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7 妖怪族の国15

 ナゴミちゃんは名残惜しそうに僕に握手を求めてきた

 すっかり懐いてくれて嬉しい限りだよ


 天狗族の里のすぐお隣、ほぼ森に囲まれた未開のジャングルのような場所が鵺族の里だ

 鵺族はかなり強力な種族で、妖術や幻術に長けている。 昔は妖狐族と激しく争ってたそうだけど、危険な魔王が現れたことで結束して以来喧嘩はないそうだ

 ではなぜ鵺族ではなく妖狐族が族長になったのか。 それは九尾族が生まれたから

 鵺族と九尾族では力に差があり、力を重んじる鵺族は九尾族に勝てないと知って二番手に甘んじたらしい

 ちなみに妖怪族の中での序列は力、天狗族が場を取り仕切ることが多いのは、一番調和を取るのがうまいかららしい


 鵺族の里での案内はクウキョさんの娘、次期当主のウツロちゃん。 人見知りはないけど寡黙だ


「ようこそ…。 こっち、案内する」


 う、うん、可愛いけど、苦手かも


「ここ」


 ウツロちゃんが指さしたのは森の中のひらけた場所。 そこには広範囲にわたって色とりどりの花が咲き乱れていた


「ここは?」


「花壇」


 会話が続かない…

 どうしよう、グイグイ行ってみていいのかな? でも嫌われちゃうのは嫌だなぁ


「この花はなんていうの?」


「キリキリマイ。 触るの、気を付けて。 葉っぱ、良く切れる」


 なるほど、確かにこの葉っぱ、カッターみたいに鋭い


「そっちはデンカノホウトウ。 これも、葉っぱよく切れる。 あれはネンネコ。 花の形が猫そっくり。 あれはカタカムナ。 大昔の女神の名前ついてる」


 花、好きなのかな? すごく流暢に鼻息荒く説明してくれてる


「すごいねウツロちゃん。 詳しいんだね」


 褒めてみると、胸を張ってどうだとばかりな顔


「これくらい、当然。 お花、私は世界一詳しい」


 何この可愛い子…。 抱きしめたくなるじゃない

 寡黙だけど、好きなこととなると結構話してくれた。 特に花関しての知識はすごくて、どんな花だろうと詳しく説明してくれた


「この花、みつが甘くておいしい。 飲んでみて」


 花の花弁を摘み、その裏を吸ってみる


「甘! ハチミツくらい甘いね!」


 僕達の絶賛の声をまるで自分のことのように喜んでる。 可愛すぎます


「満足、した?」


「うんうん、いい花畑だね」


「でしょ? ここ、私が、作った」


 一同その発言にびっくりした。 これだけ広大な土地をウツロちゃんは一人で開拓して、一人で花を植えて育てたんだとか。 しかも花は年中違った様相を見せるように計算しつくしているらしいからさらに驚いた


「私、本分身、使える。 いくらでも、分体を作り出せる」


 本分身とは妖術の一種で、普通の分身と違って実態を持った分身を作り出せる妖術だ

 それぞれ意思を持っているからそのみんなで協力して花畑を作り出したらしい


「小さいのにすごいね」


「む、小さくない。 これでも一人前の証、持ってる」


 胸元からお父さんのクウキョさんが書いたと思われる免許皆伝と手書きで書かれた小さなプレートを取り出した


「お父さん、認めてくれた。 私、もう大人」


 本来もう少し年を取らないとこの証はもらえないらしく、ウツロちゃんはあまりにも優秀だったからクウキョさんが手書きの物をくれたらしい

 クールに見えて子煩悩なんだクウキョさん


「これで大人、わかってくれた?」


「うん、やっぱりウツロちゃんはすごいよ!」


 それで機嫌を直してくれたみたい


「次、こっち。 ここ、お父さんが考えた。 あとらくしよんという遊び場」


 あ、アトラクションのことか。 どんなものか楽しみだ


「これ。 風に乗って、空を飛ぶ。 急降下して、目標の的に着地。 そこの景品もらえる」


 どうやら風の妖術で空中に浮かんで、そこから急降下で降りて着地の妖術がかかった的を狙うゲームみたい

 たとえ的から外れても着地妖術はこの辺り一帯にかかってるから大丈夫らしい


「景品かぁ、何がもらえるのかな?」


「それは、お楽しみ」


 クフフと笑うウツロちゃん。 こんな一面もあるのか。 やっぱりかわいいなぁ

 

 準備をして、僕らはそのアトラクションへと乗り込んだ

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