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7 妖怪族の国14

 次に来たのは真っ赤なモミジが年中見ることができる赤山という山

 その名の通り上から下まで真っ赤なんだ

 入山には一応許可がいるみたいで、ナゴミちゃんが取って来てくれた


「ではこれから登山を始めるにあたって注意点が二つあります。 まず、モミジを傷つけないこと。 ここに暮らす動物を刺激しないこと。 ここの動物は神獣ばかりなので怒らせると大変なことになります」


 山の管理者である和装のお兄さんがそう説明してくれた

 お兄さんは魔天狗という種族で、魔力が高い天狗族らしい。 翼や獣耳はないけど、耳が尖ってる


「ではわたしについてきてください」


 お兄さんについて僕らは登山を開始した

 このお兄さんの名前はトウリさんと言って、魔天狗の中でも珍しい金妖術というものが使えるらしい

 金妖術というのは、五行という属性の内の金、つまり雷の力を操る術なんだって

 実は雷の妖術を使える天狗は本当に少なくて、彼は数年ぶりに金妖術を操った天狗だそうだ


「赤山の頂上から見られる景色は本当に絶景ですよ。 楽しみにしていてくださいね。 それと、頂上にはホムラザトウというお菓子を配ってますので、そちらも楽しみにしていてください」


 トウリさんはにこやかに僕に笑った

 どうやらただのお子様だと思ったらしい。 ふふ、僕がおかし程度で喜ぶとでも?

 喜ぶんだなぁこれが

 ウキウキしながら足取り軽やかに昇った


「ここいらで休憩を挟みましょう」


 山小屋が見えて、僕らはここで一泊することになった

 小屋の中は甘い香りで満たされてる


「これをどうぞ。 冷やし飴ですよ」


 運動して火照った体に冷やし飴、なんて良い匂い、戴こう


「コクコク」


 うん! 甘くて飲みやすい!

 もっとネトッとしてるかと思ったけど、のど越しはさわやかですっきりしてて喉の渇きをいやしてくれる


「この冷やし飴は天甘草(あまつあまくさ)という植物の花の蜜なのです。 古くは代々妖怪族の長たちが愛していたそうです」


 おかわりも大丈夫だったから三杯も飲んでしまった

 冷やし飴最高です


 夕食を食べて十分に休憩してから再出発

 頂上まではあと2時間ほどらしい

 ちなみに夕食はモミジを使った炊き込みご飯と、モミジ葉でくるんだ魚の蒸し焼きだったよ


「ここからは神獣が出ますので危害を加えないよう気を付けてくださいね」


 トウリさんの注意に従ってゆっくりと歩いた

 周囲の草がカサカサと音を鳴らしている


「変だな? 神獣たちが騒いでる」


 ん? 騒いでる? もしかして何か失態を?

 カサカサと動いていた茂みから何かが飛び出した


「うわっ!」


 僕の目の前にドシンと何かが着地する

 そこに立っていたのは巨大な金色の角を持つ鹿だった


「金色鹿!? なぜこんなところに」


 トウリさんが驚いている


「ここにはいないんですか?」


「いえ、いるにはいるのですが、決して人前に姿を現さないことで有名でして、ここまで近くで見るのは私も初めてです」


 金色鹿は僕の前に来て頭を垂れた


「え!? 金色鹿が、人に頭を…。 あなたは一体」


「精霊王女様ですよ」


「え!? し、知らぬこととはいえご無礼を!」


 トウリさんは土下座して謝ってる


「ちょ、ちょっとやめてください。 僕はただ観光に来てるだけですから!」


 このやり取り、いつもやらなきゃいけないのかな?

 僕的には普通に接してほしいんだけど


「なるほど、精霊の王女様…。 お生まれになったことは聞いていたのですが、何分遠い場所のお話でしたので、まさかお会いできるなどと思ってもみませんでした。 でも、お会いできて光栄です!」


 そこからトウリさんはテンションが上がりっぱなしだった

 赤山の説明や、出てくる神獣たちについても事細かに説明してくれて、楽しく登れた


「さぁ、もうすぐ頂上ですよ。 ちょうど日の出の時刻です。 ここでの日の出は絶景ですよ」


 頂上に着くと、向こうに見える山の切れ目から太陽が顔を出した

 その光に照らされてモミジが真っ赤に光る

 目にその赤さが焼き付くくらいの赤! ハクラちゃんの友達のアカネちゃんより赤いんじゃないかな?


 素晴らしい景色ともらったお菓子に大満足

 おかしは真っ赤なぺろぺろキャンディーのような飴で、上品な甘さがあった

 モミジと、ショウガが少し入っているから体があったかくなるね

 だからホムラザトウというらしい


 赤山を下山し、次は鵺族の里へ向かうことになったから、ナゴミちゃんとはここで、名残惜しいけどお別れだ

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