7 妖怪族の国58
タカラちゃんのうどんがおいしかったのでおかわりして二杯も平らげてしまった。 エンシュに至っては二十杯も…。 ごめんねタカラちゃん
「つ、疲れたんだよ。 でもすっごく楽しかったんだよ!」
タカラちゃんはその場にどたりと倒れ込んだ。 顔は小麦粉まみれだけどそこがまた可愛い
「汚れちゃったから僕着替えてくるんだよ。 ちょっと待っててほしいんだよ」
15分ほど待っていると装い新たなタカラちゃんが戻って来た
最初に着ていたのは和装で、今度はゴスロリのような服装だった
お人形さんみたいで可愛いすぎる!
「ぬっふっふ、この服にご執心だよね精霊様! こんなこともあろうかと、里の総力を結集して精霊様のための最高のゴスロリ服を用意してるんだよ!」
あ、本当にゴスロリだったのか。 どうやらこれは異世界人の女性が伝えたものらしい。 その女性は現在もこの里で服を作っているのだとか
「ぬっふ、きっと王女様も可愛くなるんだよ。 楽しみなんだよ」
これはどうやら案内の中に練られていたみたいだ。 多分タカラちゃんが計画してくれたんだと思う
「それでは行きましょう! 我らが里の誇る最高の呉服問屋! ハルカ・ア・ラ・モードだよ!」
えらく流暢なフランス語?がタカラちゃんの口から飛び出た。 ハルカ・ア・ラ・モードという服飾工場兼ショップのようだ
「ご紹介するのだよ。 この人がゴスロリを伝えてくれた異世界人のハルカなのだよ!」
タカラちゃんが連れてきたのはこの店の店長さん。 異世界人のハルカさんだ
「どもー、ハルカって言います! うわぁ~、精霊様って綺麗な人ばっかりなんですね~。 それに王女様? 小っちゃくてカワイイ~」
な、なんだこのグイグイ来る人は…。 すっごいペタペタ触って来るよ! スキンシップが激し
「ちょ! どこ触ってるんですか!」
ハルカさんは僕の胸をムニムニともんでいた
「ふむふむ、大体の採寸はできたよタカラちゃん。 おおむね予想通り」
「ほほぉでは」
「うむ! このハルカ・サ・スーパーさんがとびっきりに可愛い服をご用意させてもらうとしよう!」
あ、この人、ネジが飛んでる気がする…
そこからはもみくちゃにされ、触られまくり、もう好きにしてと思い始めたころに僕の衣装チェンジが完了した。 鏡の前に立たされて自分の姿を見ると、和服をベースとしたゴシックロリータ衣装に髪をツインテールにされた姿が映し出されていた。 和装ゴスロリにツインテールはよく合ってる。 我ながら可愛いのではないでしょうか
テュネの鼻息が荒くなってるけど気にしないでおこう
「やっぱり! 前に王女様を一目見たときから似合うと思ってたのよね!」
どうやらハルカさんは鬼ヶ島の祭りのときに来てたらしく、僕の姿を見てすぐに制作を始めてたらしい。 採寸は見立て通りだったみたいで、この服はまるで長年着ているかのようにしっかりと体になじんだ
「どうです王女様、着心地いいでしょう?」
「うん、それになんだか体が軽い気がする」
「そうなのですよ! これが私がこの世界に来てから得たスキル! “服福来来”です!」
彼女の話だと、この能力は作り上げた服に三つだけ効果を付与できるものらしい
この服に付いているのは、重さ軽減、魔力増強率2倍、ダメージ軽減率20%だって
実はハルカさん、装備も作ってて、冒険者の間、特に女性の間では憧れのハルカブランドとして知られているみたいだ。 あの花の妖精テュルリスの装備もこのハルカブランドらしい
「それは王女様へのプレゼントです! どうかもらってくださいな」
お金を払おうとするとそう言って受け取ってもらえなかった。 普通に買えばかなり値が張る品物なのに、悪いよ
そう思ってもう一度渡そうとしたけどかたくなに受け取ってくれなかった
「私は王女様のその装備を作ることでまた一つ上の段階に行けたのです。 これはそのお礼なのですよ」
正直かなり嬉しかった。 僕たち精霊は汚れないとはいえ、ずっと同じ服装(自分の魔力で作り出したもの)だったからね
「ありがとう、大切にするよ」
こんなに可愛い装備をもらったんだから、僕からもお礼がしたい
「精霊召喚、服飾の精霊メーラー」
僕が召喚したのは服飾の精霊という着る物を司っている精霊だ。 彼女は服飾人に加護を与えたり、妖精や小人たちと共に服を作ったりする、精霊の中では新しく生まれた精霊。 真っ赤なフレームの眼鏡に軽くカールさせた金色の髪、服は何とも形容し難いオリジナルの服を着ている。 ただ胸元からおへそ下まで大きく開いた服は男性の目が釘付けになることでしょうね
「んまぁああ、王女様! その和装ゴスロリ素晴らしいですわ! よくお似合いですわ!」
彼女は服のこととなると目の色を変えるからちょっと苦手。 でも最先端ファッションのこともよく知ってて、当然のようにこの服のデザインのことも知っているみたいだった
「こちらを作った方はどなたですの?」
彼女はバッと辺りを見渡してすぐにハルカさんを見つけた
「あなたですわね! これはもう加護を授けるに決まってるじゃないですか」
メーラーはそう言うと即座にハルカさんに加護を与えた
「え? えあ? へ? なになになに?」
ハルカさんは突然目の前で起こった様々な出来事に頭が追い付いていないみたいだ
「安心なさいな、私の加護を授けたのですわ。 その加護があればあなたのスキルの力もグッと上がるはずですわよ」
ハルカさんはそれを聞いてものすごく喜んでいた。 その横でタカラちゃんも訳が分からないまま飛び跳ねてたのはちょっと笑っちゃった。 もちろん可愛すぎたからです




