忠誠を誓った
「どうかこの俺を、いや、私をおそばに! 必ずやお役にたって見せましょう」
敬語なんてほとんど使ったことがないのにこの時ばかりはすらすらと出てきた
この方こそ魔王に変わって俺が絶対に仕えるべき方だ
「あらあら、やんちゃそうな子ですね」
ふわりとした柔らかい声、体の奥底から癒されそうだ
女王様は俺の頭にそっと手を置いた
なんて温かいんだ。 今までこんなに優しく触れられたことなんてない
不思議と俺は涙が出てきた
それから俺は心を入れ替えて熱心に働いた
妖精や精霊たちとも仲良くなった
段々とこいつらも守ってやりたいと思えるようになった
警戒のとれた妖精たちは俺の体で滑り台をしたり頭によじ登って楽し気にはしゃいでいる
精霊たちとは共に国を巡回したり、時には雑談をし、時には高めあい、笑いあった
今までにない幸せな時を過ごせている
俺は、ここに来て本当によかったと思い始めていた
「取ってきてもらいたいものがあるのです」
ある日女王様はそう俺に告げた
もちろん二つ返事で拝承する
断る理由なんてない。 女王様の役に立てるのが今の俺の生きがいなんだからな
取りに行くのはアウロラの涙という結晶だ
女神アウロラが流した涙という伝説がある鉱石で、この鉱石がある場所には必ずオーロラが空に輝いているらしい
この国を外部から守るための結界を張るのに必要な素材なんだと
こんな重要な任務を任せてもらえるようになったんだ
俺は喜んで一緒に行く精霊たちと共に任務に就いた
女王様は俺のことを心配してくれているのか
「気を付けてお行きなさい。 危険な魔物の多い場所ですから危ないと思ったら逃げるのですよ」
と言ってくれた
俺は力強くはいと答えた
さぁ、初めての任務だ
女王様に役に立つことを見せてほめてもらう!
そして! また頭を撫でてもらうんだ!
俺は意気揚々と旅立った




