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7 妖怪族の国40

 それぞれの占いが済むとミカヅキさんの表情が険しくなっているのが分かった。 何かを考え込むように顎に手を当ててうんうんと唸っている


「ミカヅキさん?」


「あ、申し訳-ありません。 予言ネットワークにー伝えなければーいけないことがーできーましたー。 まことにー申し訳ーないのですーがー、ご案内ーできなくーなりましーたー」


 どうやら何かを考えているように唸っていたのは念話と呼ばれる特殊な会話方法で多種族の予言者たちに会えるよう連絡を取っていたようだ。 念話で伝えればいいと思ったけど、予言者たちの集会所には予言内容を詳しく読み解くためのマジックアイテムが数多くあるため集まった方が効率がいいかららしい


「ではー、行ってまいりますー。 私がいない間はー、私の従妹であるー、マンゲツちゃんがー、ご案内いたしますー」


 いつの間にか部屋の中に前髪で目を隠した女の子が立っていた


「うわびっくりした!」


 その子は僕の後ろに立っていて袖を引っ張っていた。 全く気付かなくて思わず驚いちゃったけど、この子もどうやら件族みたいだ。 頭に小さな牛の角が生えている


「ではマンゲツちゃん、精霊様ーたちの案内をー、よろしくねー」


 コクリとうなずいたマンゲツちゃん。 ついて来るように手をこまねいた。 恥ずかしいのかうつむいてほっぺを赤くしている


 すでにミカヅキさんは走って出ていったため、マンゲツちゃんの後をついて占いの館を出た


「あ、改め、まして…。 マンゲツです」


 どうやら緊張と恥ずかしさでうまく喋れないみたいだ。 ずっともじもじしてて可愛い。 ミカヅキさんが部屋を出る前に、「この子はかなりの恥ずかしがり屋ですので聞き取りにくいと思いますが、精霊様の大ファンですのでとても喜んでいるのです(早口のようだけど独特の喋り方を一部変えています)」と言っていたから今この状態は喜んでいるんだと思う。 それを証拠に髪の切れ目からちらちらとこちらを見る可愛い目が見えていた


「で、では、ついてきて、ください」


 ついてきてくださいも何も、マンゲツちゃんは僕の袖をつかんで離さない。 すごく可愛いんだけど、少しだけ歩きにくくて僕は苦笑する。 それでも一生懸命なマンゲツちゃん。 まだ幼いその足で必死に案内をしようと張り切っているのが分かる


 マンゲツちゃんの案内で最初に来たのは件像という見上げるほど巨大な像のある神社だった。 その大きさはガシャドクロ族も驚きの78メートルと牛久大仏にも迫る勢いだ。 ただ仏像じゃなくて件族初代、大預言者クシノメゲンヤダイヤエンヒメという人の像らしい。 実は妖怪族の神様は一人なんだけど、その神様はたくさんの妖怪族を産み落としたらしい。 その始祖妖怪の内の一人がこのヤエンヒメだ。 大預言者と呼ばれるだけあって、どんな未来をも予言できたという。 それは第三の目と呼ばれる額にある目のおかげで、両目をつむって第三の目を開くと未来が道筋のように視えたそうだ。 この第三の目、何代目かに一度開くらしくて、今代であるミカヅキさんの額にもあるそうだ。 ただ、普段は閉じているらしい。 閉じていると普通の額と何ら変わらないから不思議だね


「い、いかがですか? ヤエンヒメ様、は、皆のあこがれ、で、誰にでも優しい、おっとりした人、だったそう、です。 お姉ちゃん、みたいに」


 マンゲツちゃんがお姉ちゃんと言ったのはミカヅキさんのことか。 その言葉の節々に尊敬がうかがえる


「あ、あの、この神社、では、お守り、が、ゆ、有名なんです」


 そういえば像の手前横に売店が見える。 よく繁盛していて人がごった返しているな


「か、買ったものが、あるので、こ、これをどうぞ」


 どうやら僕たちが並ばなくてもいいように先に買ってくれてたみたいだ。 すごく気の利くいい子です!

 それを受け取って眺めてみると、牛の体に人の頭を持った魔物のような絵が描かれていた


「これは?」


「それは、く、件、です」


「え!? これが? 全然違う気がする」


「は、はい、この件、は、この世界の件、では、な、ないんです。 い、異世界の方が、こっちの世界、の、件は、こんな姿だった、と、描いたんです。 そ、それが当時の族長に、気に入られて、マスコット、に、したんです」


 なるほど、確かに見ていると可愛いかもしれない。 顔なんてにっこり笑ってるから愛嬌があっていいね。 僕はそれを腰に付けていた刀の根付(財布などが落ちないように財布に付けて帯に挟む小さな木彫り)変わりにつけてみた。 これはいけてる! 僕に習ってクノエちゃん、四大精霊も付けている。 特にクノエちゃんは和装だからよく似合ってて可愛い


「ありがとうマンゲツちゃん!」


 僕がお礼を言って頭をポンポンとするとマンゲツちゃんは顔を真っ赤にして倒れてしまった


「マンゲツちゃん! マンゲツちゃん!」


 とりあえずお姫様抱っこのように抱え上げて近くのベンチに横たわらせて膝枕をすると、しばらくして目を覚ました


「大丈夫?」


「も、申し訳ありません! せ、精霊様、のお手を、わ、煩わせてしまい、ました!」


 ガバッと起き上がって必死に謝るけどそんなことで怒らないよ? 大丈夫だよと一言言って頭を撫でてあげると、今度は気絶しないまでも顔を先ほどより真っ赤にしていた。 しかも膝枕をされていたことに気づいて慌てて立ち上がってわなわなと震えていた。 こういう反応はちょっと新鮮かも…

 一時間くらいしてようやく落ち着いたマンゲツちゃんは僕たちの案内を再開した

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