7 妖怪族の国33
次の日、大きな川が流れるみずみずしい里、河童族の里へとやって来た
ここにいる種族は主に河童族、水虎族、かわうそ族、エンコウ族が有名だ
鳥のような嘴に背中に甲羅、頭には皿と言った姿で知られているけど、ここの河童族の人達は帽子をかぶって頭を隠している
ただ、帽子をかぶっているのは男性ばかりで、女性にはまず皿はなかった
というのもこれは女性河童の気を惹くためのものだからだ
それに、お皿が乾くと力が弱まったり死ぬということもないみたい
「ようおおおこそおおお、おいでぇえくださいいましたあ」
案内をしてくれるのはおっとりとした口調の可愛い河童族の女の子、髪型はショートボブで目がくりくりしている
背は僕より少し低くて、きゃしゃな感じなんだけど、河童族特有の怪力はしっかりあるみたいだ
そして何より、この子は族長であるカノトさんの姪っ子だという
そういえば、少し前に見た稲穂アートにも描かれてた
「わたくしぃい、河童族のぉお、ノドカとぉお、申しますぅう。 ではぁあ、のんびりとぉ、ごゆるりとぉ、みてってくださいぃねぇえ」
すごく、スローリーだね。 でもまぁたまにはのんびりとするのもいいかも
さぁ、どこに案内してくれるんだいノドカちゃん
ん? ノドカちゃん? あれ? 寝て…
「ノドカ様、ご案内をお願いします」
お付きの人に起こされてる
「ああああ、寝てましぃいたぁあ。 すいませぇえん」
名前の通りのどかな子だ。 でもそこが癒しになるね
「改めぇましてぇえ。 ご案内いたしぃいますねぇえ」
ゆっくりと、牛歩のごとく歩く
のんびりと景色を眺めつつ、30分くらいかけて最初の目的地へと到着した
「ここはぁあ。 私たちぃいの憩いのぉお、場所なんですぅうよぉお」
緩やかな流れの川に、河童族の人たちが水着で楽しそうに泳いでいた
やっぱり泳ぐのが相当うまい
「わたくしぃい、泳ぐのがぁあ、少しぃい、苦手なんですよぉお」
そう言うとノドカちゃんは来ていた着物を脱ぎ始めた
「ちょ、こんなとこで脱いじゃ駄目だよ!」
慌てて止めるも遅かった
着物から出て来る裸体、ではなく可愛い水着!
「ふふふ、びっくりしましたぁあ?」
なるほど、この子、こう見えてしたたかみたいだね
「皆さんのぉお、水着もぉ用意させてぇますぅう。 こちらぁでぇえ、お着換えしてぇくださいねぇえ」
着替えは近くにある小屋でおこなった。 ちゃんと男性と女性でわかれてるんだね
「うわ、テュネ様おっきい! フーレン様もアスラム様も大きくて羨ましいです!」
エンシュと僕は顔を見合わせて自分たちの胸を見る
つるーんぺたーん…
「だ、大丈夫ですリディエラ様、貴女はまだまだ成長する余地がありますのでいずれお母さまのようになれるはずです。 私は、もう、成長しないので…」
着替え終わると河原へ
たくさんの河童たちプラス観光客たちが僕らを見ている。 なんだか恥ずかしい
「さぁあ、泳ぎぃいますよぉお」
ノドカちゃんが水に飛び込んだ
苦手だと言ってたけど僕はうまいと思うなぁ。 ただ、泳ぎ方がのしって言う古泳法なのはちょっと気になるけどね
「きもちぃい、ですよぉお」
よし、僕らも飛び込むか!
崖の上には飛び込み台がある。 その高さは5メートルほど
走って助走をつけて一気に飛び込む
少しの浮遊感の後に冷たくて気持ちいい水に飛び込んだ
ここの水は生で飲めるほど綺麗で、河童族の畑などにも使われている
あ、僕、泳いだことないんだった…
でも精霊だからおぼれないみたいでよかったよ
テュネに習って色々泳ぎ方を教わったんだけど、意外といけるね
しばらくすると普通に泳げるようになった
「うまいですねリディエラ様」
スイスイ泳げる。 泳ぐってこんなに気持ちいいんだ
水泳を堪能して岸ににあがると、ノドカちゃんがよく冷えたスイカを持ってきてくれた
「どうぞぉお。 この里名産のぉお、スイカですぅう」
シャクッと齧ると、甘い甘いジュースがあふれ出てきた
こんなに美味しいスイカ、食べたことない!
「どうですぅかぁあ? 美味しいぃですよぉねぇえ?」
「うん! 最高だよノドカちゃん!」
スイカのおかわりをもらってぱくつきつつ、河童の皆さんによる優雅な泳ぎを眺めた
てか物理法則無視してる人もいるんだけど…。 どうやったら水の上を走れるんでしょうね?
あ、妖術か
楽しかったなぁ。 辺りはもう黄昏時だよ
「でわぁ、宿に案内しますぅねぇえ」
ノドカちゃんがとってくれた宿は御殿のような場所で、結構有名なところなんだって
綺麗な外装に手入れの行き届いた内装で、ほのかに花の香りが漂っている
ご飯も美味しかったし、今日はゆっくり寝てまた明日に備えよう




