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3 鬼人族の国1

 翌朝、すぐに準備をして宿を出て港へ向かった

 ゴブリンの商人たちはもう来ていた

 ギジムさんがニコニコと手を振っている

 

「やぁ、来たね。 あと一時間ほどで出発だよ。 忘れ物はないかい?」


「はい、大丈夫です」


 ギジムさんは本当にいいゴブリンだなぁ

 彼らとは鬼ヶ島に付いたらお別れだ。 鬼ヶ島に卸ている製品を買い取ってもらった後はすぐに別大陸への船に乗ってエルフの国へと行くのだそうだ

 エルフの国、精霊たちと根強い関係を持つ彼らには合っておきたい

 でも、鬼ヶ島の観光を終えたら一旦家に戻ろうと思う

 妖精たちに顔を見せておきたいし、フクちゃんの紹介もしておきたい

 それに、故郷に送った邪竜ガンドレの様子も見たいな

 

 船に揺られること数時間、この船、風魔法で操っているらしく、非常に速い

 海を滑るように進む船、揺れも少なく酔うことはなかった

 海風が気持ちいいんだけど、髪がなんかゴワゴワしてきた。 潮風のせいかな?

 

 鬼ヶ島が見えてきた

 遠目から見てもその景観は素晴らしく思えた

 朱色に輝く大きな鳥居のような建築物がそびえたっていたのだ

 全長は恐らくだけど50メートルくらいかな?

 小さなころ宮島で見た鳥居に似ていた

 その鳥居は海から立ち伸びており、周囲の外観と調和がとれていた

 

 僕の肩に乗っていたフクちゃんはパタパタと飛び上がり、鳥居の上に止まった

 神々しい、まるで神鳥のようだ

 可愛い!

 上からの景色に満足したのか、また僕の肩へと戻って来た

 人が見ていなけらば僕らも一緒に上に行きたかった

 でもこの鳥居、どうやら立ち入り禁止のようで、登ろうものなら鬼人の警備隊が隊をなして向かってくることだろう

 精霊ならもしかしたら大丈夫かもしれないけど危ない橋は渡らない

 それに、ルールを破るのは僕のポリシーに反する

 ルールを守って楽しく観光!


 到着すると、鬼人の女性たちが出迎えてくれた

 どの人も非常に美しい

 また、港を歩く男の人もイケメンばかりだ

 僕が女だったら見惚れていたかもしれない。 あ、今は女の子なのか。 ややこしいな

 テュネたちは男性たちに見惚れているようだ

 精霊と人との恋愛もこの世界では珍しいことではないので彼女らの反応も普通のことなんだろうと思う

 あ、あの人かっこいい…

 ぼ、僕は心は男だから恋愛感情とかじゃないよ。 普通にかっこいいと思ってただけだよ

 ほんとだよ?

 でも、体に引っ張られて考えが女の子っぽくなってきているのはあるかもしれない


 港からそのまままっすぐ行くとすぐに街が見えてきた

 ここは本当にただの宿場町でめぼしい観光名所はなく、輸出入の搬入口でもあるため大きな積み荷などが保管される倉庫のような建物が多かった

 なのでここではとりあえずご飯だけを食べて次の街に向かうことにした

 

 目についた定食屋へと暖簾をくぐって入る

 

「いらっしゃい!」


 店主の粋のいい声が響いた

 どうやらここはすし屋のようだ

 店主は鬼人ではなく、なんと! 日本人だ!

 彼は名前を佐藤純と言って、日本からこちらに飛ばされ途方に暮れていたところを鬼人に助けられたらしい

 以来料理人でもなく普通の高校生だった彼は数年間見様見真似と試行錯誤を繰り返し、日本料理を再現することに成功した

 鬼人族の文化が日本と似ており、食文化も似たところがあったのも幸いしたんだと思う

 カウンターは満席だったけど、回転率がいいらしくすぐに入ることができた

 

 この世界に来て初めて出会う同郷の彼にそれとなく話を聞いてみると、彼はこちらに来る際に“食技”というスキルを手に入れたらしい

 そのスキルは、お手本を見ればどんな食材でも同様にさばくことができ、味の再現が可能だというなんとも料理人向きのスキルだった

 ただ、過去に見たものは再現できなかったため寿司やその他の日本食は苦労したという

 あぁ、彼のような人のおかげでまたお寿司が食べれるのだ

 是非ともこの店はひいきにさせてもらおう


 さて、お任せで下駄に乗せられたのは白身の魚

 たんぱくかと思いきや脂がのってて甘みがあり非常にしっかりした味がある

 スズキに似た魚なんだそうだ

 海に囲まれているためこういった食材には事欠かないらしい

 次に乗っけられたのはうっすらと光って見えるエビ、プリプリのその身は白い身に赤い模様が入っており、口に含むととろけるようでいて程よく咀嚼をはじいてくれた

 テュネは悶絶するように笑顔で唸っている

 四大精霊たちは初めてお寿司を食べたようで、ものすごく気に入ってくれたようだ

 かくいう僕もこの味には大満足だ

 

 それからお任せで出されるお寿司を全て平らげてお昼ご飯を食べ終えた

 また来ますと佐藤さんに告げて店を後にすると大きな街の方向へと向かった

 次に行く街には姫たちが暮らす城があるらしく、もちろん国の首都だ

 街の名前をトウゲンというらしい

 観光地としても凄く栄えているので非常に楽しみである

 

いよいよ鬼たちの国です

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