7 妖怪族の国32
迷宮の次に来たのは円猫神社というお寺で、大昔に来た猫好きの異世界人が建てたとされるお寺だ
そこかしこに猫の石像があって可愛いなぁ。 その数は何と2222体!
もちろんにゃーにゃーにゃーにゃーという語呂合わせらしい
しかも石像は全てその異世界人が掘ったというから驚きだ
「にゃ、ここにはニャコ様が祀られているのにゃ。 正直こには来たくなかったんだけどにゃ」
「来たくなかった?」
「うにゃ、その原因が今来たのにゃ」
「よっす! おいらがきてやったにゃ」
ん? 綺麗な猫。 真っ白で、少し光ってる
「にゃ、ニャコ様…。 お久しぶりですにゃ」
ネムリちゃんがかしこまってる。 新鮮だ
「にゅ、ネムリ、今日はお前に会いに来たんではないにゃ。 そこな精霊王女。 確かリディエラといったかにゃ?」
「は、はい」
「いんやぁ、アマテラス様から伝言があるんだにゃぁ」
「アマテラス様からですか!?」
「うにゅ。 ちょっと待ってるにゃ。 思い出すから」
思い出すって…
「あ、そうそう、これからちみにいろいろと大変なことが起こるかもしれないにゃ。 その時のために力をつけておくにゃ。 まぁこのまま世界を回ってれば自然と力がつくはずにゃ。 このまま旅行がてら世界を回ってればいいと思うのにゃ」
「あの、大変なことがあるのに旅行気分でいいのでしょうか?」
ここは聞いておかないと、もし力が足りなくてその事態に対処できないとなると、僕どころか仲間たちに危害が及ぶかもしれないのだ
「うにゅ、その辺は大丈夫だにゃ。 世界各地にちみを鍛えるため神々がすでに降り立っているのにゃ。 とりあえず、気にせず進むのにゃ! あとは神様が導いてくれるはずにゃ」
なるほど、行く先々で僕を鍛えてくれるのか
どんな修行なのかは分からないけど、これから来る大変な事態に備えよう
「じゃ、おいらは帰るのにゃ。 ネムリ、今度また稽古をつけてやるから覚悟するのにゃ」
「は、はいにゃ!」
ニャコ様は僕らに手を振って本殿の中へと消えていった
ネムリちゃんと違ってしっかりした神様だった
「ふぅ~、こ、怖かったのにゃ」
「こ、怖いの?」
「うにゅ、あの方は怒るととっても怖いのにゃ。 ネムは何度も怒られたのにゃ」
見た目からは想像もできないけど、よっぽど怖いんだろうな
だってネムリちゃんが始終びくついてたもん。 あのネムリちゃんが
「さ、気を取り直して次行くにゃ。 ニャコ様の領域から早く離れるのにゃ!」
うん、早く行こうか
「ここが最後にゃ。 こここそ一番連れてきたかった場所なのにゃ!」
そこには迷宮で見たような辺り一面に猫じゃらしが生えそろった草原が広がっていた
そこかしこに猫獣人や妖猫族がまさしく寝転んでおり、またじゃれついていた
主に子供が多かったけど、大人まで猫じゃらしにじゃれつく姿が見受けられる
「見るのにゃ! この艶! 輝き! ここほど最高の猫じゃらしは世界広しと言えどここだけなのにゃ! にゅああああ、ネムも思わず手が出てしまいそうなのにゃ!」
出てしまいそうと言いながらペシペシとまた叩いてるかわいい…
「もう少し奥へ行くにゃ。 そっちにもっとすごいものがあるにゃ」
「すごいもの?」
「来ればわかるにゃ」
なんだろう?
ネムリちゃんに着いて行くと、今度は大きな麦畑が広がっていた
「にゃ! にゃ! すごいのにゃ? ここは猫麦を育てる畑なのにゃ!」
猫麦とは、この土地で栽培されてる香り豊かな麦で、パンにしてもよし、麺にしてもよし、そして何よりお酒の原料にもなるのだ
ここの麦で作ったビールは最高のこく?キレ?があり、のど越しもすっきり爽やかなんだとか
まぁ僕はお酒自体飲んだことが無いから分からないんだけど、テュネやエンシュたちは絶賛していた
近くにはビール工房もあり、試飲もしてるみたいだ
「行ってみましょう! 是非に!」
テュネたちが興奮して僕を引っ張りつつビール工房へ
僕は飲まないけど、たまにはテュネたちもお酒が飲みたい時もあるもんね
工場ではやっぱりというか、強いビールの香りがする
麦の香りなのかな? 甘くて良い匂い
色々と種類があって、四大精霊たちはその全てを試飲していた
ちなみに僕らは子供ビールのようなほのかに麦の香りのするジュースをもらった
一口飲んでみると、甘くてシュワっとしてておいしい!
なんていうのかな、甘い麦茶に炭酸を入れた感じ?
「美味しかった~ですね~!」
「ええ、さすがは猫麦発祥の地です」
うん、皆満足してくれたみたいだ
でもあれだけ飲んで酔わないのかな?
テュネに聞いてみると、精霊には酔う器官が存在しないからだと教えてくれた
あそっか、僕らはエレメント体だから本来飲食自体必要じゃないんだった
猫麦畑での飲酒やジュースを存分に楽しんで、次の里へ向かうことになった
ネムリちゃんはこのあとお勉強らしい
どうやら迷宮の九階層での不甲斐ないところがミアさんに見られてたみたいで、これからしばらくは勉強漬け。 ほどほどにしてあげてね?




