表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/464

7 妖怪族の国50

「さぁいよいよ最終演となりました! あ、私のお姉ちゃんも出るので応援してね!」


 いよいよ僕らの番が迫って来た。 横にいたセトカちゃんもドキドキしてるみたいだね


「それでは早速登場していただきましょう! 第16組目! ボルメヴァルファス!」


 出てきたのは魔族、妖怪族、獣人、人間、エルフ、小人、巨人、翼人、鳥人、ドワーフなどなどなど、たくさんの人種で構成されたオーケストラ。 持つ楽器も様々で、それぞれが得意な楽器をもって演奏し始めた。

 一件バラバラなように見えて統率がしっかりとれていて、素晴らしく調和していた


 お次の17組目は満を持して登場のエコーズさん! 彼女はアカペラで歌うようだ


「ヤッホー! みんなのアイドルエコーズちゃんが歌って踊ってダンシングだよ!」


 踊るとダンシングは一緒だと思うけど、マイクを持ったエコーズさんの声は澄み切っていて、頭の奥底まで響いてきた

 なんて素晴らしい歌声なんだろう。 あとで聞いたけど、彼女の妖術は音を心に響かせるものらしい。 ネネコちゃんに勝るとも劣らない歌声は観客を感動の渦に包んでいた

 僕も舞台袖で拍手しちゃったよ


 18組目、フーリオンフィックルハーモニー。 大昔から代々続く名門の音楽隊で、その実力は折り紙付きだ

 演奏が始まり、それに合わせて合奏が始まる。 曲はなんと第九! なるほど、誰かが伝えたってことか

 僕の知っている曲だったからなんだか懐かしいね


 19組目はセトカちゃんだ! セトカちゃんが取り出したのは、ハーモニカ!? ハーモニカしかもってないね。 体を鳴らすんじゃないのかな?

 セトカちゃんは口にハーモニカを当てると吹き始めた

 あれ? 普通、だよね? 綺麗な音色だけどあまりにもふつ…

 え? 音色がゆっくりと変わった

 段々と激しく、音の重なりが増え、途端に豊かになっていく

 ハーモニカしか吹いていないのに重厚なメロディーが会場を埋め尽くした

 最後にはオーケストラのように劇的な音を巡らせ、オペラのような物語を響かせた

 これがセトカちゃんの妖術“重音(かさね)”。 音を奏でれば奏でるほど体から様々な音楽が発せられていく力だ

 素晴らしい演奏だった。 テュネも音楽の精霊ミュゼも大きく拍手してる。 余談だけどミュゼはセトカちゃんに加護を授けることを決定したらしい


「さて、いよいよ最後となります! なんと今回飛び入りで参加してくださいました! 四大精霊様と王女様です!」


 うううう、緊張するよ。 縦笛…。 大丈夫かな? 縦笛の中でも初心者に扱いやすいアルトリコーダー。 これしかできないから仕方ない


「では行きましょうリディエラ様」


 いくつかの和太鼓がまず運ばれてくる。 これはアスラムの楽器だね。 次にアスラムが太鼓の前に立って…。 あの、アスラムさん? その恰好は何なのでしょうか?

 アスラムの姿はまるで日本の祭りのようで、はっぴにさらしにふんどしと言う出で立ち。 かなり気合を入れているのかな…。 ちょっと、いや、凄く刺激が強いです

 次にドレスを着たテュネがハープをもって出てきた。 こっちはまともでよかった。 それにしても大きなハープで、前に持ってた竪琴とは違った優雅さがある

 その次はエンシュ。 男物燕尾服にヴァイオリンを持った姿、すっごくかっこいい! 女性陣からの黄色い歓声が聞こえてくる

 それからフーレン。 フーレンは胸元の大きく開いたドレスで、これまた男性の歓声が上がった。 アスラムとフーレンはあとでテュネからお説教を喰らいそうだ

 最後に僕の番。 縦笛をもって子供用ドレス…。 歓声が聞こえるけど、そのどれもが女性からの「かわいいい~」と言う声で、ちょっと恥ずかしい


 演奏を始める。 音楽はテュネが教えてくれてたから少しは分かる。 だからテュネの演奏に合わせて必死に笛を吹いた。 するとどういうことか、うまく吹けてる! 日頃テュネに習って練習したからかな? そう言えばテュネってミュゼと同じくらい音楽がうまいって聞いた。 音楽の精霊と同等って相当じゃない?

 テュネの演奏は誰もが目を奪われるほど美しく、やましい気持ちでアスラムとフーレンを見ていた男性たちも、心を洗われたかのように口を開けて聞き入っていた。 僕の演奏、ちゃんとついていけてるかな?

 一所懸命に笛を吹く指を動かし、テュネたちとの調和を保った。 自分でも頑張れたんじゃないだろうか?

 

 演奏が終わり、観客席は静まり返っている。 もしかして失敗しちゃった!? どうしよう、ごめんねテュネ…

 うなだれながらそう思った直後に、会場が揺れるほどの拍手が起こった。 びっくりして前を見るとスタンディングオベーション! よかった、皆満足してくれたみたい

 僕はほっと胸を撫で下ろして舞台裏へ戻った

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ