7 妖怪族の国42
カイトはその気配を察知していた。 復活した伝説級の魔物の気配。 しかし今はここを動くことができなかった。 なぜなら目の前にいるのは超古代兵器マキナアルマ。 人間族と近しい種族であるマキナ族という滅んだ種族が作り出した最悪の置き土産だ
「強いねどうにも。 さすがマキナ族の兵器だ」
カイトは手に持ったアマテラスの呪力が込められた神刀草薙剣天呪を居合のように打ち出した。 神刀とはいえどマキナアルマの装甲は硬く、ほんの少し傷をつけるにとどまった
「く、やっぱりだめか。 機械相手じゃこの力は役に立たないし、どうしたものか」
カイトの力、力量の破壊は魔力、仙力、気力、方力などの力という力を無効化するという強力なものだ。 しかし相手は古代兵器であり、そういった力で動いているものではない。 しいて言えば電力だが、それを断ったところでこの兵器は常に電力が供給される永久機構が組み込まれているため意味がない
「やっぱり、あの力を使うしかないのかな」
それはカイトの数ある力のうちの一つ、天日照だ。 アマテラスから加護を受けている彼は日光を召喚することができる。 しかしこの力は周囲全てを焼き尽くすほどの超高温だ。 彼一人ならば当然耐えるための力を発動させればよいが、この後にハクラ姫とクロハ姫、そしてアンミツ姫が来る予定であるため、早々に決着をつける必要があった
「すぐ終わらせてやる。 神式葬送。 天日照!」
疑似太陽を召喚したカイト。 それと同時に自分の周囲に神域という結界を張った
「これで、どうだ!」
疑似太陽をゆっくりとマキナアルマに押し付ける。 可動部である関節が最初に溶けだし、マキナアルマの動きが止まる。 しかしすぐに反撃を開始するマキナアルマ。 胴体部が開き、レーザー射出を始めた。 無数のレーザーがカイトに向かうが、神域はそれすらもいともたやすく防いだ。 しばらく悪あがきを続けていたマキナアルマだったが、疑似太陽はゆっくりとマキナアルマを飲み込んで、崩壊させた
「ふぅ、いっちょ上がりってね。 お、ちょうど来たかな? 少し待ってもらわないと」
カイトはたった今しがたやって来た三人の客人を待たせることにして、世界の危機へ向かって飛び立った
ダムドメガロは大きく口を開けて僕らを飲み込もうと迫ってくる。 牙は鋭くて、一噛みされれば即死することは間違いない。 フェンリルの時と同じような恐怖を感じた
「リディエラ様! 結界をお願いします!」
「う、うん!」
テュネに言われて僕は最大限の結界を周囲に張り巡らせた。 僕の結界は以前よりも強力になっていて、ちょっとやそっとじゃ破壊されない自信がある。 案の定ダムドメガロの噛みつきは弾くことができた。 でも今ので少しひびが入ったみたいだ
「戦闘態勢を! エンシュは海上から援護を!」
「ええ」
エンシュは海の中だとあまり力が出せない。 そのため上空から援護射撃を行うみたいだ。 海に向かって火を打つわけだけど、途中で消えてしまうだろう。 でもそこはちゃんと考えられている。 テュネが水をコントロールして一部に穴をあけ、そこを通してダムドメガロに当てる
「フーレンはエンシュの攻撃の補助を。 アスラムは海底を隆起させて!」
テュネの指示でフーレンとアスラムも動き出す。 エンシュの打ち出した火をフーレンの風で強化し、アスラムは海底の砂や岩を隆起させてダムドメガロが動きにくい地形を作り出した
「これで動きがかなり制限されました。 リディエラ様は光魔法でエンシュと攻撃をお願いします」
「分かった! シューティングレイ!」
魔力の溜めの短い中位魔法のシューティングレイをエンシュの攻撃に合わせて打ち込む。 いくつか当たってダムドメガロの皮膚にダメージを与えることができた。 この魔物は熱に弱いらしく、僕とエンシュの攻撃はかなり効果があるようだ
「アクアコントロール!」
ひるんだダムドメガロを水の牢獄を作り出して閉じ込めると、エンシュがそこに炎球をぶつけた。 超高温の炎球だったため、水の温度が一気に沸点へと上昇した。 煮られたことでダムドメガロは奇声を発しながら暴れた。 それによって水の牢獄は破られる
「逃げられましたか。 しかしこの攻撃はかなりの有効打みたいですね」
確かにダムドメガロの体はところどころがただれて苦しそうだ。 それでも僕らを絶対に喰い殺そうという意思ははっきりとその目から感じれた。 口を大きく開けて叫ぶ。 どうやら怒らせたみたいで、ダムドメガロの体から膨大な魔力が溜められていくのが分かった
「何か仕掛けてきそうですね。 あれは危険です。 結界の多重展開をお願いします」
僕は再び結界を展開し、それを何重にも重ねた
ダムドメガロは身を震わせると、その口から竜のようなブレスを放った。 その直後に海中が大きく揺れて結界に衝撃が走る。 一枚目、二枚目、三枚目、四枚目。 八重に張った僕の結界が半分と少し壊されたところでなんとかブレスを防ぎ切った。 参ったな。 僕の多重結界は竜のブレスでも一つ目の結界で止めれるというのに、この伝説級はそれをあっさりと四枚も打ち破ってしまった
「もう一度来ます!」
もう一度結界を張る余裕がない! すでに五枚目の結界は壊れかけだ。 これを完全に防ぎきれるか分からない。 でも僕は一つのアイデアを思い付いた
「テュネ、エンシュ、フーレン、アスラム! 四精霊合成魔法を!」
とっさにだったけどこの四人の合成魔法をぶつけることを思いついた。 結界を張るよりこの方が速い。 四人はすぐにそれぞれの魔力を練り上げて合成魔法の準備をした。
ダムドメガロの口から再びブレスが放たれた
「「「「クワトロエレメント!」」」」
四属性が合わさった四大精霊魔法。 四色に煌くその魔法は真正面からダムドメガロのブレスとぶつかった。 それによって威力が大幅に削られたブレスはあっさりと結界に防がれた
「隙が出来ました! 今です!」
今度は僕の番。 僕だって力はかなり増している
「二属性合成魔法、クロスプロージョン!」
これは風と炎の属性を合わせた超高熱を発する爆発魔法だ。 それがダムドメガロの尾びれを消失させる。 これによってダムドメガロは高速移動が不可能となった
「まだまだ! 二属性合成魔法、ハイネス・ヴァッザー!」
水が沸騰しないよう制御しながらも超高熱を発するお湯を作り上げてダムドメガロの周囲を覆う。 先ほどテュネとエンシュが作った水の熱牢獄よりも強力な熱湯は、ダムドメガロを煮魚にしてしまった
「倒せ、たの?」
ダムドメガロはもはやピクリとも動かない。 こちらに被害は無し。 僕たちの完全勝利だった。 その勝利によって人魚たちも歓声を上げた




