7 妖怪族の国21
レナちゃんはトテトテと前を歩きながら街並みの説明、並木の外観による情景の良さを教えてくれる
それが一所懸命で、たどたどしいながらも頑張っているのが分かる
「というわけで、わちのおじいさまがこの桜の木を植える次第となったわけなのです…。 あ、目的地が見えてきたのです。 先ほどの田んぼが唯一の見どころと言いましたが、実はもう一つ、こここそがわちの里の大目玉、迷宮、犬啼哭牢なのです!」
迷宮!? そんなのあるの!?
「リディエラ様、迷宮とはですね、様々な神々が世界に住む者達のために試練として与える修行場とも言える場所です。 生の女神様の加護によって死ぬことはありませんが、それ故に攻略が難しく、大概の者がリタイアすることが多いようです。 私達は未だに入ったことはありませんが、精霊も何人か挑戦しているはずですよ。 そうですね、カイユ、シノノ辺りはどこかの迷宮に行ったことがあると聞きました」
え? シノノもカイユも戦闘の得意な精霊じゃなかったような
シノノは影の精霊で隠密行動に長けてる。 カイユは癒しの精霊だから戦闘力は皆無だし
「あ、二人ともつきそいですね。 中の良い竜人と一緒に行ったそうです」
竜人が一緒なら納得だ。 彼らはこの世界でも屈指の実力者ぞろいみたいだし
「どうですかリディエラ様? 挑戦してみますか?」
レナちゃんが首をかしげて聞いてくるけど、答えはもちろん決まってる
挑戦してみよう!
「それではわちは手続きをしてきますね。 そこで待っててください」
またトテトテと走って迷宮に入る許可をもらいに行ったみたいだ
一応この里の族長さんだけど、迷宮は世界自体が管理してるので、たとえ族長と言えど手続きが必要なんだって
数分経って手続きを終えたレナちゃんが戻って来た
「お待たせしました。 すぐに入れるみたいですよ」
レナちゃんはウキウキしている。 実は一度でいいからこの迷宮に入ってみたかったらしい
前族長、つまりレナちゃんのお父さんからは危ないから駄目だと言われていたらしい
でも今回は違う。 精霊がついているならと快く許してくれたそうだ
あ、前族長は家督を譲っただけでちゃんと生きてます。 妖猫族族長のネムリちゃんも同じだよ
「精霊様にわちの実力を見せたいのです! わちが得意とするのは妖術と陰陽術を駆使した戦いなのです!」
陰陽術、テュネが言うには、悪いモノを払う特殊な力らしい
主に式神という使い魔を召喚して戦うのが主流だけど、五行と呼ばれる木火土金水というエレメントを使っての戦闘もできるんだとか
入口に到着。 まるで狼が遠吠えしているような形の門をくぐって中に入っていった
一応内部には光の魔法がかかってて明るい
「なんだかドキドキしてきたわ」
クノエちゃんも迷宮は初めて。 緊張してるみたい
「ここは地下10階層まであります。 最下層には主と呼ばれる強力な魔物がいまして、倒せば宝が手に入るです。 ちなみになんですが、主が倒されると内部構造が変わるみたいです。 以前攻略した方がそう言っていました」
なるほど、つまり一度攻略した人が入ってもまた最初から何も分からない状態で攻略しなきゃダメってことか
確かに試練だね
「早速きたみたいですね」
え? まだ入って一分も立ってないのにもう魔物が!?
速すぎない?
カチャカチャと音を立てて走って来たのは狼型の魔物数体
銀牙狼という銀色の牙を持った狼で、噛みつかれると水銀という猛毒を流し込まれるらしい
「死ぬことはありませんが、黒族の塔とは違って痛みはあります。 できうる限り攻撃を回避してください!」
噛みつこうととびかかる銀牙狼を魔法で撃ち落としていくテュネたち。 ここでは思いっきり力を振るえるから彼女たちには余裕なのかもしれない
「よし、僕も!」
僕は刀を抜く。 鬼ヶ島でもらった刀
今この刀は僕の魔力を受けて進化?というべき変化を遂げている
刀身は七色に輝き、その属性は光、強度はオリハルコンをはるかにしのぎ、さらには特殊な能力まで着いてしまった
炎のオーブをはめていたはずなんだけど、オーブまで光のオーブに変わってしまったから驚きだ
ちなみに能力は能力の封印。 少しでも傷をつければありとあらゆる能力を封じてしまうという代物
能力だけ見ればこれは既に神刀に近かった
名前も付けたよ。 七色に輝くから七星
その刀を向かって来る狼に構えて、斬りつける
「一刀流れ旋風!」
流水のごとく動いて回転しながら切りつけていく僕がこそこそ練習してた技だ
ちなみにテュネたちが師匠で、名付け親はエンシュです
あっけなく狼を撃破して奥へ
この調子なら攻略できそうだね




