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7 妖怪族の国34

 翌朝、川の方が騒がしくなっていた

 あれだけ大量の水が流れていたはずの川が、どういうわけか水が無くなっていた


「上流でぇなにかぁあ、あったのかぁもぉお、しれないでぇすぅねぇえ」

 

 少し険しい表情になっているノドカちゃん


「私ぃい、ちょっとぉ行ってぇ来ますぅねぇえ」


 うわ、目の前から消えた

 と思ったらもう遥か彼方に走っていってる


「本気になったノドカちゃんって速いんだ…。 って見てる場合じゃないよ。 僕らも行こう!」


 ノドカちゃんの後を追って走り出す

 ノドカちゃんが向かったのは川上の方だから川沿いに走ればすぐ追いつくね


 上流につくと川の水が無くなった原因が分かった

 巨大な岩がふさいでいたんだ


「やっぱりぃ。 あいつのぉ、仕業ですぅねぇえ」


 ノドカちゃんが声を荒げて怒っている

 ゆっくりと静かに怒りをあらわにしていた


「許せないぃですぅう」


 妖力がノドカちゃんの体に満ちていくのが分かった


「そこぉにぃい、いるんでしょうぉお? ワグラズーぅう」


 木の陰から魔物の気配がした

 影から出てきたのは人? でも魔物の気配ってことは、魔人?

 魔族と違って魔人は人が魔物の力を何らかの形で取り込んだものらしい

 

「ハハハ、やっぱり気づかれてたか。 速く僕のものに成れよノドカ。 僕はね、一目見たときから君のことが好きで好きでたまらないんだ。 ずっと君のことを見てた。 魔人化した後もずっとね」


「わたしぃはぁあ、貴方のことぉお、大っ嫌いですぅう!」


 あとで聞いた話なんだけど、この河童の里はずっとあいつにちょっかいをかけられてたらしい

 ノドカちゃんと結婚するまでやると言ってしつこく何度もだ

 ストーカーじゃないか


「大っ嫌い? 分からない子だねぇ。 君はもう僕のものなんだ。 川もふさいだし、この里はどんどん寂れていくだけだよ? こんなとこにいないで僕と一緒に旅立とう」


 うわ、こいつ気づいてないのかな? 穏やかで優しいノドカちゃんの顔が怒りに満ち満ちていることに


「もう、貴方と話すことはありません」


「あれ? 口調変わったね。 そんな君も可愛いねぇ」


 ノドカちゃんの妖力が高まる


「河童式体術、死呼怖三(しこふみ)


 ノドカちゃんは体をそらし、右足を高々と上げる

 あわわわ、着物だから見えてる見えてる!

 そんなこともお構いなしにノドカちゃんは右足を地面に振り下ろした

 足先が地面を砕き、周囲が大きく揺れる


「うわ! さすがノドカだねぇ。 でもたかが地面を揺らした程度…で…。 消えた?」


 ホントだ、いつの間にかノドカちゃんの姿がない


「妖術、空間覇離手(はりて)!」


 突然空中から現れたノドカちゃんは魔人のいる方向とは全く別の方向へ掌底を放つ


「どこに打ってるんだいノドカぁ! 僕はこっちだよぐあっ!」


 どういうこと? ノドカちゃんの掌底の衝撃が魔人の顔面に入ってる

 顔に真っ赤な手のひらの後ができてるじゃないか


「うぐぐ、いててて、なんだこれ? ノドカちゃん、僕はきぴがっ!」


 また魔人の顔に手のひらの後ができる


「妖術、後追い」


 顔面を打たれて地面を転がっていく魔人。 なんだか哀れになって来た


「ちょ、ノドカちゃん、待って、婚約者の僕に本気で攻撃しないよね? ね!」


「妖術、豪王怪力」


 ノドカちゃんの細い腕が盛り上がる


「全力上手投げ!」


 魔人は掴まれ、遥か彼方へと投げ飛ばされた

 哀れ魔人は悲鳴を上げながら姿が見えなくなった


「ふぅ~、つぎはぁあ」


 あ、口調が戻ってる。 やっぱりこっちのノドカちゃんの方がいいね


「よいしょっと」


「え、ちょ」


 ノドカちゃんは川をせき止めていた巨大な岩複数個をまとめて持ち上げ、横によけた

 そのとたん水が滝のように押し寄せる


「力、強いね」


「河童族はぁあ、このくらいぃい、こどもでもぉお、できますぅよぉお」


「いやいやいやさすがに子供はできないわよ。 ノドカちゃんが異常なのよ」


「あれぇ? そうなんですぅかぁあ?」


 うーん、首をかしげてるしぐさが可愛いからいいか


「すみませぇん精霊ぃ様ぁあ。 ではぁ行きまぁしょぉかぁあ」


 ノドカちゃんはウキウキとスキップしながら前を歩くけど、相変わらずののんびりさ

 こっちが普段のノドカちゃんなんだと思う

 だってさっき戦闘してた時のノドカちゃんは無理してるように見えたから


 今日案内してくれたのはキュウリ畑

 スイカも名産なんだけど、一番はこの畑なんだとか


「このぉキュウリはぁですねぇえ、品種改良というぅ技術がぁあ、使われてぇいるのぉでぇえ、色々なぁ味がぁ楽しめぇるんですぅよぉお」


 青々しく輝くキュウリを一つ切ってそのまま渡してくれた


「齧ってぇみてぇくださぁい」

 

 パクリと一口齧ってみると、あふれる水と程よい甘み

 シャクシャクとした食感が気持ちいい

 味は、少しメロンに似てるかな?


「次はぁ、こちらでぇすぅう」


 今度は赤いキュウリ

 カリッとした歯ごたえのあと、咀嚼すると…


「からっ! 辛いよこれ! でも、なんだか、癖になりそう」


「それはぁですねぇえ、辛キュウリと言いますぅう。 ハブラネボラというぅスパイスの実とぉお、かけ合わせてるぅんでぇすぅう」


 なるほど、ハバネロみたいな実と合成させたのかな?

 この世界の品種改良は魔法で合成のようなことができるみたいだから地球の技術とは違うね


 そこからもいくつかのキュウリをいただいた

 青色をしたクールキュウリ、これはその名の通り、ミントのような香りと清涼感があった

 普通のキュウリと同じ見た目だけど、まるで焼いた肉のような味と食感のニキュウリ

 黄色でものすごく甘い上に穴をあけるとジュースのように果汁を飲めるゴクゴキュウリ

 どれもこれも見たことがないキュウリばかりで、その上味も良かった

 晩御飯もこのキュウリを使ったフルコース

 大変満足いたしました



 その頃魔人のワグラズーは遥か彼方に飛ばされ、翼人族の国の土地にある大きな木に引っかかっていた


「はぁ、どうすれば君は振り向いてくれるんだい? アプローチの仕方を変えてみるか?」


 ノドカを何とか振り向かせようと試行錯誤しているようだった

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