7 妖怪族の国37
背骨山脈は妖怪族の国を斜めに縦断しているんだけど、そこからとれる山の幸が妖怪族の国で食材として様々な用途に用いられる
この里では主にキノコがたくさん採れてるみたい
「こちらではキノコ狩りを楽しんでいただきたいと思います」
僕らは入り口で籠を渡されて入山した
辺りはちょっと薄暗くて不気味だけど、ここに危険な魔物はいないみたいだ
「それでは各自思うようにキノコを取って来てみて下さい。 毒キノコと食用キノコはこちらにいるコノシタちゃんが見分けてくれます」
あ、シャクナゲさんを見上げてて気づかなかったけど、シャクナゲさんの下に小さな女の子がいた
この子は僕と同じくらいの背丈で、種族はシャレコウベ族という妖怪族だ
コノシタちゃんも妖術で体を作ってるみたいだけど、まだあまりうまくなくて左手と顔の左上の目の周りだけ骨だ
「よろしくお願いするます。 コノシタと申すます。 キノコの研究をしているます」
この子は毎日のように山に入ってキノコを採取してその研究をしているらしい
いかにして育てるか、どのような味か、毒性の有無、胞子の飛散範囲などなど、キノコに関することならなんでも研究対象らしい
森の中は木漏れ日がところどころにあり、森特有の土と木の香りがある
少し歩いただけで大量のキノコが生えている場所を見つけた
「これは、マイタケかな?」
「リディエラ様さすがです。 これはその通りマイタケですよ」
お、あってたみたい。 そっか、アスラムこういうことに詳しいんだったね
てことは彼女がいればたくさんキノコが採れるじゃないか
「お任せください!」
張り切るアスラムの後を追いかけながらそこかしこにある食べれるキノコを採っていった
毒性のあるキノコもとったけど、これは的確な調理法を用いれば食用になるらしい
しかも相当に美味しいって言うから採らない訳にはいかないね
「見てみて、こっちにもいっぱいあるわよ!」
クノエちゃんが大興奮で案内してくれた場所にはいろいろな種類のキノコが群生している場所で、シイタケやブナシメジなどよく知ってるキノコもあった
他にはポッピンマッシュという口の中で弾けるような食感がするキノコ、オウゴンタケといううっすら金に輝くキノコ、このオウゴンタケはマツタケやポルチーニ茸以上の味と香りの良い最高級品らしい
ここで見つけれたのはラッキーだった
「もう少し奥に多数の反応がありますね。 行ってみますか?」
「うん、まだまだ籠には入りそうだし、もう少し集めて帰ろう」
アスラムに再びついて歩いてさらに奥へ
ん? 何か甘い匂いがするな
「これは、珍しいキノコが生えていますね」
そこには人くらい大きなキノコがポコポコと生えていて、それが甘い香りを発しているみたいだった
「このキノコはギガントマッシュと言って、見た目はあれですが大変美味しいキノコなのですよ。 焼いたり揚げたり煮込んでもいいのですが、なまで食べても美味しいですよ」
それならいくつか持って帰ろう、と思ったけど、籠に入るのはギリギリ一本くらいかな
まぁ一本あればみんな食べれるか
「これだけ採れれば十分じゃない? わちき焼きキノコが食べたいわ」
ウキウキしているクノエちゃん
まぁ僕もだけどね
コノシタちゃんの元へ戻るとさっそくキノコの鑑定をしてくれた
アスラムの見立て通り全て食用で、毒キノコの方はコノシタちゃんが正しい調理の仕方を知っているからその処理をしてもらった
それからしばらくして森の脇にある小屋でキノコの調理が始まった
コノシタちゃんの指示でキノコに的確な調理法をあてがっていく
ギガントマッシュは生、焼き、煮、揚げと四種類の調理法
オウゴンタケはしょうゆをつけて少し焼いた
出来上がったキノコ料理を机に並べると結構な量になってしまった
あ、でもエンシュが食べるから大丈夫か
それにシャクナゲさんもなかなかの大食漢らしい
ガシャドクロ族たち骨妖怪は内臓はないんだけど、口からいれたものはエネルギーに変換できるみたい
当然味覚もあるんだとか
僕たちと同じような感じかな?
本体は骨の方で、妖術で作り出している体はエレメント体なのかも
まず初めによく知ってるキノコ類から食べてみた
シイタケ、うま味が詰まっててシンプルに塩を振って焼いただけなのに味が濃厚だ
マイタケはコリッとした食感に芳醇な香りが口いっぱいに広がる
ブナシメジは肉厚でザクリとした食感と甘み
次にポッピンマッシュ
これはてんぷらにしてあって、最初の衣のサクッとした食感のあとにキノコの繊維がはじけて中からうま味エキスが噴き出すようだった
次はギガントマッシュ
生はそのものの食感がしっかりと出ていて、みずみずしい
焼きはうま味の凝縮された味で、驚いたことに食感が思いっきり変わっていた。 生の食感がコリコリだったんだけど、焼きはポリポリとしていた
煮は他のキノコをゆでただし汁にしょうゆで味付けしたお吸い物みたいな食べ方で、香りが部屋全体に広がっていた。 スープにはキノコのうまみが凝縮されてて何杯でも食べれそう
そして揚げ
こっちはてんぷらじゃなくてフライだった
フライの油はキノコ油と呼ばれる油で、あっさりとした菌性油
サクサクした食感と同時にキノコの風味が楽しめて、これにトマトソースをかけるとさらに美味しさがアップ
最後に食べたのはオウゴンタケだ
松茸よりも香り高く、食感はとろけるかのように柔らかい。 味はまるでミルクのような滑らかさでステーキのような濃い味、それなのに後味は爽やかでとても食べやすい
キノコ料理、美味しかったなぁ
シャクナゲさんの話だと次は腰骨湿地帯へ行く予定で、ここでは白骨レンコンというレンコンの栽培をしているらしい
なんかこの里に来て食べてばかりな気がするけどまぁいいか




