7 妖怪族の国2
「最初は妖狐族の街を案内するわね!」
クノエちゃんは張り切っている。 この国には常に紅葉が見られる場所や妖狐たちによるマジックショーのようなものが見れたり、とまぁ見どころは満載なわけなのです
クノエちゃんの後をついて街を歩く
「ね、おなかすいてない? 何か食べて行こうよ」
精霊の僕たちは食べなくても魔力を吸収して動けるから大丈夫なんだけど、やっぱり食べるって大事だよね? うん
「クノエちゃんのおすすめのお店に連れてってよ」
「もちろんよ!」
やって来たのは高級そうな料亭で、明らかに純和食を提供していそうなお店だった
良い匂いが外にまで漏れ出ている
「ここね、母様とよく来るの」
陛下御用達ってことなのか。 それは楽しみすぎる!
中に入ると、着物を着た妖狐のお姉さんお兄さんが深々とお辞儀をして席へと案内してくれた
クノエちゃんは顔パスらしく、VIPルームのような豪華な部屋へと通された
「ここでは注文を取らないの。 その日のおすすめを出してくれるのよ」
クノエちゃんの言うう通り、直ぐに料理が運ばれてきた
最初は山菜を使ったおひたしや酢の物、浅漬けや漬物もあるね
「ここの野菜は自家栽培なの。 厳選された食材を使ってるからその美味しさは格別よ!」
「どれどれ」
箸を手に取る。 金箔で装飾の施された箸で、なんだかもったいない気までしてくるくらい綺麗
最初に口をつけたのはぜんまいのような山菜とニンジン、ハクレンソウと言う白いほうれん草のような野菜を使ったおひたしだ
程よい塩梅で、口にみずみずしい野菜の味が広がった
「おいしい!」
「この野菜、凄い栄養価ですね。 私の加護なしでここまでの野菜を育てる者がいるとは…」
アスラムが感心している。 確かに体に力がみなぎりそう。 いや、みなぎってくる
「こちらのお漬物も~、おいしいですね~。 私これ~、好きですよ~」
フーレンは漬物が気に入ったみたい。 ももかぶというピンク色のかぶを漬けたものだそうだ
次に来たのはデルゴングという真っ白な豆とごぼう、ベリオルガと言う鳥の肉を煮込んだ筑前煮のような料理
甘辛く煮てあって鳥肉によく合う。 このお肉はすごく柔らかくてジューシー。 お肉自体の味も結構強い
次はチャクラ牛という牛のすき焼きだった
このお肉がすごくて、柔らかいなんてもんじゃない。 口の中で溶けて消えた。 比喩ではなく!
さらに八宝ネギ、黒玉大根、日輪玉ねぎ、純麗こんにゃくと言った具材を鳳凰鶏の卵をつけて食べる
滑らかだけど濃厚な卵は甘く煮られた具材に驚くほどよく合っててご飯が進む
ちなみにこのご飯は白銀米という最高級のお米らしい
「最後はこのスープをご飯にかけて卵をのっけて食べると美味しいわよ」
むむむ、このたれを、ご飯に
合うに決まってるじゃないか
はい、もちろん合いましたとも。 天国にも昇りそうなお味でした
「どう? 美味しかった?」
「うん! すごく!」
料亭を出る。 あれ? お金は?
「あ、ここは母様がオーナーなの。 ちゃんと後で母様が払うわ」
なるほど、つけってやつかな? 普通はこの料亭、つけなんてできないんだけど、タマモ様はここのオーナーだから大丈夫らしい
「さ、次は黄紅山に行くわよ!」
黄紅山はさっき言った年中紅葉が見れる山だ。 とはいっても本当の紅葉ってわけじゃなくて、そういうの木々が生い茂った山
黄色や赤の鮮やかな葉をもった木々が山一帯を覆っている
「ほらこっちこっち、この神社の鳥居をくぐったらすぐよ」
入山するにはこの鳥居をくぐる道しかなくて、その周りは結構な深さのある湖に囲まれている。 この湖はミズチ族もよく来るらしい。 なんでも清めの水になるんだとか
鳥居をくぐるとすぐに鮮やかな景色が目に飛び込んだ
思わず言葉を失う
まるで宝石のように輝く木々のパノラマ。 四大精霊も静かにその景色を見ていた
秒速5センチではらはらと落ちる葉っぱまでもがその景色の調和を取っていて、感動を与えてくれる
「素晴らしい、景色ですね」
テュネが口を少し開いたけど、ここでは皆静かにただただ見入る。
他にいる観光客の人達も目を見開いてその景色を脳裏に焼き付けていた
「どう? すごいでしょ! 妖狐族自慢の山なの!」
「うん、ずっとここにいてもいいかも」
冗談だけど、本当にそんな気になってきそうだよ
「あ、そうそう、こっちで写影機が取れるわよ」
写影機、写真のことだ。 すごい、そんなのあるんだ
あ、異世界人が技術を伝えたのか
「からあ写真って言ってね。 景色や姿を紙に焼き付けるすごいからくりなの!」
なるほど、まんま写真だ
僕らは山をバックに並んで写真を撮った。 数分で現像できるそうなのでその間に近くのお茶屋さんでみたらし団子とお茶をいただくことにした
みたらし団子は甘くてもっちもち。 緑茶にベストマッチでした
出来上がった写真を受け取る
うん、みんな笑顔のいい写真だ。 家に帰ったら飾ろう




