7 妖怪族の国18
次に訪れたのは唐揚げ専門店。 アルメキラという鳥型の魔物、チュラルチュラという雀のような鳥、コカトリス、等々と言った様々な鶏肉を使って作る唐揚げで、絶品だとのこと
「私おススメ。 カリッとふわじゅわのお肉で、おいしい」
ウツロちゃんが涎をたらしたので拭いてあげる
妹にしたい
「こんにちは、空いてる?」
まるで居酒屋に入るおじさんのようなあいさつで店の暖簾をくぐる
「あら、ウツロ様、いつもの席空いておりますよ」
どうやらというかやはりというか、ウツロちゃんは常連で、専用席みたいなものがあるらしい
店の最奥、ふすまに仕切られた座敷に通される
普通ここではカウンターしか座るところがなく、大体の人がカップに入れられた唐揚げを買って持ち帰る感じ
ただ、ウツロちゃんはこの里の次期当主な上に、常連だからここに通してもらえるらしい
僕たちはこの国の客人だから特別みたいだね
「えっと、いつものと、今日のおススメ」
「はい、少しお待ちください」
おお、常連っぽい頼み方
ウツロちゃんもウキウキしてるし、よっぽど美味しいんだろうな
10分くらいかな? 待っているとふすまが開いて鵺族のお姉さんが唐揚げを持って入って来た
「お待たせしました。 こちらがいつものニンニク醤油、竹炭無双、レラー、そして本日のおススメであるマヨコロです」
ニンニク醤油、これはよくある唐揚げだね
竹炭無双にレラー? あとマヨコロ、これはまぁなんとなく想像できる
「竹炭無双、衣に竹炭練り込んである。 とってもいい香り、食欲誘う。 こっちはレモンラー油。 酸味と辛味がとってもいい。 マヨコロ、まよねえずって調味料つかった丸い唐揚げ」
不思議そうに見ていた僕に全部説明してくれた
なるほど、どれも美味しそう
美味しそうなんだけど、ちょっと量の多さに引いてる。 軽く50人前くらいはあるんではなかろうか?
「大丈夫、エンシュ様いるから、食べれる、はず」
ウツロちゃん、エンシュがよく食べるの知ってたんだ。 あ、もしかしてクノエちゃんが教えておいてくれたのかな?
「よかった、エンシュ様喜んでる」
あ、やっぱりか、クノエちゃんが安心してる
「さ、食べて」
ウツロちゃんに進められてニンニク醤油を一口かじる
カリッという食感の後に溢れ出る肉汁、そしてにんにくの香りとしょうゆの味が肉からじんわりとにじみ出る
よく漬けられてるってことだね
次に竹炭無双、これはあの竹林の竹を伐って作った竹炭で鳥肉を一旦燻し、それを塩でもみ込んであげたものらしい
あの爽やかな竹の香りとそれを竹炭にしたことによる香ばしさが肉にしっかりと香りづけされてて、さらに絶妙な塩加減による味付け
肉はしっかりと柔らかくて、皮はパリパリ
お次はレラー、レモンとラー油のゴマ風味、酸味、辛味、塩味が一体となって僕の舌を刺激する
そして最後にマヨコロ
こっちはマヨネーズを肉にもみ込んで揚げているシンプルなものだけど、これがなかなかにいい味を出していた
ちなみにここの油、無添加の植物性油を使ってるからヘルシー
「ムシャムシャ、これは、モグモグ、美味しいですね」
「エンシュ、咀嚼している状態でしゃべるなんてはしたないですよ」
テュネに注意されて食べることに集中し始めるエンシュ。 すごい勢いだ
「ねーねーウツロちゃん、今度これも送ってくれない? 私の方からは九尾印のあんころ餅送るから」
「うん、言っとく。 あんころ餅楽しみしてる」
この子たち、この場だけで輸出入のやり取り決めちゃったよ。 いいのかな?
「貿易に関しては私たちにも権利があるのよ。 それに、この里に関してはウツロちゃんがほとんどやってるしね」
「ウツロちゃん、すご…」
素直に感心すると、やっぱりウツロちゃんは得意そうに胸を張ってる
よくできた子だよ
「美味しかった? 気に入ったなら、今度リディエラにも、送る」
「うん! ありがとう!」
母さんや妖精たちにもたべさせてあげたかったからこれは嬉しい
「じゃぁ、次、行こ。 次で最後、鵺族の修行地、魔の森林。 ここは、昔の鵺族が修行してた場所、今は別のとこで修業してる。 今ここにあるのは、私が作った、リンゴ農園。 自慢のリンゴ、いろんな種類作った。 絶対食べて欲しい」
興奮して説明するウツロちゃん。 それにしても農園まで一人で作ったというから本当に植物にかける情熱がすごい!
リンゴも大好物だから楽しみだね




