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闇の落とし子4

 いよいよこの段階まで来たとミヤは喜ぶ。 闇化した作物、その成長はおおむね良好で、見た目は黒く不気味なものの味は申し分のないほど美味しい。 さらに闇化した家畜だ。 こちらは暴走を抑えるために光の女神イナミリアの加護を受けた柵の中で育てることで暴走することがなくなった

 

「ようやくここまで来た感じね。 アヤ、そっちのクロモロコシの様子はどう?」


「はい、粒も大きく、甘さは普通の比ではありません。 これならパリケル様にも喜んでいただけるかと思われます」


 ミヤの言う通り、アヤは一口かじってみると高糖度の甘みが噛むごとに広がっていった。 香りも芳醇で、ひげはお茶として流用できそうだ。 しかも闇化の影響は体に一切なく安心安全な食品となっていた。 これもひとえに光の女神のおかげだと一同は感謝した


「じゃぁパリケル様に持っていきましょう」


 ミヤとアヤの二人で出来立てのクロモロコシを作業を続けるパリケルの元へ持っていった


「パリケル様、素晴らしい出来の作物を持ってまいりました」


 うやうやしく一礼をするが、パリケルはちらりと見て困ったような顔をした


「敬語はいらないと言ったぜな。 あんたらはもうここの住人、いわば家族みたいなもんなんだから気軽に接してくれる方が嬉しいぜな」


 そうは言われても彼女はミヤたちを救ってくれた恩人であり、間接的にだがアヤの命の恩人でもある。 闇人達は皆が彼女に感謝し、命を捧げてもいいと考えていた


「で、ですがパリケル様は私たちの主人でありますので」


「ほらー、そういうのが俺様はダメなんだぜな。 敬語なしで話してくれないならもうお前らとは話さないぜな」


 頬を膨らませてそっぽを向く姿は実に少女らしいが、手はずっと空間に浮かぶパネルをタッチして処理を続けているのでその姿は異質だった


「そ、それでは、パリケルさま…パリケ…パリケル、さん、でどうかしら?」


「ふむ、まぁまだ難しいならしばらくそれでいいぜな。 なれたら呼び捨てにするぜな」


 パリケルの旧友たちは皆が皆彼女のことを呼び捨てに呼ぶ。 それこそパリケルの望む関係性であり、信頼の証でもあった。 彼女は闇人達を本当の家族のように思っていた


「さて、そのクロモロコシとやらを食べさせて欲しいぜな。 アーン」


 小さな口を開いてクロモロコシを口に入れるようジェスチャーをする。 ミヤは食べやすいように一部を切り取ってパリケルの口に入れた


「ムグムグ…」


 緊張の面持ちでパリケルと見ていると、急にパリケルは真剣な顔になった


「ど、どうかしら?」


「ふーむ。 これは誰が育てたんだぜな?」


「私です」


 アヤは恐る恐る手をあげてパリケルの次の言葉を待った


「よくやったぜな! これほどにうまい作物を作るとは、任せて正解だったぜな! それにあの家畜たち。 順調に成長しているようじゃないかぜな。 俺様も技術を教えた甲斐があるというものだぜな」


 パリケルはアカシックレコードの記録から作物や家畜、家の造り方など様々な生活に必要な知恵を闇人達に与えている。 そのために必要な土や水、日光などは神々に力を借り、この狭間の世界を一つの完成された世界へと生まれ変わらせようとしていた


「さて、ここまでできたお前たちに一つ話しておくことがあるぜな」


 改まった口調で述べるパリケルに真剣な表情でその話を聞こうと耳をそばだてるミヤとアヤ


「狭間の世界とは、その名の通り世界の狭間、世界と世界のつなぎ目だぜな。 当然この世界がちゃんとした世界になればこの世界と他世界の間に狭間が生まれるぜな。 そしてそこが回廊となって世界をつなげる。 この世界はすでに一つの世界としての条件を満たしつつあるぜな。 あとは住人が増えることで狭間の世界は普通の世界へと進化するぜな。 そう、世界は進化する。 これは未だかつてない試みだぜな。 だからこそ重大重要なことだぜな。 それに携わる覚悟がこれからもあるかぜな?」


 まくし立てるように、口早に、パリケルは闇人のリーダーでもある二人に問うた。 しかし聞かれるまでもなく闇人達の意見は、総意は、同じだった


「私達はずっとパリケルさんについて行くという確固たる意志があります。 必ずやその試み、成功させて見せます!」


 力強い答えを言い放ち、二人はパリケルにうなずいた


「うむ! では俺様もお前たちが最大限頑張れるようサポートを惜しまないぜな。 これからもよろしくぜな!」


 パリケルは優しく笑い、その笑顔を見た二人はこの人のために何でもやろうと改めて意識した

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