7 妖怪族の国20
次の日、やって来たのは妖犬族の里
ここには犬神族を筆頭に、妖犬族が大半を占めている
他には送り犬族、狛犬族、そして忘れてならないのはすねこすり族!
ハクラちゃんの友達、大人気アイドルのネネコちゃんと同じ種族だ
「案内するのはわちです! よろしくお願いします!」
なんと、族長のレナちゃん自ら案内してくれるみたいだ
「わちの里は特にこれと言って特色がないのです。 でも、精いっぱいおもてなしさせていただくのです!」
元気、健気、可愛いと三拍子そろった族長さん
この幼い外見でハクラちゃんと同い年(150歳)ちなみに人間で言うと15歳くらいらしい
「ではまずは、朝ごはんを食べるのです! わちのおススメのお店を紹介するのです!」
朝ごはん、この妖怪族の国ではもっぱら和食がブームで、朝食もご飯に味噌汁派が多いらしい
きっとそんな感じのほっこりした朝ごはんなんだろうなぁ
そんな期待はいい意味で裏切られた
なんとレナちゃんはパン派だった
「ここなのです。 わちの一番好きなパン屋さんです」
外にまで香りが漂ってくる
焼き立てパンの匂い。 お店の前には人が並んでる
「少し待たないとだめですが、いいでしょうか?」
「待つのも醍醐味だよ」
僕は待つのも含めてご飯だと思ってる
待っている間に匂いや想像で堪能して、しっかりと心の準備を整えてからの本編!
とまぁ妄想を膨らましていたら順番が回って来た
ここのパン屋さんの勝負パンはずばり一つのみ!
それがこの食パンだ
そう、ここは食パン専門店だったのだ
「こっちです! ここでパンを焼くのです」
レナちゃんに手を引かれてきたのは食パンを焼いてくれるお店の裏手のちょっとした広場
「このバターとジャムをのっけて食べると、ハムッ、ムシャムシャ…。 絶品なのですよ!」
こんがりと焼けた食パンにバターとジャムを塗って齧るレナちゃん
その口にはジャムがべっとりとついてた
「美味しいのです~」
幸せそうなレナちゃんの顔をクノエちゃんが拭いてあげてる
「もうレナ、ついてるわよ」
フフ、クノエちゃん、お姉ちゃんみたいで眼福
さて僕らも
まずは何もつけずに一口
サクッとした食感のあとにふんわりとした柔らかい食感
パンの甘い香りでそのまま一気に食べ進めちゃいそうなほどおいしい
次にバターとジャムを塗る
僕はブルーベリージャムにしたよ
バターとジャム、素晴らしくベストマッチ!
「ね? おいしいですよね?」
キラキラと目を輝かせるレナちゃん
このパン、いくつか買っておいたよかった。 きっと母さんや妖精たちも喜んでくれるね
「次はこっちなのです! 田んぼなのですが、ただの田んぼじゃないのです! いろんな種類の稲を使って絵を描いているのですよ」
それって確か、生前の日本でもやってたやつじゃない?
多分異世界人に教えてもらったんだろうね
「見てくださいこの見事さを! 恥ずかしながらリディエラ様を表現させていただきましたです!」
これは、凄い…。
僕がモデルなのはちょっと恥ずかしいけど、テュネが感心するくらい似てる
いや、ちょっと美化されてるかな? なんか胸の当たりがかなり盛られている気が…
そういえばフィギュアもそうだった
やっぱり、皆そういうのがいいのかな?
僕の絵の隣にはタマモ陛下、キラキラと輝くような表現までされてる
絵からも溢れるこの母性、さすが妖怪族のお母さん的存在
さらにその横に妖怪族長娘ーズ。 クノエちゃんやナゴミちゃん、ウツロちゃんにレナちゃんとネムリちゃん(妖猫族族長)もいる。 あ、知らない子もいるね
「ちょうど見ごろの時期に案内できてよかったです。 わちの里の唯一自慢できるところなのです」
唯一ってことはないだろうけど、それでも素晴らしいことには変わりない
農家さんの努力が見受けられるね
「そういえばリディエラ様、ご趣味は?」
会話が続かなくなったからなのか、お見合いみたいなこと言いだしたよこの子…。
でも可愛いからいいか
「えっと、こうして旅行することかな? あとは散歩とか…。 あ、美味しい物を探索するのも好き!」
こうしてみると、僕は今の生を謳歌してる気がする
この体に成れて本当によかった




