白黒 童子姉妹の冒険17
次は気力を込めた斬撃。 ただの剣術だと効果は薄いことは明白だったから、自分の力を刀に込めてみたの。 白雪とクロアゲハはもはや私達の一部だったからすんなりと刀に宿った
「鬼剣術、一の型、白鷺!」
舞い上がりながら斬りつけてみると、少しだけ傷がついた。 そう言えばさっき爪を斬りとばしたときもとっさに仙力を込めた気がする。 と言うことは、何らかの力を使えばダメージが与えられるのね
「鬼剣術、一の型、襲雷!」
お姉ちゃんの剣術、雷を刀にまとったもので、妖術も込められてるみたい。 でもこれはあまり効果なし。 妖術には耐性があるみたい。 神獣特有のものなのかも
「仙気解放、鬼剣術極! 浄劫八天不知火!」
すかさずお姉ちゃんは仙力と気力を解放して極みの技を繰り出した。 すると先ほどまでの苦戦がウソのように白虎に大傷を負わせることが出来た。 これなら勝てる!
「お姉ちゃん!」
「ええ!」
「「仙方気力解放、鬼剣術極、大鬼子母神六刀浄土!」」
再び二人の力を合わせて極みの剣術を放つ。 刀を振るう速度が速すぎて残像によって六本もの腕が生えたかのような幻影が見える。 その手に握った六刀の刀を一気に斬りこみ、抵抗しようと爪と牙をもって迫る白虎の首を斬り落とした
「はぁ、はぁ。 やった? やったの?」
白虎はピクリとも動かない。 カイトさんが確認のために近づいてくれる
「うん、よくやったね二人とも」
やった、私達二人だけで、神話級を倒したんだ!
そしてやってくる物凄い疲労感。 力を使いすぎたことで体に限界が来ちゃった
「やれやれじゃの。 わらわが運んでやるからそのまま寝ておけ」
アンミツ姫のそんな声を聴きながら、私とお姉ちゃんは眠りについた
「ほれ、おい、目を覚まさんか!」
顔をペチペチと叩かれて目を覚ますと、私達は布団の上に寝かされていた
あれ? 服装が変わってるんですけど?
「うむ、汗をかいておったからわらわが隅々まで拭いて着替えさせてやったぞ。 着物もわらわが作ったものじゃ。 ありがたく思え」
アンミツ姫、器用ですね。 ハッ! 隅々まで…? ど、どこまで!?
「なんじゃ、ちゃんと全体を綺麗に拭いてやったぞ。 それにしてもおぬしら、ぬふふ、意外と感度が高いのじゃな」
私もお姉ちゃんも顔を真っ赤にしてアンミツ姫を見た。 彼女はそのまま「眼福眼福、そうじゃ、ご飯ができたから早う来い」と言って部屋を出て行った
ああもう! 気にしてられないよ! ご飯を食べて体力をつけなきゃね!
一方アカネたちはと言うと
「そうそう、それでいい、反復が大事なのだよ」
三鬼とも体に童子の力を馴染ませる練習を何度もしているようだ。 その中でもやはりアカネは天才肌のようで、すでに体に童子の力がよくなじんでいた。 動きも良く、もはや龍王たちでは対応できないほどに強くなっている
「てりゃぁぁあっす!」
現在は目をつむりながらの訓練で、いかに気配を早く察知して反撃するか、という内容だ
アカネ含めキキもソウカもこの訓練にしっかりとついてきていた。 気配を探り、後ろから繰り出される攻撃を刀で受け止め、そこから反撃をする。 さらにお互いの気配を察知して連携までも行えるようになっていた
「この子ら成長速すぎない? 教える必要あんのこれ」
「まぁまぁ、アンミツ姫様からぁのぉ、お仕事ぉだからぁ、文句言わないぃのぉ」
ジュマに諭され、モウビはため息をつきながらも無理やり納得した
「気配察知の訓練は素晴らしい成果ですね。 そろそろ休憩いたしましょう。 私の作ったケーキと紅茶を用意してますよ」
マキラはアンミツ姫と同じで料理が好きだ。 特に洋菓子を作るのが得意で、その腕前はアンミツ姫も褒めるほどである
「やったっす! マキラさんのケーキをまた味わえるなんて夢のようっすよ!」
「そうーですねー。 私もマキラさんのーケーキー、大好きですー」
キキもコクコクとうなずいて同意する。 三人とももともと甘味が大好きで、特に洋菓子はここに来て初めて食べ、その美味しさに虜になっていた
「ふふふ、そう言ってもらえると作った甲斐があったというものです」
嬉しそうなマキラはその手にホールケーキ(ショコラ)をもって来た。 甘いチョコレートの香りが周囲に漂い、他の龍王たちも涎をたらしていた
「はしたないですよ!」
マキラに叱られて龍王たちは思わずビクッとなる。 五王龍の中で怒らせると一番怖いのはマキラのようで、彼女は神龍になれる素質も持っている。 そのため五王龍の間でも一目置かれているのだ
「では、いただきますっす!」
切り分けられたケーキを丁寧に救って口に運ぶ。 アカネはこう見えて意外とマナーのなった少女だ。 それもそのはずで、立場上姫のお付きである。 マナーや作法は三獣鬼にとって至極当たり前に身についている
ケーキを食べ終わり、三獣鬼は入浴してから体を休めた




