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7 妖怪族の国24

 第八階層には体が隠れるほど背の高い草原があって、僕、レナちゃん、クノエちゃんなんかは完全に姿が隠れてしまっている

 その草原のそこかしこで犬鳴き声や息遣いが聞こえる


「囲まれていますね」


 僕らは互いに背中合わせになって今にも襲い掛かってきそうな魔物を迎え撃つ準備をする

 ザザザという草むらをかき分けるような音が聞こえて魔物が一気に飛び出してきた


「あれはトライハンターですね。 三匹を一つのチームとして、複数のチームで徒党を組んで襲ってくる犬型の魔物です。 その牙には神経性の麻痺毒があるので噛まれればひとたまりもありませんが、私達精霊には効かない毒ですね」


 最近知ったけど、僕らには魔力性の毒しか効かない。 普通の毒じゃ僕らのエレメント体に影響が与えられないのだ


「クノエちゃんとレナちゃんは僕の後ろに。 噛まれないよう気を付けて!」


 二人をかばって前に出て、噛みつこうと迫るトライハンターを切り伏せる

 連携はかなり取れてるみたいで、一匹を斬ろうと気を取れれていると、別の一匹が後ろから襲い掛かる

 それを避けると最後の一匹が首元を狙って確実に息の根を止めようとしてくる


「危ない!」


 僕の首を噛もうとしたトライハンターを刀を持っていない方の手で殴ってなんとか回避

 のけ反ったそいつを刀で斬った

 一匹を倒せればあとは簡単だった

 陣形が崩れ、連携が崩れ、あれよあれよという間にトライハンターの群れを殲滅した


「最初だけだったね。 でも少しでも油断してたらやられてたかも」


「大丈夫です! わちが倒してたですよ!」


 レナちゃんが自信たっぷりに言ってるから多分本当にできるんだろうね

 

 草原を抜けると大きな遺跡のような場所だった

 特に変な気配もしなかったから遺跡を調べてみることにした


「何だろう、ここだけ何かがおかしい気がする」


 不思議な雰囲気で、どうにもこうにも気になって仕方がない

 まるで、この遺跡が何かを訴えかけてくるような…


「確かに気になりますね。 入ってみましょう」


 テュネを先頭に順に扉を開けて中へ侵入する

 すると回りが光って内部を照らした

 魔力の気配がして遺跡を覆っていくのが分かる


「ここに何か書かれてますね」


 レナちゃんが見つけたのは落書きのように遺跡に書かれた文字


「なになに…」


 書かれていた内容はこうだ


「やぁ、これを読んでる人、ここは平和? それとも終わらない戦いを続けているのかな? 君は幸せ? 不幸せ? 質問は尽きないけど、おふざけはここまで。 この遺跡を見つけたってことはそれなりに強いのか、はたまた偶然か、奥に進んで私の落書きをもう一つ見つけてね!」


 よく分からないけど、意味ありげに語り掛けている気がする

 導かれるままに奥へ行くと、石に囲まれた小部屋があって、それ以外に何もない

 その小部屋の片隅にまた落書きがあった


「来たね。 この遺跡は何だと思う? ここはかつて一人の少女が幽閉された牢獄。 彼女はそのあまりの力の強さに神々すら恐れた。 そして彼女は神々、古の支配者、黒族、その全ての協力によって封じられた。 彼女は特に何をしたわけでもない。 ただ存在しただけ。 それが罪になるというのなら、私はどうすればよかったの?」


 まるで自分がそうだと言わんばかりの書き方だ

 そして最後に一言


「私はもう自由」


「ねぇこれ」


「何か、途轍もないモノが解き放たれているのかもしれません…。 しかしなぜこのような場所に神々にかかわる遺跡が? 明らかにこの世界のものではないようですし」


 物知りのテュネでもこの遺跡が一体何なのかわかっていないみたいだ

 

 遺跡の裏に階段があった

 この場所はきっと何か意味があるんだと思う

 なんで迷宮の中にこの遺跡が出現したのかは分からないけど、世界の一部を迷宮に移植しているってテュネが言ってたから、どこかの世界が紛れ込んだのかもしれない

 それこそ偶然か必然か分からないけど、この遺跡、いや、牢獄に落書きをした誰かとはどこかで会うのかもしれない

 そんな気がしてならない

 そのことを頭にとどめておきながら次の階層へと降りて行った



 メッセージ、伝わったかな?

 私はココニイル

 きっと私を見つけてね。 ()()()()()、リディエラちゃん

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